撮影日記


2015年09月07日(月) 天気:曇

Finepix S2 Proをお迎えした

これは,私が長く使っているディジタル一眼レフカメラNikon D70である。購入したのは,2004年年末のこと。もう,10年以上も前のことになる(2004年12月30日の日記を参照)。それ以来,OLYMPUS C-1400Lを除くと,ディジタル一眼レフカメラはこれ1台だけを使ってきた。

フィルムカメラに対するディジタルカメラのメリットとしては,いろいろなものが指摘されてきたと思うが,大きくは次の3つではないだろうか。
 もっともよく言われていた点としては,フィルム代や現像代が不要なのでランニングコストが安いというものがあるだろう。Nikon D70が発売されたころはまだ,フィルムを使って写真を撮る人が多かった。そのころは今よりもフィルムの種類も多く,フィルムも現像も安価だった。それでも,フィルム1本が500円,現像1本が500円くらいはしていたし,ネガフィルムであればさらに,プリント1枚35円,24枚で840円だから,フィルム代,現像代をトータルすると2000円くらいが必要になった。これをいちいち払うか払わないかは,負担感が大きく違ってくるのである。また,フィルムを買うとき,現像を依頼するとき,仕上がったプリントを受け取るときと,3回もお店に足を運ぶ必要があったわけだが,それが解消されたという要因も無視できない。
 つぎによく言われた点としては,撮影結果をすぐに確認できるというものがある。ディジタルカメラ本体に液晶ディスプレイが内蔵されたことで,撮影したばかりのコマをその場ですぐに見ることができるようになった。電気信号で画像を記録する初期のカメラは,撮影結果を見るために専用の装置を通してテレビなどに投影していたわけで,それでは大きなメリットにはならなかったことだろう。私がNikon D70の購入に踏み切ったのは,先の日記にも書いたように「画像がちゃんと写っているかどうかが,その場で確認できる」から「仕事のために使いたいと思った」ことが大きな理由である。
 もう1つ,私が大きな利点であると感じているのは,1コマごとに感度を変えて撮影できることだ。フィルムであれば,とにかく1本を使い切らなければ,フィルムを交換することができない。だから,高感度フィルムと低感度フィルム,ポジフィルムとネガフィルム,カラーフィルムとモノクロフィルムなどを使い分けるためには,どうしても2台以上のボディがほしくなる。そして気がつくと,カメラがひたすら増殖するようになるのだ。ディジタルカメラには,そういう心配がない。そのため私は10年以上にわたって,Nikon D70だけを使ってきたのである。自分の用途にじゅうぶんな性能があれば,2台以上もつ必要はないのである(失敗の許されない仕事のために予備機をもつ必要があるケースなどは除く)。

なお,1コマごとに感度を変えて撮影できることについては,別の見方もできる。
 露出の決定に迷うようなときなどに段階露光をすることがあるが,絞りとシャッター速度を一定のまま,感度の設定だけを変えて段階露光ができるのも,ディジタルカメラならではの大きなメリットだ。これは,フィルムカメラ1台では,逆立ちしてもできない技である。ということで,シートフィルムを使う大判カメラには,1コマごとにフィルムを変えられるというおもしろさがあるのだが,ここに話を振ると脱線して戻れなくなるので,ここまでにする。

