撮影日記


2017年01月29日(日) 天気:雨

Nikon F-601Mがやってきた
ニコン「F三桁シリーズ」コンプリート!

数年前に,携帯電話(スマートフォン)用のゲームにおいて「射幸心をあおる」などの理由で,「コンプガチャ」というシステムが社会的な問題になったことがある(*1)。お金を払って「ガチャ」という抽選システムを利用するとなんらかのアイテムが入手でき,用意されているアイテムを全種類そろえると,ゲームを有利に進行できるレアなアイテムがもらえる,というものだ。「コンプ」とは,「コンプリート」(complete)のことで,「完全な」「完結した」などの意味をもつ。
 ここでの「コンプリート」あるいは「コンプ」「フルコンプ」とは,なんらかのシリーズに属するアイテムをすべて集めきることをさす。コンプリートすることは,コレクション的なことを楽しむときの,目標の1つとなりうる。
 関係するすべてのアイテムが入手しやすいものであれば,容易にコンプリートできる。しかし,アイテムが高額だった場合や,出現頻度の低いレアなものが含まれている場合には,コンプリートが容易ではなくなる。

それは,カメラのコレクションでも同じことだ。たとえばニコンの「F三桁シリーズ」とよばれるカメラは,発売当時はそれなりに高価な機種も含まれていたものの,いまとなってはきわめて低価格で取り引きされている。場合によっては,ジャンク品として数10台を一気に入手できることもある(2016年6月1日の日記を参照)。
 だが,「F三桁シリーズ」には,レアアイテムが含まれている。そのため,コンプリートは思ったほど容易ではない。そのレアアイテムとは,Nikon F-601Mである。

Nikon F-601Mは,Nikon F601から「オートフォーカス」と「フラッシュ」を省略したモデルである。
 Nikon F-601は中古カメラ店でもよく見かけたので,よく売れたものと思われる。それに対してNikon F-601Mは,中古カメラ店で見かける機会が少ない。たまに見かけても,ややレアなアイテムと化していたためか,それなりに強気な価格設定がされていた。ともあれ入手しにくい「レアアイテム」と化していたのである。
 このたびNikon F-601Mをいただいたことで,ようやく私も,ニコン「F三桁シリーズ」をコンプリートすることができた。この場をもって,厚く御礼申しあげたい。

ニコン「F三桁シリーズ」をコンプリートしたので,この機会に「F三桁シリーズ」をまとめておこう。

● F-301/F-501 〜電動巻き上げの新シリーズ

「F三桁シリーズ」に含まれる機種は,9機種ある。これは大きく2つのグループにわけることができる。
 1つは,Nikon F-301とNikon F-501の2機種だ。

Nikon F-501は,1986年4月に発売された。ニコンからはじめて発売されたオートフォーカス一眼レフカメラはNikon F3AFであったが,Nikon F3AFのオートフォーカス対応レンズなどのシステムは,後の機種とは異なるものだった。後につづく基本的なシステムを形作ったという意味では,Nikon F-501がニコンではじめてのオートフォーカス一眼レフカメラということになる。
 オートフォーカスの性能は,いまとなってはさすがに物足りなさを感じる。たぶん,なんとか実用的に使えるという程度に感じられるだろう。だが,マニュアルフォーカス用レンズでプログラムAEが使えることや,ファインダースクリーンが交換できることなど,AEカメラとしての完成度はじゅうぶんである。人によっては,シャッター速度ダイアルというユーザインタフェースを好ましく思うこともあるだろう。
 F-301は,F-501からオートフォーカスとファインダースクリーン交換機能を省略したような,マニュアルフォーカス専用の機種である。ただし,F-301のほうが,F-501より半年ほど早く発売されている。

F-301とF-501を除いた7機種が,「F三桁シリーズ」のもう1つのグループとなる。
 このグループは,上級機であるF-801シリーズ,エントリーモデルであるF-401シリーズ,その間に位置するF-601シリーズの3つで構成される。

● F-401シリーズ 〜オートフォーカスのエントリーモデル

Nikon F-501につづいて発売されたオートフォーカス一眼レフカメラは,1987年6月発売のF-401である。1989年4月には,オートフォーカスのセンサが改良されたF-401S,1991年9月にはさらに改良されたF-401Xが発売されている。

