撮影日記


2016年12月29日(木) 天気:はれ

2016年にお迎えしたカメラたち
フイルム一眼レフカメラ編

昨日の日記に書いたように,今年ようやく私は「ディジタル化」したという意識をもてるようになった。もちろん,多くの人がとうに「ディジタル化」している。その結果として,フィルムを使うカメラの新製品はほとんど売られなくなり,中古品市場においてもフィルムを使うカメラの商品力は低下傾向にある。
 「最近,フィルムでの撮影が見直されるようになった」とする,どこまで信憑性があるのかわからない記事等を見かけることもあるが,実際にフィルムを使うカメラが注目されることはあっても,欲しがる人の数以上のカメラが中古品市場に残っているのだろう,実際には投げ売り状態になっていると感じられる。
 とくに商品力が低下しているように感じられるのは,オートフォーカス化された時代以降の,一眼レフカメラである。一部の高級機等はずいぶんと安価になったとはいえ,もともとが高価だっただけにまだそれなりの価格で取り引きされているようだが,中級機からエントリーモデルとされる機種の大半は,ほとんど値段がつけれらくなりつつあるようだ。そうなると,いちいち検品したり手入れされたりすることなく,「動作未確認」の「ジャンク品」として流通することになる。

この5月には,Nikon F90/F-801用の電池ボックスを入手しようと考えた。そのため,Nikon F90やNikon F-801が何台か含まれたジャンクカメラのセットを,インターネットオークションで落札した。開始価格は1円だったが,競合者があらわれて,落札価格は450円になってしまった。まあ,新品の電池ボックスの価格よりは,安い。残念ながら,そこに含まれていたNikon F90やNikon F-801は,いずれも電池が腐食したものだった。目的としていた電池ボックスは入手できなかったが,ともかく28台の一眼レフカメラが手元にやってきたのである(2016年6月1日の日記を参照)。
 そして9月には,一眼レフカメラ38台セットを,1円で落札した。そこに,以前から入手してどんなものかを実際にたしかめたいと考えていた,OLYMPUS OM101が含まれていたからである(2016年9月28日の日記を参照)。このとき,Nikon F90/F-801用の電池ボックスも確保することができた。
 ともかく,動作確認されていない薄汚れた状態であれば,かつてはそれなりに高価であったオートフォーカスの一眼レフカメラであっても,ひと山ナンボで売られているのである。オークションでの開始価格が1円で,そのまま1円で落札できてしまうことを考えれば,タダ同然ともいえる。
 もし,手っ取り早く「カメラコレクションをはじめてみたい」と考えているなら,こういうセットを3箱ほど落札するとよい。収集した台数だけは,あっという間に3ケタに達するだろう。だから,カメラコレクションで「数だけ」を自慢したいなら,少なくとも4桁の台数,できれば3000台は必要だろうと思う。私はまだまだ,その域にはまったく及ばない。

今年も,いろいろと特徴のあるカメラがやってきた。ディジタル一眼レフカメラについては昨日の日記でとりあげたので,今日は,フィルムを使う一眼レフカメラを振り返ることにする。

まずは,先にもふれた,OLYMPUS OM101を紹介しよう。

オリンパスからは,レンズ交換式のオートフォーカス一眼レフカメラは1機種しか発売されなかった。定評あるOMシリーズの1機種として発売されたオートフォーカス一眼レフカメラOM707は,オートフォーカス機能とプログラムAE機能を搭載しており,フラッシュも内蔵している。だから,シャッターレリーズボタンを押すだけで,簡単にきれいな写真を写せる。しかし,それだけだ。まったくの,フルオートである。一眼レフカメラならではの,ピントや露出にこだわった撮影がなにもできないのである。およそ一眼レフカメラらしくないその仕様には,疑問をもつ人も多かったことだろう。「あれは失敗作だ」という,心無い声もよく耳にしたものだ。
 私にとってOLYMPUS OM707の仕様における最大の疑問点は,ピントである。どれだけオートフォーカスの精度があがっても,微妙にピント調整をしたいと思うことはかならずあるはずだ。露出ならある程度の許容範囲も考えられるが,ピントはそうはいかない。ましてや,初期のオートフォーカス一眼レフカメラである。ピントがあうエリアは中央だけで,その精度や速さに不満をもつこともある。それにもかかわらず,レンズのピントリングを手で回す,マニュアルフォーカスができないのである。どうしてもオートフォーカスでピントがあわないときには,「パワーフォーカス」といって,背面のレバーでピントリングを電動操作する機能があるが,これがすこぶる使いにくい。
 OLYMPUS OM101は,オートフォーカス一眼レフではなく,パワーフォーカス一眼レフである。いったいこれは,どんなトンデモないカメラなのだろうか?すごく,気になるじゃないか。
 そして,実際に使ってみた。
 「これは,いい。」
 OLYMPUS OM101のパワーフォーカスは,OLYMPUS OM707のパワーフォーカスとは,まったく異なるものである。インタフェースも違えば,おそらく開発コンセプトすら,根本から違うのではないだろうか。OM101はOM707からオートフォーカスをはずした安物,という見方をする人もあるようだが,私は逆だと思った。オリンパスは,OM101を先に,世に問いたかったのではないだろうか。だが,MINOLTA α7000に話題が集まる時代のことである。やむを得ず先に,OM707を発売してしまったのではないだろうか(2016年9月28日の日記を参照)。このあたりの本音を,知りたいものである。もしもOLYMPUS OM101がMINOLA α7000より少しでも早く登場していたら,大きな話題になったのは間違いあるまい。

