撮影日記


2016年10月29日(土) 天気:晴れ

OLYMPUS OM101 PowerFocusの実力は?

以前の日記で,「OLYMPUS OM101は迷機ではなく,むしろ名機になりえたのではないか?」と書いたことがある(2016年9月28日の日記を参照)。「名機」や「迷機」という言葉は,辞書できちんと定義されているようなものではないので,使う人によって意味するところに違いがあるだろうから,私の考えを簡潔にまとめておく。どういうカメラが「名機」であり「迷機」であるか(はたまた「銘機」であるか),おおよそつぎのように考えている。

  • 名機:優れたカメラ。あるいは,歴史上重要な位置にあり,後世に名を残すべきカメラ。
  • 迷機:あたらしい技術や斬新な機構を盛り込んでいるものの,完成度が低かったり,ユーザの要望とずれていたりして,結果として使いにくいと感じたり,その機能の存在意義がわからないと感じたりするカメラ。
  • 銘機:高級ブランドのネームが入った,表面が金属ボディのカメラ。

私がこれらの用語を使っているときは,だいたいこのような性格のカメラを想定しているものと考えていただきたい。「自分の考えとは違う」という意見も当然あるとは思うが,そこはこらえていただければ幸いである。

私が,OLYMPUS OM101を「名機になりえたのではないか?」と考えるのは,そこに盛りこまれた新機能「パワーフォーカス」が,とてもすぐれたものであると感じたからである。OM101のパワーフォーカス機構は,ボディ側のダイアルでモーターを回し,そのモーターがレンズのピントリングを動かしてピントを調整するというものだ。このとき,ボディ側のダイアルを動かす速さによって,ピントリングの動く量が違ってくる。指の動きが適宜,拡大/縮小されて,ピントリングに伝わるのである(2016年10月20日の日記を参照)。
 これによって,ピントリングをすばやく動かすことと,微妙なピント調整とが両立される。これは,カメラのピント調整において,オートフォーカスよりも革命的な機構だと思う。オートフォーカスとこのパワーフォーカスの両方が組みこまれた後継機が上位モデルとして発売されていたら,カメラの機構における大きな変革が訪れたはずだ。そうなれば,パワーフォーカスの先駆者として,OLYMPUS OM101は間違いなく「名機」として名を残すことになったはずである。
 だが,現実はそうならなかった。
 1つには,オートフォーカスがあまりにも早く,実用的になってしまったことが考えられる。パワーフォーカスの登場が,遅すぎたのだ。もう1つは,OLYMPUS OM101がエントリーモデル的な位置づけだったため,カメラ全体の完成度が低かったと感じられたことが考えられる。
 したがって,繰り返すことになるが私は,「OM101は名機になりえたのではないか?」という表現を使った。OLYMPUS OM101は,「名機」とよぶには少々物足りない。かといって,単純に「迷機」などとして貶めるのは,間違っている。だから「迷機」という表現をさけて,「名機になりえたのではないか?」という表現を選ぶことにしたのである。

さて,OLYMPUS OM101は,歴史の流れにおいて「名機になりえたのではないか?」と考えられるものの,単体としては決して「名機」にはなりえない。その最大の問題点は,ファインダー内情報の貧弱さにある。
 OLYMPUS OM101の基本的な性格は,プログラムAE専用機だ。電源スイッチをONにするとファインダー内には,「P」という文字が表示される。そして,暗くなるとこれが点滅し,フラッシュの使用をうながすようになっている。
 それだけである。
 これでは,すぐれたパワーフォーカスに価値を見出してくれそうな,ある程度カメラに慣れた層の人が「使い物にならない」と評価してしまっても,やむを得ないだろう。OLYMPUS OM101は,OM707と同様に,マニュアルフォーカスのOMレンズを装着すると絞り優先AE専用機として使えるようになるが,それでもシャッター速度が表示されることはない。
 しかし,OLYMPUS OM101には,OM707にはなかったアドバンテージがある。それは,「マニュアルアダプタ2」というオプションパーツが用意されていたことだ。これを装着すると,OLYMPUS OM101で,絞り優先AEモードとマニュアル露出モードが使えるようになる。
 だが,そういうオプションパーツだけを入手するのは困難である。
 「マニュアルアダプタ2」がついた状態で売られているものを見かけることも,少ない。
 そこで,OLYMPUS OM101によく似た姿をしているOLYMPUS SC35を入手し,そこについているマニュアルアダプタらしきものを,OLYMPUS OM101につけかえた。それは,OLYMPUS OM101の「マニュアルアダプタ2」と同じように使えることがわかった。