Nikon F-401では,それまでのニコンの一眼レフカメラにくらべて,大きな変化が試みられている。
 パッと見てすぐにわかるのは,ニコンの一眼レフカメラではじめてフラッシュが内蔵されたことである。フラッシュはポップアップするが,使用しないときでも発光部が隠れていない。フラッシュを内蔵していることを,アピールしたかったのであろうか。そのため通常であればファインダー部の前面に記される「Nikon」のロゴが,上面に記されることになっている(とくにF-401ではそのロゴが,他機種にくらべてやや扁平なものになっている)。それを補うかのように,グリップ部にはおおきく「Nikon」のロゴが記されていることも,デザイン上の特徴といえる。
 Nikon F-401では,Ai連動ピンとよばれる部品が省略された。これは,開放から何段階絞ったかの情報をレンズから受け取るもので,これが省略されたことによって,情報伝達が電気信号ではないマニュアルフォーカス用レンズを装着したときに,露出計が使えない仕様になった。また,オートフォーカス用レンズは絞りリングをつねに最小絞りに固定して使うこととなり,絞り値の選択は,ボディにあるダイアルでおこなうようになっている。これらのことは,「レンズの互換性が無視された」としてマイナスイメージにはたらいたが,最近の機種ではボディ側の2つのダイアルでシャッター速度と絞りを選択するユーザインタフェースが定着しているので,F-401のユーザインタフェースはそれを先取りしたものだといえる。また,このユーザインタフェースのために,最近の「Gタイプ」とよばれる絞りリングを省略したレンズも問題なく使うことができる。

● F-801シリーズ 〜AF時代を決定づけた上級機

つづいて,上級機であるNikon F-801が,1988年6月に発売された。1991年3月には,動体予測フォーカス機能やスポット測光機能が追加された,Nikon F-801Sが発売された。

Nikon F-801は,はじめて1/8000秒のシャッター速度を使えるようにした35mm判一眼レフカメラである。
 Nikon F-801のスペックは,シャッター速度1/8000秒,フラッシュ同調速度1/250秒,5分割の評価測光,メガネをかけたままでも全視野が見えるファインダー,そしてオートフォーカスなど,それまでいろいろな機種で個別に実現されてきた機能の集大成のようなものであった。オートフォーカスの測距点が中央の1箇所にしかないことを除けば,いまでもじゅうぶんに通用するスペックだと思うし,じゅうぶんに実用的である。
 また,Nikon F-801には個人的な思い入れも深い。私がさいしょに自分専用の一眼レフカメラとして手にしたものは,Nikon FMだった(2001年2月22日の日記を参照)。その後,カラーネガ,カラーポジ,モノクロフィルムあるいは低感度フィルムと高感度フィルムとを並行して使いたくなったので,ニコンのボディを増やすことにした。まずは家にあったNikomat FTを併用しはじめたが,シャッター速度ダイアルがレンズマウント部にあるなど,少々使い勝手が悪い。そこで適当なものをさがしているうちに,Nikon F-801の購入に至った。Nikon F-801は私にとって,カメラが増殖していくという沼に足を踏み入れるきっかけとなった記念すべきカメラである(笑)。その後,Nikon Fをお迎えしたことで,沼から抜け出せない状況になったようだ(1998年2月8日の日記を参照)。

● F-601シリーズ 〜使いやすさと高性能の好バランス

Nikon F-601は,上級モデルNikon F-801とエントリーモデルNikon F-401の間に位置する機種として,1990年9月に発売された。シャッター速度が1/2000秒まで(フラッシュ同調速度は1/125秒)になっているなど,Nikon F-801よりはスペックが抑えられているが,F-801にはなかったスポット測光機能を搭載し,フラッシュを内蔵した。また,F-801ではオプションのマルチコントロールバックを使用することで可能だったオートブラケティング撮影(露出をずらしながら何枚かつづけて撮影する)機能も,用意されていた。

