撮影日記


2015年07月01日(水) 天気:曇り

AE専用一眼レフカメラの時代

最近,3台の絞り優先AE専用の一眼レフが私のてもとにやってきた(2015年6月30日の日記を参照)。ほかにも絞り優先AE専用の一眼レフカメラが何台かあったので,それらをまとめて眺めてみた。

キヤノンAV-1は,絞り優先AE専用の一眼レフカメラである。発売されたのは,1979年である。この当時のキヤノンの一眼レフカメラと言えば,なによりもキヤノンAE-1が有名である。そのため,キヤノンの一眼レフカメラといえばシャッター速度優先AEだ,というイメージをもつ人も少なくないと思うが,ちゃんと絞り優先AEの一眼レフカメラも発売しているのである。ただし,キヤノンAE-1がラインアップ的には中級機であったのに対し,キヤノンAV-1はラインアップの最下位に位置する。

カメラで写真を撮るときに調整しなければならない要素として,絞り,シャッター速度(露光時間),ピントの3つをあげることができる。これらを適切に調整して撮ると,綺麗な写真になる。だからこれらが自動的に調整されれば,カメラをはじめて使う人でも,綺麗な写真が撮れることになる。一眼レフカメラでピントの自動調整が一般的になるのは,1985年に発売されたミノルタα-7000以降のことになるが,絞りとシャッター速度すなわち露出の調整については,比較的早い時期に一般的になった。
 自動的に露出を調整することは,AEとよばれる(Automatic Exposure)。AEには,「撮影者が絞りを決めると,それにあわせたシャッター速度が自動的に決まる」もの,「撮影者がシャッター速度を決めると,それにあわせた絞りが自動的に決まる」もの,「絞りとシャッター速度の組みあわせが自動的に決まる」ものという種類がある。AEが実用化されても,プロやマニアには,マニュアル露出(絞りもシャッター速度も撮影者自身が決める)を好んだり,そのほうが都合よい場合があったりするので,中級機や高級機では,AEだけでなくマニュアル露出も使えるようになっていた。
 一方で,AE専用の一眼レフカメラがある。カメラをはじめて使う人にとっては,操作するべきところが少ないほうがわかりやすいだろう,という発想でつくられたと思われる。また,操作するべきところが少なければ部品も少なくなるわけで,価格も抑えられるかもしれない。カメラをはじめて買う人にとっては,操作が簡単で価格が安いことは,とてもありがたく感じられるだろう。日本カメラショーの「カメラ総合カタログ」を参照すると,Vol.61(1978年)に掲載されているYashica FR-IIあたりから,その種のカメラが見られるようになったようだ。翌年のVol.64(1979年)では,PENTAX MEが掲載されるようになる。

日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に記載されたメーカー希望小売価格は,ボディのみで¥50,000である。
 先にも書いたように,この種のAE専用一眼レフカメラは,各メーカーにおいて一眼レフカメラシリーズのラインアップの最下位に位置づけられる。したがって,価格も比較的安価であり,中古市場に流れるととくに入手しやすいものになる。気がつくと,次のような機種が手元にやってきていた。

Canon AV-1である。シルバーボディとブラックボディが用意されており,シルバーボディのメーカー希望小売価格は,ボディのみで¥40,000である。ブラックボディは少し高価で,¥42,000円になっていた。

Nikon EMである。フラッグシップモデルNikon F3,絞り優先AEとマニュアル露出のNikon FE,機械制御でマニュアル露出専用のNikon FMのさらに下位に位置づけられたモデルである。高級品というイメージの強かった当時のニコンの一眼レフカメラとして,ボディのみのメーカー希望小売価格が¥40,000というのは,かなりがんばったものだと思う。

フジのカメラは,コンパクトカメラや業務用カメラではよく知られる存在だが,マニアが好みそうな35mm判一眼レフカメラにおいては,ややマイナーな存在である。それでも,M42マウント時代は一定の知名度があったと思うが,このシリーズはほんとうに知られていないと思う。なにより,中古カメラ店の店頭で見かけることが,あまりに少ない。しかし,最上位モデルFUJICA AX-5は,初期のマルチモードAE一眼レフカメラとして,もっと目立つ存在であってもよいはずだが,Canon A-1やMINOLTA XDなどにくらべて,まったく知られない存在になっていると思う。
 そんなマイナーなAXシリーズのなかでも,最下位に位置づけられるのが,このFUJICA AX-1である。ボディのみのメーカー希望小売価格は,¥36,800である。

マミヤも中判カメラでは一定の高い評価をもち,とてもよく知られるメーカーであるが,35mm判一眼レフカメラの分野では知名度が低いと感じる。Mamiya ZEシリーズは,多数の電気接点で情報をやりとりするというあたらしいタイプのレンズマウントを提案し,Mamiya ZE-Xという初期のマルチモードAE一眼レフカメラも送り出している。それでも,FUJICA AXシリーズと並んで,中古カメラ店の店頭で姿を見かけないシリーズである。いや,FUJICA AXシリーズよりは,まだマシかもしれない。Mamiya ZEシリーズのほうが,たしょうはよく見かけると感じている。
 そんなマイナーなZEシリーズにおいて,最下位に位置づけられるのが絞り優先AE専用のMamiya ZEである。ボディのみのメーカー希望小売価格は,¥38,500である。

テレビCMを通じてもっとも知名度を上げたカメラは,たぶん,MINOLTA X-7だと思う。この機種以後,ミノルタと言えば「7」というイメージが定着したのではないだろうか。この後に発売された上位モデルはMINOLTA X-700という名称になったし,オートフォーカスを実用化させて一眼レフカメラ市場に大きな影響を与えたカメラは,MINOLTA α-7000だった。
 日本カメラショー「カメラ総合カタログ」を参照すると,MINOLTA X-7にはシルバーボディとブラックボディがあることがわかる。シルバーボディとブラックボディがラインアップされているというのはよくあるパターンだが,多くの場合それらは単に色が違うだけである。しかし,MINOLTA X-7は色が違うだけではないようで,ブラックボディはファインダーに評価の高いアキュートマットを採用したと謳っており,また,ボディ前面に小さなグリップが設けられている。ブラックボディのメーカー希望小売価格は,¥44,500である。
 MINOLTA X-7は,すべて小文字で表示する古いロゴ(minolta)の時代に発売されたカメラであるが,私の手元にあるMINOLTA X-7は,ロゴがすべて大文字のあたらしいものになっている。

これらの機種は,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」では,1980年版あたりで出そろったようだ。ボディの価格は,どれも4万円前後でがんばっている。

もう1台,絞り優先AE専用一眼レフカメラを入手している。PENTAX MEの後継機にあたる,PENTAX MGである。これは,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」ではVol.73(1982年)あたりで登場している。ボディのメーカー希望小売価格は,PENTAX MEよりずっと安くなって,¥40,000である。

この時代の絞り優先AE専用は,もちろんこれだけではない。まだまだ,たくさんある。それらをすべて集めてみるのも,きっとおもしろいだろう。もとが安価な機種なので,中古カメラ市場ではあまり高値がついていない傾向がある。しかし,高値がつかないから中古カメラ店に売られることもなく,捨てられてしまう懸念もある。そのせいか,実際に売られている姿を見かけることは,すっかり少なくなったと感じる。安価なカメラこそ,意識して救出しなければならない存在であることを再認識した夜だった。


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