撮影日記


2015年09月16日(水) 天気:雨

靴を履いたカメラ…?
「おくのてクン」がやってきた!

古いカメラの収集を趣味にしている人は,少なくないだろう。とくに,この「撮影日記」を読んでくださっている方の大半は,その程度に差はあるかもしれないが,古いカメラの収集にも興味をおもちのことだろう。
 古いカメラ等の入手方法には,いろいろなものがある。1つは,自分の家に埋もれているかもしれないものを発掘すること。その家に何代にも渡って住んでいれば,両親あるいは祖父母等がずっと昔に使っていたカメラが,どこかに埋もれている可能性がある。あるいは友人,知人等から「不要になった」とするものを譲り受けることもあるだろう。そのような場合は,箱や付属品,説明書が残っている可能性も高いし,購入したときの事情を聞くことができるかもしれない。現物資料として,よいものになる可能性がある。ただ,そういう都合のよいケースはあまり多くないとは思う。
 もっともよく使われる入手方法は,中古カメラを扱っているお店での購入だろう。中古カメラを専門的に扱っているお店ならば,高級品から普及品まで,あるいは珍品とよばれるようなものに出会えるかもしれない。よい店員さんに巡りあえれば,そのカメラに関するいろいろなことを教えてもらうこともできるだろう。ただし,お店はあくまでも商売である。よほど状態の悪いジャンク品や,あまりにも売れなくて在庫が過剰になっているようなものを除けば,格安で購入することが難しい。
 珍品に巡りあえる可能性があり,かつ,比較的安価に購入できる可能性もある手段として,個人売買というものがある。とくに最近では,インターネットオークションに注目する人が少なくないはずだ。オークションへの出品者が専門店ではない場合などには,商品の状態説明が不十分だったり,意図的に不具合を目立たなくしていたりすることなどが原因のトラブルが懸念される。そのあたりにも気をつけながら,うまく利用している人が大半だろうとは思う。

twitterや掲示板などのネットワークコミュニケーションの場において,インターネットオークションの出品物を紹介するメッセージが投稿されることも珍しくない。それが投稿される事情としては,次のようなことが考えられる。
 1つは,出品者が宣伝のために投稿する場合である。個人的にそのような行動には,単に「少しでも高く売りたいだけ」という意図しか感じられない。そのため,その出品者自身への信頼感も低いものになってしまう。
 逆の発想として,怪しげな出品者の行動や,怪しげな出品物などのような危険な情報を共有しようというものがある。こういう動きは,「2ちゃんねる」のような掲示板で見られることが多いように感じる。
 さらに,こういう事情も考えられる。それは,「珍しいものが出品された」という話題を共有しようという発想である。とくに,その存在が噂の域を出なかったようなものや,世界に数台しかないというレベルの希少品が出品されたとき,それはその分野に興味をもっている者にとっては大ニュースである。twitterなどでもっともよく見られるのは,このパターンであるように感じる。

オークションの出品物の紹介というメッセージの投稿でも,いろいろな立場で,いろいろな視点からおこなわれていることがあるわけだが,1つだけ共通していることがある。それは,基本的に「その情報を紹介した人自身は,落札する気はあまりない」と考えられることだ。
 その理由は,考えてみれば単純なこと。オークションは,競り売りである。買いたい人が多ければ,それだけ入札が競合し,値段が吊り上る可能性が高くなる。少しでも安価に落札したいならば,競合者があらわれないほうが都合がよい。だから自分が落札したいなら,そのような出品があることを他人に言うはずがない。それでも,同じような興味関心をもっている仲間には伝えたいかもしれない。とくにその仲間がそれを欲しがっていたことがあるならば,むしろ教えてあげるべきだろう。ただしそれは,twitterや掲示板のような不特定多数の人に伝わる場においてではなく,メールのような個別に伝達する手段で教えてあげるのがよい。理由は同じく,落札したい人のために,競合者が無用に増えないようにするためである。

だから私も,「珍品」「足つきカメラホルダー」「対応機種不明」という出品をみつけたとき,そのまま黙って,終了直前に入札した。競合者はなく,開始価格での落札となった。

これが「対応機種不明」の「足つきカメラホルダー」である。
 これの「対応機種」がすぐにわかった人は,それなりの「通」だと言ってよいだろう。
 では,「対応機種」と組みあわせてみよう。

