撮影日記


2015年04月26日(日) 天気:晴

久しぶりにアーガスC3を使う

オートドライの修理が完了したので,オートドライの中身を入れ直すことになった。オートドライに入れているカメラやレンズの整理ができたら,こんどはオートドライに入っていないカメラやレンズの整理をしたくなる。オートドライに入らないものについては,衣装ケースに除湿剤とともに突っ込んでいるのだが,いちどそこへ片づけてしまうと,「どうしてもあのカメラ,レンズを使いたい」という強い気持ちがなければ使うことがなくなってしまうのが問題だ。逆にいちどそこから出してしまうと,しばらくそれを使い続けようという気になり,そのカメラやレンズはオートドライへ移動することもある。オートドライのスペースには限りがあるので,そのときは,オートドライのほうからなにかが衣装ケースの方へ移動して,スペースを空けなければならない。
 今日,衣装ケースのほうを整理していたら,こんなカメラが「久しぶりに使ってくれよ」と訴えているのに気がついた。

「アーガスC3」である。かつてアメリカ合衆国で,とくに1940年代から1950年代にかけて,もっともポピュラーなカメラの1つだったと言われている。私はこのArgus C3をアメリカのオンラインショップ(*1)で購入したのだが,つねに在庫も豊富でじつに安価な価格がつけられていたものである。私が選んだものにはたしか,20ドルという価格がつけられていた(2003年4月12日の日記を参照)。

Argus C3は,とてもいいカメラなのか,とんでもなくダメなカメラなのか,よくわからない。たぶん,人によって評価が大きくわかれることだろう。
 Argus C3を低く評価する人は,たぶん「使いにくい」と思っているに違いない。たとえば,フィルムの巻き上げとシャッターのチャージは,連動していない。だから慣れないと,二重写しをしてしまったり,露光せずにフィルムを送ってしまったりするだろう。フィルムを巻き上げるときには,ロック解除レバーを引いたまま少し巻き上げて,それからフィルムが止まるまで巻き上げることになる。これも慣れないと,不安に感じてしまうところではないだろうか。
 シャッターのチャージは,カメラ前面のレバーを動かすだけである。しかしこのレバーが,ただ締めつけられているだけなので,使っているうちに少しずつ動いてしまう。そしてその位置によっては,レリーズ時にカメラを構えた指に当たり,うまく露光されないことがある。精密なドイツ製のカメラや,細かいところまでつくりこまれた最近の日本製のカメラを基準に考えると,なんとおおらかというか,おおまかというか,おおざっぱなカメラだと嫌気を感じるのではないだろうか。
 そして,Argus C3は,自分を着飾ろうとしないのか,とにかく黒くて四角い。また,そんなに大きなカメラでもないのに,妙に重い。重いうえに,ストラップを取りつける金具もない。このように見てみると,実にとんでもないカメラである。

だが,悪いばかりではない。とにかく四角いカメラは,カバン等へのおさまりがいいのだ。「人間工学してます!」「デザインしてます!」と強烈にアピールしていたり,握りやすいように立派なグリップがついていたりするようなカメラは,実際に持ちやすく操作しやすいように考えられているわけだが,使わないときのカバン等へのおさまりがよくないのである。また,ほどほどに重いカメラは,カメラブレを起こしにくい。
 Argus C3には,距離計も内蔵されている。二重像合致式ではなく上下像合致式(一眼レフカメラのスプリットイメージのようなもの)である点や,構図用のファインダーと距離計用の窓がそれぞれ独立した二眼式になっている点などに違和感があるかもしれないが,距離計の像はけっこう大きくてピントあわせをおこないやすい。
 巻き上げとシャッターチャージが連動していないことなど,マミヤプレスとなんらかわるところがない。そのほかクラシックカメラを使い慣れている人には,なんの問題もないだろう。赤窓で次のコマを確認しなくても自動的に巻き止めがかかるのだから,中判スプリングカメラにくらべればはるかに使いやすいはずだ。

そして,知られているような知られていないようなことだが,Argus C3はレンズ交換が可能なのである。
 Argus C3用の交換レンズは,あまり見かけることがない。だからといって,レアものとして不当に高価な値付けがされているようすもない。そもそも,欲しがる人が少ないのだろう。だから私もいつのまにか安価に,50mm標準レンズに加えて,35mm広角レンズや100mm望遠レンズ,35mmレンズと100mmレンズに対応したファインダーも入手することができた。これだけあればいろいろな撮影を楽しめるから,私はもっとArgus C3を使っていなければならなかったはずだ。
 だが,結局,あまり使っていない。
 レンズ交換ができるとはいうものの,その交換方法があまりに煩雑なためである。
 Argus C3を正面から見れば,シャッターレリーズボタンの手前に,距離目盛が刻まれたギアがある。これが,ギアを1枚はさんでレンズのギアとつながっている。ピント調整の操作はContaxのようだが,Contaxのような精密さは感じられない。ギアの連動がむき出しになっている点からはむしろ,RICOHFLEXのような安っぽい印象を受けることだろう。
 ともあれレンズ交換のためには,間にはいるギアをはずす必要があるのだ。

レンズ交換ができるのに,レンズ交換が煩雑だから使う気にならない。というのは,なにか間違っている気がする。
 このようなビューファインダーカメラは,広角レンズにつけかえていろいろ気軽に撮ってみるのが似合っているのではないだろうか。そういえば去年は,そんな発想でキエフ5を楽しんだものだ(2014年7月31日の日記を参照)。

去年のKIEV 5とJupiter-12ではカラーポジフィルムを使ったが,今日のArgus C3とENNA SANDMARではモノクロフィルムを使う。

Argus C3, ENNA SANDMAR 35mm F4.5, ACROS

レンガ壁が十分に解像している。

Argus C3, ENNA SANDMAR 35mm F4.5, ACROS

看板の文字もはっきりと読め,コントラストも十分であることがわかる。

Argus C3, ENNA SANDMAR 35mm F4.5, ACROS

1枚目と同様にかなり明暗差のある状態だが,暗いところも明るいところもきちんと写っている。

Argus C3, ENNA SANDMAR 35mm F4.5, ACROS

Argus C3本体は安っぽく感じても,用意されたレンズの性能はかなりよいことがわかるだろう。
 そうだ,Argus C3は,これからももっと使ってあげなければならないのだ。
 そしてこの種のビューファインダーカメラには,やっぱり広角レンズが似合うのだ。

*1 Pacific Rim Camera
http://www.pacificrimcamera.com/


← 前のページ もくじ 次のページ →