撮影日記


2015年11月07日(土) 天気:晴のち曇

ニッコールを見ずして結構と言うなかれ
いろいろ楽しめる「ニコンミュージアム」

「日光を見ずして結構と言うなかれ」という格言がある。ここでいう「日光」とは,太陽の光のことではない。栃木県にある日光という地名を指しており,もう少し具体的に言うと,「日光東照宮」を指している。日光東照宮のようなすばらしいところを見ていないならば,結構ということばを使ってはいけない。言いかえれば,日光東照宮はとてもすばらしいところである,ということになる。
 世間では「日光」と言えば,日光東照宮を指すわけであるが,カメラや写真に興味のある人にとって「日光」と言えば,それは「日本光学」を指す。「日本光学」すなわち,ニコン様である。ニコンの事業は光学ガラスの製造からはじまり,最近では半導体の製造装置などさまざまな精密機器を製造している。しかし,多くの人にとって,もっとも身近なニコンの製品は,間違いなくカメラであろう。第二次世界大戦までは海軍で使用される光学機器を主力製品としていたが,戦後になって軍用品から民生品の製造を主力とするようになった。そのとき,レンズやカメラが海外のカメラマンに高く評価されたことから,カメラとレンズがニコンを代表する製品になったというお話は,よく知られていると思う。
 ニコン(日本光学工業株式会社)が設立されたのは,1917年である(*1)。再来年が,100周年になる。その次の100年に向けてということで,ニコンの活動や歴史を紹介する「ニコンミュージアム」が先月,2015年10月17日に開設された(*2)。

「ニコンミュージアム」は,品川インターシティC棟の2階にある。

品川インターシティは,国鉄の操車場跡地を再開発してつくられた施設である。すなわちそこは,JR品川駅からごく近い。品川駅の港南口(京浜急行への乗り換え口と反対のほう)を出て,そのままスカイウェイと称する陸橋を歩いて行けば,ほどなく「ニコンミュージアム」にたどりつく。

ミュージアムに入ってまず目につくのは,巨大なガラスの塊である。ここから,光学レンズが削り出されるという。これには触れることができ,その重厚さにまず感激するだろう。
 そのまま奥へ入っていくと,「レンズの実験室」というブースがある。実際のレンズを使って遊んだり性質を確認したりできるなど,ここは子どもに理科への興味づけをおこなうにも使えるコーナーだろう。
 奥へ入ると,長い壁一面に,歴代のカメラ製品が展示されている。初期のカメラから,最新のディジタルカメラまで,さらには報道向けの特殊なモデルまで一度に眺めることができる。まさに,圧巻の展示である。きっとなによりも,初期のディジタル一眼レフカメラ「Nikon E2/E2S」「Nikon E3/E3S」の巨大さを思い知ることだろう(笑)。
 そのほか,双眼鏡や顕微鏡の歴史の展示,検査装置など産業機器のデモもおもしろい。
 それらのなかで,個人的にもっとも興味深く眺めることができたのは,「試作品」である。

日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に「近日発売」と掲載されながらも(2007年8月23日の日記を参照),実際に発売されることのなかったAuto NIKKOR Wide-Zoom 3.5cm-8.5cm F2.8-F4の実物である。ニコンのカメラ用レンズは「ニッコール」という名称がつけられている。これこそまさに,「ニッコールを見ずして結構と言うなかれ」である。さて,これはたしかに巨大なレンズであるが,大口径ズームレンズが一般的になった現代なら,このくらいの大きさなら気にならないのではないか?と感じた。実際にこのレンズで撮られた写真も,あわせて展示されている。

そのほか,オートフォーカスレンズの試作品,透視ファインダもそなえた一眼レフカメラ,ニコンI型の初期の試作ボディなども展示されていた。
 これらの展示を一回りして疲れたと感じたなら,入口付近にあるブースへ入るとよい。そこでは,ニコンの100周年のためにつくられた交響組曲の映像をリピート再生している。映像は演奏のようすだけでなく,ニコンの歴史を簡潔に紹介する内容も含まれているので,それを眺めているだけでもじゅうぶんに楽しめる。

さて,博物館や美術館といえば,ミュージアムショップも見逃せない。「ニコンミュージアム」にも入口の隅に,ミュージアムショップがある。しかし,ふつうのミュージアムショップと少し趣が違う。ちょっとしたショーケースのなかに見本があり,その後ろにある自動販売機で購入するようになっている。自動販売機に現金を投入し,商品を選択すると,食堂の食券のようなチケットが出てくる。

そのチケットを受け付けの人に渡して,商品を受け取るようになっているのだ。
 今回,ミュージアムショップで購入したものは,「ニコンようかん」である。

このようかんは,もともとはニコン社内の売店で,従業員向けに売られていたものらしい。最近になって,ニコンのオンラインショップでも売られるようになった(*3)が,ついに店頭販売もされるようになった,ということだ。

ようかんというものは,煮込んでつくられているので,よう噛んで食べること。残念ながら,ニコンでつくられているのではなく,専門のお菓子メーカーからの供給を受けたOEM商品なのであるが,ニコン製品のユーザであるなら,いちどは食べてみてもよいのではないだろうか。

「ニコンミュージアム」は,品川駅の港南口からだと5分くらいで到達できる。だから,東海道新幹線の乗り場からはごく近いということになる。東海道新幹線を利用して東京へ出張する機会があれば,空き時間が30〜40分もあれば駆け足だが一通り眺めて回ることができるだろう。なお,開館は10時から18時まで,日曜日は休館とのこと。

*1 ニコンの歴史 (株式会社ニコン)
http://www.nikon.co.jp/profile/corporate/info/pdf/nikon2015j_5.pdf

*2 ニコンミュージアム (株式会社ニコン)
http://www.nikon.co.jp/profile/museum/

*3 菓子 (ニコンダイレクト)
http://shop.nikon-image.com/front/ItemSummaryRefer.do?cateId=10400


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