OLYMPUS OM707もOM101も,とくに後継機が発売されることもなく,静かにカタログから消えていった。しかし,OLYMPUS OM101には,ひそかに後継機が発売されていた。いや,後継機というわけではないだろうが,OM101の筐体を利用したカメラは,比較的最近までラインアップされていたようである。それは,医療用あるいは工業用の内視鏡撮影に特化した,OLYMPUS SC35というシリーズだ。OLYMPUS OM101はプログラムAE専用のカメラであるが,「マニュアルアダプタ2」というオプション品を装着すると,絞り優先AE撮影とマニュアル露出撮影が可能になる。それに対してOLYMPUS SC35にはプログラムAE機能はなく,「マニュアルアダプタ2」とよく似た部品とセットで売られていたようだ。この部品は,絞り値の表記が異なるだけで,機能的には「マニュアルアダプタ2」と同じものである。この部品のために,OLYMPUS SC35も入手したのであった(2016年10月25日の日記を参照)。

9月に落札したジャンクカメラ38台セットには,リコーやペンタックスのカメラが多数含まれていた。PENTAX SuperA(2016年10月1日の日記を参照)やPENTAX P30は動作を確認したが,SFXやZシリーズ,MZシリーズはまだ,じゅうぶんな確認,整理ができていない。まあ,まだしばらくは楽しめるだろう。

このセットに含まれていたRICOH XR-Xや(2016年10月1日の日記を参照),RICOH XR-10M(2016年3月2日の日記を参照)もおもしろい位置づけのカメラだと思うが,リコーの一眼レフカメラで必ず入手しておきたかったものは,RICOH XR500である(2016年2月12日の日記を参照)。「リコーのサンキュッパ」として,テレビでもよく宣伝されていた。RICOH XR500は,XR RIKENON 50mm F2とケースのセットで,メーカー希望小売価格が39800円になることから,「サンキュッパ」とよんでいた。

RICOH XR500は,低価格を最大のセールスポイントにしたカメラである。しかし,ただ安いだけではない。けっして,「安かろう,悪かろう」ではなく,撮影のために必要な機能は,きちんと確保している。AEもオートフォーカスもないフルマニュアルのカメラであるが,TTL開放測光の露出計が内蔵されているので,確実な露出が得られる。シャッター速度は1/8秒から1/500秒までしかないが,ISO 100くらいのフィルムを使うかぎり,高速側は1/500秒まであれば,困ることはほとんどない。一方,1/4秒よりも長い露光が必要な場面ではフラッシュを使うことになるだろうし,フラッシュを使わないなら,B(バルブ)でもなんとかできる。50mmレンズはF1.4やF1.8クラスのものが一般的なので,F2というレンズはスペック的に大きく見劣りする。しかし,F2というのはじゅうぶんに明るいレンズである。高級ズームレンズだって,せいぜF2.8だと考えれば,F2という明るさがどれだけありがたいものか,わかるのではないだろうか。そして,明るさを欲張っていない標準レンズの描写が,悪いはずがない。
 「リコーのサンキュッパ」は,スペック的に目立つものはない。むしろ,劣っているように見える。しかし,きれいな写真を撮ることができないような,粗悪なカメラではない。言い方をかえれば,ほんとうに必要なところはしっかりとつくってあり,そうでないところは徹底的に割愛した,ということになる。誤解を恐れずさらに表現をかえれば,「とても上手に手抜きをしている」となるだろうか。これは昭和20年代に大ブームになった,「リコーフレックス」にも通じることだ。きれいな写真を撮るのに最低限必要な機能はきちんと搭載しているが,それ以外のところは徹底的に割愛されている。

今年入手したOLYMPUS OM101とRICOH XR500は,どちらも「後世に名を残すべきカメラ」であることは間違いない。そして,どちらもが廉価版のカメラであることもおもしろい。
 このほか今年は,Nikon U2やMamiya ZM,PRAKTICA LTL,KYOCERA 230AFなどもあらたに入手したが,カメラの歴史にあたえるインパクトは,OLYMPUS OM101やRICOH XR500ほどのものではないだろう。

さて,来年はどんなカメラやレンズとの出会いがあるだろうか。私は台数を増やすことよりも,できるだけ多くの種類を記載したいと考えている。はるかなる目標は,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に掲載されたことのある,すべてのシリーズのカメラを体験することだ。


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