撮影日記


2016年03月17日(木) 天気:曇のち晴

ディジタル一眼レフカメラで
旧ニッコールレンズが使えるか?

ニコンの一眼レフカメラのレンズマウント(ボディとレンズとを接合する部分)は,「不変のFマウント」と称している。1959年に発売された一眼レフカメラNikon F以来,最新のディジタル一眼レフカメラまで,その形状が変わらないためである。もっとも,変わらないのはその形状だけであり,機能は大きく変化している。そのため,レンズとボディとの組みあわせによっては,装着できてもじゅうぶんな機能が利用できない場合があったり,そもそも装着ができない場合があったりする。その条件はけっこう複雑で,そのほぼ全貌を把握しているならば,「私はニコン一眼レフカメラの熱心なファンです」と名乗っても,文句を言われることはないだろう。
 たとえば,現在のディジタル一眼レフカメラには,初期のオートニッコールレンズを装着できない。ここでいう「初期のオートニッコールレンズ」とは,1977年に発売された絞り値の伝達が「Ai方式」になったAiニッコールレンズより前のレンズを指し,簡単のために「非Aiレンズ」とよばれることが多い。Aiレンズに対応したボディでは,絞りリングの回転量を受け取るためのピン(Ai連動ピン)があるために,非Aiレンズが装着できなくなっている(下図左)。最近のAi連動ピンが省略されている(そのため,Aiレンズを装着しても露出計がはたらかない)機種では,プログラムAEのために絞りリングが最小絞りに設定されているかどうかを判別するピンがあるため,それが妨げになって非Aiレンズが装着できない(下図右)。

だから,非Aiレンズ時代のボディやAi連動ピンのついた部品(Aiカプラ)を取り去ったNikon F-501AF(2015年3月18日の日記を参照)のように,マウントのまわりにピンのないボディでなければ,非Aiレンズを装着できないのである。
 もっとも,ニコンでは絞り値の伝達方式がAi方式にかわったからといって,すぐにすべての非Aiレンズが使えなくなったわけではない。初期のAi方式のボディでは,Ai連動ピンが可倒式になっており,そのピンを倒すことで非Aiレンズを装着できるようになっていた。ただしその場合,レンズで設定した絞り値をボディに伝達する術がないので,カメラに内蔵されたTTL露出計を利用する場合は,プレビューレバーを利用した絞り込み測光となる。
 ニコンのディジタル一眼レフカメラでは,2013年に発売されたNikon Dfのみ,Ai連動ピンが可倒式になっている。Nikon Dfは,非Aiレンズを正式に装着できる唯一のディジタル一眼レフカメラとなっているが,レンズで設定した絞り値をカメラボディに伝える術はなく,別のダイアルでボディに伝える必要がある。

FUJIX DS-505Aも,マウントのまわりにピンがない。

そのためになんの妨げもなく,非Aiレンズを装着できる(2016年1月4日の日記を参照)。

ただし,非Aiレンズを装着しても,露出計は連動しない。FUJIX DS-505Aの撮像素子は小さい(2/3型)ので縮小光学系が内蔵されているが,そのためにレンズによってはケラレが大きくて実用にならないとされている。取扱説明書に使えるレンズを示した表が掲載されているが,非Aiレンズは対象外となっている。
 だが,非Aiレンズを装着できるし,内蔵の露出計ははたらかないが,マニュアルモードで撮影が可能である。

もしも内蔵露出計が使えれば,非Aiレンズも実用になる可能性がある。
 FUJIX DS-505Aが,装着されたレンズをAiレンズであるか非Aiレンズであるかを判別するのは,マウント内部の開放F値連動ピンを受けるレバーのようだ。
 だから,このレバーを適量動かして固定してやれば,内蔵露出計が使えるようになるはずである。ためしに動かしてみると,このあたりで内蔵露出計が動作するようになり,絞り優先AEも使えるようになる。

このレバーを,露出計がはたらくようになる位置に,細く切った黒いパーマセルテープで固定するとどうだろうか。

非Aiレンズでも,AEが使えるようになる。

そして,天体望遠鏡に接続した。
 AEが使えれば,おおむね適正な露光が簡単に得られる。つぎの画像は,撮影した画像(1280ピクセル×1000ピクセル)から,600ピクセル×400ピクセルの範囲を切り抜いたものである。

FUJIX DS-505A, Vixen D=80mm f=1200mm

レバーを固定するべき正しい位置がまだつかめていないが,FUJIX DS-505Aは非Aiレンズを扱いやすいディジタル一眼レフカメラとして,もっと見直されるべきだろう。
 ただし,使いたいレンズがケラレの影響のないものかどうかのチェックが必要である。また,内蔵された縮小光学系のために,装着した非Aiレンズ本来の描写が再現されるとはかぎらない。だが,なんといってもいまどき,撮像素子の画素数が130万画素というのは,あまりにも物足りないと感じられるかもしれない。


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