その「対応機種」とは,「マミヤU」である。

このカメラホルダーには,「おくのてクン」という名称が与えられていた。日本カメラショー「カメラ総合カタログ」にはオプション品や付属品として記載されていないので,期間等が限定されて特別に付属されたものではないかと思われる。
 「おくのてクン」の存在は,以前から知っていた。中古カメラ店で,「おくのてクン」とセットで販売されているMamiya Uを見たことも,20年くらい前に一度だけある。私がもっていないシルバーボディだったが,その場で衝動的に購入する気にはならなかった。価格は覚えていないが,たぶん,やや強気なものだったのだろう。その中古カメラ店が近所のお店であれば,後日「買っても後悔,買わずとも後悔。同じ後悔するなら,買って後悔しよう。」と行動を起こしたかもしれないが,そのお店は東京のお店でありその夜には広島に戻る必要があったのだった。
 それ以来,シルバーボディのMamiya Uを見ることはたまにあったが,「おくてのクン」を見かけることはなかったのである。

「おくのてクン」にセットすればMamiya Uが自立するので,たとえばセルフタイマーを使って自分撮りをするときに有効だ。そういう意味では「おくのてクン」は,「テーブル三脚」ということになる。だが,「おくのてクン」の機能は,それだけではない。本来はストラップも付属していて,Mamiya Uをセットしたまま首や肩にかけることもできるのである。そういう意味では「おくのてクン」は,Mamiya Uを持ち歩くための「カメラホルダー」ということになる。
 Mamiya Uを持ち歩くために「おくのてクン」には,こんなギミックも用意されている。

足の裏に,予備の電池を収納できるのだ。単4型乾電池を左右に1本ずつ,計2本を収納して持ち歩けるのである。「おくのてクン」は,じつによくできた優秀なヤツだ。マミヤ,最高!である。
 「おくのてクン」という名称からは,「手」が主役に思えるが,実は「足」が主役だったようだ(笑)。実際に,「手」より「足」のほうが目立って見える。いや,目立っているのは「足」というよりも「靴」である。
 「靴」を履いたカメラというと… 

コニカ「KANPAI」(乾杯)を思い出す人も多いだろう。Konica KANPAIは,基本的には固定焦点,自動露出の簡便なカメラである。ギミックとして「ボイスレリーズ」という機構が用意されていて,大きな音に反応して自動的にシャッターレリーズがおこなわれるようになっている。そのとき,カメラが少しだけ首を振るようになっている。宴席などで盛り上がるごとに,カメラが少しずつ向きを変えながら,自動的に写真を撮ってくれるわけである。
 ただし,「音のする方を向いて写真を撮る」というわけではない。適当に,順番に向きを変えるだけである。とても,実用になるとは思えない(笑)。だが,おもしろい(笑)。
 自動的に首を振る機能を使うために,このカメラにはテーブル三脚が付属していた。そしてその三脚の先に,靴を履かせられるようになっている。惜しいことに,入手時にすでに,片方の靴が失われていた。少し,寂しい。
 「靴」を履いていたわけではないが,自立するカメラとしては,こういうものもある。

「全自動フジカ」(FUJICA AUTO-7)と「三脚付ケース」の組みあわせだ。
 この「三脚付ケース」は,通常のカメラケースの下部に三脚が埋めこまれた形になっており,少々厚みが増すものの,ふつうのカメラケースとしても使えるようになっている(2007年5月27日の日記を参照)。これはとても実用的だが,Mamiya Uの「おくのてクン」やKonica KANPAIにくらべると,「遊び心」が不足しているのが難点だ。この「三脚付ケース」も,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」では掲載が見られないので,限定的な付属品だったのではないかと思われる。

ところで,FUJICA AUTO-7とMamiya Uの発売は1981年だが,Konica KANPAIの発売は1989年である。ということは,Konica KANPAIに靴を履かせようと提案した人は,実は「おくのてクン」に影響を受けていた可能性がある。きっと,そうだ。いや,そうあってほしい。そうだったなら,おもしろい。
 実際は,どうなのだろう?

※Mamiya Uの「おくのてクン」には,たとえば黄色などのカラーバリエーションがある(2022年05月01日の日記を参照)。


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