下側の,シャッター速度ダイアルは,そのまま使うことができる。上側は,絞りダイアルとして使うことになるが,OLYMPUS SC35用に「露出補正値」が記されている。OLYMPUS AF 35-70mm F3.5-4.5を使うときはこの位置が開放であり,1目盛で1/2段,2目盛で1段ずつ,絞りこまれているように見える。ともあれこれで,任意の絞り値とシャッター速度を利用できるようになった。
 しかし,ファインダー内表示は,貧弱なままである。
 絞り優先AEモードでは,「A」という文字が表示される。そして,暗くなるとこれが点滅し,フラッシュの使用をうながすようになっている。絞り値は自分で設定するからファインダー内で表示されなくてもしかたないが,シャッター速度はなんからの形で,目安だけでもよいから表示してほしいものである。
 マニュアル露出モードでは,アンダーとオーバーを示す「▼」や「▲」が表示され,両方が点灯したときが適正露出となる。それだけであり,絞り値やシャッター速度値が表示されることはない。

ファインダー内表示に不満はあるが,晴れた日中であれば,露出のことをあまり気にする必要もない。

OLYMPUS OM101, OLYMPUS AF 35-70mm F3.5-4.5, ACROS

パワーフォーカスのピントあわせは,思った以上に快適である。そして,マニュアルアダプタで絞りを開放に設定すれば,ほぼ意図通りのボケ具合となる。

OLYMPUS OM101, OLYMPUS AF 35-70mm F3.5-4.5, ACROS

OLYMPUS OM101には露出補正機能はなく,逆光補正ボタンがあるだけだ。だが,マニュアル露出モードが使えるならば,問題ない。

OLYMPUS OM101, OLYMPUS AF 35-70mm F3.5-4.5, ACROS

ピントをあわせながらの流し撮りは,難しかった。こういう場面では,右手はシャッターレリーズに集中し,ピント調整は左手でおこなうのがよい。

OLYMPUS OM101, OLYMPUS AF 35-70mm F3.5-4.5, ACROS

エントリークラスの一眼レフカメラとしては,ファインダーの見え具合は悪くないように思う。

OLYMPUS OM101, OLYMPUS AF 35-70mm F3.5-4.5, ACROS

このレンズは,OLYMPUS OM707用の標準ズームレンズである。OM707を使ったときにも,このレンズには悪い印象はなかった。マニュアルフォーカス,マニュアル露出で使えれば,そのレンズのよさがじゅうぶんに引き出せるかもしれない。

OLYMPUS OM101, OLYMPUS AF 35-70mm F3.5-4.5, ACROS

平凡ではあるが,かっちり写るレンズがあった。OLYMPUS OM707では,オートフォーカスも実現された。優れたパワーフォーカスとともに,OLYMPUS OM101ではマニュアルアダプタが使えた。ここで終わってしまったのが,惜しまれる。オートフォーカスとダイアル式のパワーフォーカスが併用でき,マニュアル露出モードのある上位モデルが発売されていたら,カメラの歴史が大きくかわっていた可能性があっただろう。

OLYMPUS OM101, OLYMPUS AF 35-70mm F3.5-4.5, ACROS

ただし,OLYMPUS OM707やOM101の後継機が発売されていたとしても,私はたぶん,それを購入することはなかっただろう。私はあくまでも,基本的にニコン信者である(^_^;


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