フラッシュが内蔵されていること,クォーツデートモデルがあることなどの理由で,どちらかというと記念写真撮影用に使いやすそうなカメラとして入手した。実際に,使いやすいカメラである。Nikon F-801とほぼ同じユーザインタフェースで,より小ぶりになっている。フラッシュが内蔵されているのは,ほんとうに便利である。Nikon F-401のように,使用するレンズの制約もない。ただ,動作音が少々甲高くけたたましいのが,難点ではある。
 動作音については,気になる人が多かったのかもしれない。Nikon F-601の後継機にあたるNikon F70は,動作音が小さいことが大きな特徴になっていた。しかし,Nikon F70のユーザインタフェースはほかの機種と大きく異なっており,併用しにくいものである。そのせいか,ニコンの一眼レフカメラのラインアップが「F三桁シリーズ」から「F二桁シリーズ」に移行しても,Nikon F-601は長くカタログに掲載されていた。
 そして,Nikon F-601と同時期に発売されたのが,Nikon F-601Mである。

はじめにも書いたように,Nikon F-601Mは,Nikon F-601からオートフォーカス機能とフラッシュを割愛したものである。正面に書かれた文字「F-601」と「F-601M」でも判別できるが,ファインダー部にフラッシュがないこと,マウント部にオートフォーカスのカプラや切り替えレバーがないことなどで,F-601ではなくF-601Mであると判別できる。
 オートフォーカスの一眼レフカメラが主流になってきた時期に発売されたNikon F-601Mは,どのようなユーザ層をねらったものかは,よくわからない。ただ,日本国内での流通は目立たないものの,海外の市場ではよく見かけることができるらしいので,おもに輸出用になっていた可能性はある。

ともあれ以上のように,「F三桁シリーズ」に含まれる,Nikon F-301,F-401,F-401S,F-401X,F-501,F-601,F-601M,F-801,F-801Sをコンプリートできた。世の中には,ニコンが発売したすべてのカメラをコンプリートしている人もあるようだから,「F三桁シリーズ」のコンプリートなど,ささやかな自己満足にすぎない。それでも,コンプリートは気持ちのよいものである♪
 細かく言えば,クォーツデートモデルとデートなしモデルなど裏蓋のバリエーションがあるし,輸出用にネーム違いのものもあるので,「F三桁シリーズ」のコンプリートは,まだ完成していないともいえる。たとえば,Nikon F-601の輸出用モデルは,Nikon N6006という名称になっていた。

Nikon F-601とNikon F-601Mのような,異なる機種についてはコンプリートできたが,1つの機種のなかのバリエーションについても,今後は完成させたいと思う。Nikon F-601については,クォーツデートモデル,デートなしモデル,輸出用N6006のほかに,「後期型」とされるものがあったはずだ。
 ニコンの一眼レフカメラのラインアップが「F二桁シリーズ」に移行した後,新品のNikon F-601が安価に流通している時期があった。そのNikon F-601は「Made in Japan」ではなく,「Made in Thailand」になっていたため,海外から日本に来たお客さんが買ってくれない,という話を店員さんから聞いたことがある。そしてMade in ThailandのNikon F-601はホットシューにフラッシュを固定するためのネジ穴があるので区別できる,と教えていただいた。ただ,いかさか昔のことであり,記憶に自信がない(笑)。最近,何台かのNikon F-601が手元にやってきたのだが,Made in ThailandのNikon F-601はまだ入手できていないので,確認ができていない。

なお,つぎはNikon F100をお迎えしようと考えている。そうすれば,「F二桁シリーズ」(Nikon F50,F60,F70,F80,F90,F90X,F100,U,Us,U2)もいちおうコンプリートとなる。ここでも細かいことにこだわれば,ブラック/シルバーのカラーバリエーション,裏蓋のバリエーション,Nikon F65のような輸出仕様モデルなどもある。また,b.Nikon!! (アパレルブランドagnes b.と共同企画で発売された,ブラックボディのNikon U)も,入手したくなるだろう。b.Nikon!!は限定発売モデルだったので,これを入手するのは少々難易度が高いかもしれない。

*1 オンラインゲームの「コンプガチャ」と景品表示法の景品規制について (消費者庁)
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120518premiums_1.pdf


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