撮影日記


2016年05月17日(火) 天気:晴

イコンタ(Ikonta 520/2)と歩くお昼休み

6月4日から6月9日は,「中判写真週間」である(2010年6月5日の日記を参照)。
 中判写真とは,おもに幅62mmの120フィルムを使って,6cm×4.5cm,6cm×6cm,6cm×7cm,6cm×8cm,6cm×9cmといったフォーマットで撮影した写真をいう。このうちもっとも小さな6cm×4.5cm判(セミ判)でも,実際の画面サイズは56mm×41.5mmあり,その面積はライカ判(36mm×24mm)の2.5倍以上ある。これくらいの大きさがあれば,引き伸ばさなくても鑑賞できなくはない。さらに,6cm×9cm(ブローニー判)になると,ライカ判の5倍以上の面積となる。この大きさは名刺判とよばれる印画紙のサイズに近く,そのままでふつうに鑑賞できるサイズだといってよいだろう。
 だが,判が大きくなると,カメラも大きくなる。そう考えたとき,折り畳み式のカメラがじつに魅力的なものになってくる。折り畳むと非常にコンパクトになり,しかも,でっぱりもほとんどない薄い箱状になる。カバン等へのおさまりもよく,携行性にすぐれている。

このタイプの折り畳み式カメラは,フォールディングカメラとよばれる。そのなかでも,ボタンを押すとバネの力で撮影状態に組みあがるものは,スプリングカメラとよばれる。さいしょのスプリングカメラとされるものが,ZEISS IKONのIkonta (イコンタ)だ。Ikontaは高く評価され,改良を加えられながら長く発売された。そのため,Ikontaという名前で多くの機種があり,それを模倣したかのようなカメラも多くのメーカーから発売されている。
 このカメラは,Ikontaのなかでももっとも初期のタイプである。今年の中判写真週間では,この初代Ikonta (520/2)を使おうと思う。ただしこれは,最近いただいたばかりのものだ(2016年2月6日の日記を参照)から,まずは試し撮りをしておこう。

IKONTA 520/2, Novar 10.5cm F6.3, ACROS

5月も半ばになると,日ざしはまさに,初夏の様相である。よく晴れた日は,とてもまぶしい。「楠木の大雁木」のサクラの葉も,新緑をすぎて深い緑になり,濃い木陰をつくっている。そこで休んでいる人がいたのには,気がつかなかった。

IKONTA 520/2, Novar 10.5cm F6.3, ACROS

このIkontaに搭載された3枚構成のNovarは,4枚あるいはそれ以上のレンズで構成されたTessarやSonnarなどの高級高性能レンズに対して,廉価版のレンズである。それでも周辺まで,しっかりとした像を結んでくれる。引き伸ばせばいろいろとアラも見えてくるかもしれないが,ブローニー判だから無理に引き伸ばさなくてもよい。

IKONTA 520/2, Novar 10.5cm F6.3, ACROS

日ざしは強いが,川沿いの風はとても涼しい。木陰は,絶好の休憩スポットだ。

IKONTA 520/2, Novar 10.5cm F6.3, ACROS

「コンパクトな6cm×9cm判カメラを使いたい」と考えたとき,以前であれば,No.1 Pocket Kodak Juniorを使っていた。固定焦点の簡便なカメラであるが,条件がよければ驚くほどきれいに写る。引き伸ばす必要がないから,じゅうぶんすぎるくらいに写ってくれる(2014年6月9日の日記を参照)。
 初代Ikontaのレンズやシャッターは,決して高級なものではない。それでも,No.1 Pocket Kodak Juniorのものと違って,シャッター速度は3段階(1/25,1/50,1/100)選択でき,絞り値の選択の範囲も広い。なにより,目測式だがピント調整ができる。No.1 Pocket Kodak Juniorでも条件がよければきれいに写るわけで,Ikonta 520/2であればきれいに写る条件が,より広いのである。

IKONTA 520/2, Novar 10.5cm F6.3, ACROS

蛇腹を使ったカメラには,折り畳めばコンパクトになるということのほかに,カメラ内部の反射が抑えられているのですっきりした描写が得られるという特徴が指摘される。そのような理由から,蛇腹のあるカメラを好む人があるその一方で,蛇腹は経年劣化などによって傷みやすいことから,使用を避ける人もある。中古カメラ市場では,いわゆるレンジファインダーカメラや二眼レフカメラなどにくらべて,比較的人気が低い傾向にあるようだが,「中判カメラに興味はあるが,大きいから…」などと躊躇している人にはぜひ,蛇腹を使ったフォールディングカメラやスプリングカメラの使用をご検討いただきたい。その驚くべきコンパクトさと,驚くべきすなおできれいな描写に,きっと病みつきになるはずだ。

ともあれ今年の「中判写真週間」は,これで決まり!かな。

「中判写真週間」では,アトム判や大名刺判カメラで「チェキ」フィルムを使うのも(2015年6月9日の日記を参照)やっておきたい。


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