撮影日記


2016年10月16日(日) 天気:曇のち雨

操作系にロックは必要か?不要か?
Nikon F-401とNikon F-401Sの差

京セラから発売されていたCONTAX Tvsというコンパクトカメラは,私にとって理想的な要素の多いコンパクトカメラである。基本的にはオートフォーカスでプログラムAEのカメラだが,絞り優先AEで撮ることもできる。また,マニュアルフォーカスを使うこともできる。搭載されたズームレンズは,28mmの広角域をカバーしており,沈胴式でフラットになるため,全体的にあまりコンパクトではないものの,カバン等へのおさまりがよい。唯一最大の問題点といえるのは,発売当時のメーカー希望小売価格が高価だったことである(2014年6月1日の日記を参照)。最近は中古価格がずいぶんとこなれてきたので,はじめてフィルムのコンパクトカメラを買おうと思っている人が購入の検討対象にするのも,よいかもしれない。
 CONTAX Tvsのファインダー内には,合焦を示すインジケータがある。このインジケータは,オートフォーカスのときだけでなく,マニュアルフォーカスのときにもはたらく。カメラをかまえたときに,右手の親指が自然にかかるところにダイアルがあり,ここを回すことでマニュアルフォーカスをおこなう。おや,MAMIYA-SIXやOLYMPUS OM101と同じだ(笑)。
 CONTAX Tvsでマニュアルフォーカスを使いたいのは,被写体の形が複雑だったり奥行きがあったりして,ピントが手前にあうのか奥にあうのか,安心できそうにない場合である。マニュアルフォーカスでピントを調整し,上面のダイアルの目盛を見れば,だいたい思った位置にピントをあわせているかどうか確認できる。けっして,精密なピント調整のためというわけではない。
 このダイアルを,クリック感のあるいちばん端までまわしておくと,オートフォーカスになる。じつに合理的で,わかりやすい操作系だと思う。だが,そこに問題点がある。オートフォーカスのクリックがやや緩いのか,カバンから取り出したときに,ダイアルがオートフォーカスの位置からはずれていることがあるのだ。オートフォーカスの位置にはロックがかかるようにしておき,オートフォーカスをはずしてマニュアルフォーカスに切りかえるときには,たとえばボタンを押してロックを解除しながらダイアルを回す,というようになっていればありがたかった。

カメラの操作系における「ロック」は,しばしば賛否を呼ぶようだ。
 ロックがあることで不用意に状態が切りかわることを防げる一方で,ロックがあることでスムースな操作を妨げることもある。ロック機構を設けると,それだけ部品点数が増え製造コストも上昇するだろう,という面もある。操作系におけるロック機構は,必要なのか?不要なのか?どちらか一方に決めつけることは,たぶん無理だろう。

OLYMPUS OM101を入手するために,ジャンクカメラ38台セットを1円で落札した(2016年9月28日の日記を参照)。そこには,PENTAX superA(2016年10月1日の日記を参照)やRICOH XR-X(2016年10月6日の日記を参照)のほかに,Nikon F-401とNikon F-401Sが含まれていた。すでに入手していた(2015年2月17日の日記を参照)カメラではあるが,せっかくやってきたのだから動作を確認する。電池がトラブルをおこした痕跡もなく,きれいな状態だ。レンズをつけても,動作に問題は感じられない。
 異変を感じたのは,そのときだ。
 ダイアルが,AEの位置から動かないのである。
 おや,ちょっと動きが渋いのかな?と思ったが,ダイアルはうんともすんとも動かない。
 よく見れば,ダイアルの横に,なにかボタンが脱落したと思われる穴がある。

これはきっと,ロック解除ボタンの痕跡だ!
 細いドライバの先で,その穴から見える板を押さえてやると,ダイアルはスムースに回転した。間違いない,ここにダイアルのロックを解除するボタンがあったのだ。
 部品取り用のNikon F-401から,ボタンを移植してやろうと考えた。だが,Nikon F-401には,ダイアルのロックがないのである。

Nikon F-401からNikon F-401Sへのモデルチェンジのときには,このような細かい改良もおこなわれていたことを,あらためて思い知った。Nikon F-401Sでは,L(シャッターロック)とA(シャッター速度がオート)および,S(絞りの選択がオート)の位置で,ダイアルにロックがかかるようになっていたのである。

残念ながら,部品取り用のNikon F-401Sはない。使える状態にしたいから,このNikon F-401Sでは,ダイアルをロックする部品をはずしておくことにした。こうしておけば,本来の姿とは異なってしまうが,使用にあたっての問題はない。なお,この部分のパネルについては,ロック解除ボタンの穴があるかないかだけで,Nikon F-401もNikon F-401Sも同じ大きさのようである。

最近,「ロックだぜ」という表現を耳にすることが多い。私はその本質的な意味がなんなのか,わかっていない。ただ,ここでいう「ロック」は,ポピュラー音楽のジャンルの1つを指しているらしいことはわかる。そうであれば,「ロック」の背景にあるとされる,反社会的な態度が含まれていると考えられそうだ。政治的な思想に限定せず,自分にとってここは一般的な解釈とは少し違う視点から見たり,態度をとったりすることを,軽く表現しているのかな?と考えられる。
 カメラにおいて「ロック」というと,まずは,操作系の制約をあたえるしくみを指す。
 ダイアルのロック解除ボタンが失われていたことに対して,そのボタンを再生したり代用品を見つけたりするのではなく撤去してしまうというのは,どうだなかなか「ロックだぜ」な対応だろう?(笑)。
 なお,「ロックだぜ」の「ロック」はrockであり,操作系の「ロック」はlockであることは,いうまでもない。


← 前のページ もくじ 次のページ →