私がNikon D70を購入したのは,先に書いたように「仕事で使いたいから」という理由が大きい。ただし,「仕事」と言っても,私は写真で生計をたてているわけではない。撮影という行動そのものでお金を稼ぐわけではなく,仕事に添える写真を思い通りに作りたいだけである。具体的に言うと,Nikon D70を購入するきっかけになった仕事は,いわゆる取材のようなものであった。そういう事情なので,あまり高いものを買っても,元を取ることができない。しかもディジタルカメラはモデルチェンジが激しいから,長く使えるかどうか不安もあった。Nikon D70の購入に踏み切るには「仕事に必要」に加えて,先の日記にも書いたように「友人からのアオリが効いたこと」も大きな要因として無視できなかったし,そしてなによりもディジタル一眼レフカメラが「楽に買える金額になっていたこと」が重要だったのである。
 Nikon D70が発売されるころまでのディジタル一眼レフカメラが,どれくらい高価なものだったか,ぜひ思い出してほしい。
 たとえば1995年には,Nikon E2とFUJI DS-505というカメラが発売されている。レンズと撮像素子との間に画像を縮小するためのレンズ群がはいっており,撮像素子が小さいものながら,ニコンFマウントのレンズをライカ判の一眼レフカメラと違わない感覚で使えるようになっていた。撮像素子の画素数は130万画素で,DS-505本体の価格は110万円である(日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.110,1995年)。連写性能を少し高めたDS-515は,140万円とのことだ。このシリーズはその後,1998年のNikon E3,FUJI DS-560へとモデルチェンジをしていく。価格は少しだけ下がって,DS-560本体の価格は77万円。高速連写モデルDS-565は98万円である(日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.116,2000年)。
 ディジタル一眼レフカメラをはじめて発売したのは,KODAKである(*1)。1991年に,Nikon F3をベースにしたKODAK DCS (DCS100)を発売した。撮像素子は130万画素のもので,本体の価格は20000ドルから25000ドル,おおざっぱに言えば200万円前後ということになる。さらに専用のデータ転送装置なども必要だったようだから,あわせると数百万円というものになる。KODAKからはその後,Nikon F-801,F90,F5などをベースにした,200万画素や600万画素のディジタル一眼レフカメラが発売された。あわせて,Canon EOS-1シリーズをベースにしたものも発売されている。当時,ライカ判フィルムと同じくらいの品質の画像を得るには,少なくとも600万画素は必要だと言われていた。だからこのころからディジタル一眼レフカメラの動向を気にするようになった人が出てきたものと思われる。とはいえこれらの本体は,300万円をこえるようなものになっていた。たとえば1994年に発売されたKODAK DCS460はNikon F90をベースにした600万画素のディジタル一眼レフカメラであるが,その価格は349万円である(*2 なぜかこの機種だけ価格が記載されていた)。とても,趣味で使う目的で買えるようなものではなかった。そもそも「DCS」シリーズは,一般の人を対象にしていなかったのかもしれない。日本カメラショー「カメラ総合カタログ」には掲載されていないのである。ただ1機種,Nikon PRONEA600iをベースにしたKODAK Professional DCS315 (150万画素)だけは,vol.115(1999年)に掲載があり,その価格は88万円となっている。

「ディジタル一眼レフカメラはあくまで業務用」という流れに変化が見えたのは,1999年9月に発売されたNikon D1であろう。記録される画像は260万画素のものだが,本体の価格が65万円になったのである(日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.116,2000年)。そして,2000年5月に発売されたFUJI FinePix S1 Proは,撮像素子は340万画素だが記録される画像は600万画素のものになっていた。本体の価格は375,000円である(日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.117,2001年)。この機種については私も,購入をかなり前向きに考えたものである。いきつけのカメラ店で実際の販売価格を確認し,たちまち使いそうもないレンズなどを処分すれば…などなど。ただこのころは仕事が忙しく(2000年12月29日の日記を参照),実際に購入という行動をおこすことはなかった。
 そして,2004年の年末に,私がディジタル一眼レフカメラを購入する決断をしたときは,大幅な低価格化を実現したNikon D70が発売されて半年以上が過ぎたころで,販売店では年末に向けての価格競争がおこなわれていた。選択肢としてはNikon D70のほかにNikon D1XやFUJI FinePix S3 Proなどの機種も発売されていたが,高級機種としては約1400万画素でライカ判サイズの撮像素子をもつKODAK DCS Pro 14nがどうしても気になる存在だ。ただそれはあまりに高価だったので,すなおにお手頃価格のNikon D70を選択したのである。

Nikon D70を購入したときには,「せいぜい4〜5年くらいで買いかえなければならないかな?」と思っていたものであるが,気がつくといつのまにか10年以上使っていたことになる。さすがに陳腐化してきたしフィルムを使う環境もかなり厳しくなってきたので,ライカ判サイズの撮像素子をもつ機種の購入を考えてみてはいる。しかしNikon D70はまだまだ大きな支障もなく使えるので,まとまった金額を払うことにまだ踏ん切りがつかない。
 また,Nikon D70の購入後も,FinePix S1 Proが安価に買えないものかと気にはかけていた。未練たらしいといえばそうなのだが,いちどは購入を前向きに検討した機種であるから,やはりいずれは入手したいと考えるものである。今となってはかなり古い機種であるが,意外と安くならない。そんなときにふと,FinePix S1 ProではなくFinePix S2 Proを5000円ほどで購入できる機会に出会ってしまった。FinePix S2 Proの撮像素子は600万画素で,画素数だけで見ればNikon D70とかわらないが,富士フイルム独特のハニカム配列の撮像素子のために,画像は1200万画素で記録されるという。いちおうNikon D70よりスペックが高いから,わざわざ買う意味があるのだ,と自分に言い聞かせ,購入に踏み切ったのである。
 ということで,OLYMPUS C-1400Lを除いて,これが私にとって2台目のディジタル一眼レフカメラとなったのである。今日は,FinePix記念日ということにしよう。

*1 Kodak社製初期プロ用一眼レフデジタルカメラを日本カメラ博物館へ寄贈 (コダック株式会社)
http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/corp/news/2011/0404.shtml

*2 Kodak Professiional DCS460 デジタルカメラ (コダック株式会社)
http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/professional/products/cameras/dcs460/index.shtml


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