撮影日記


2015年04月19日(日) 天気:曇のち雨

手抜きの下手なフジカAX-1で
X-フジノンレンズを楽しもう

私は,「日本カメラショーのカメラ総合カタログに載っている,全メーカーの全シリーズの一眼レフカメラを入手したい」と考えている。「日本カメラショーのカメラ総合カタログに載っている」という制約があるので,ZunowやCIMKOのようなきわめてレアな製品に手を出す必要はなく,Contarexのような外国メーカーのきわめて高価な製品に手を出す必要もない。また,「全製品」ではなく「全シリーズ」なので,高価な最高級機種に手を出す必要もないから,財布の紐をちょっと緩めるだけですぐに達成できそうなのだが,できるだけ安価に入手しようと考えているので,簡単には達成できそうにない。
 「全シリーズ」というのも少々あいまいな基準であって,自分のなかでも厳密には規定できていない。たとえば,ミノルタであれば「SR」と「X」と「α」という区分でよいのだろうか?「SR」と「X」はともかく,「α」は各世代とされているものがすべて必要になるのだろうか?難しいところである。とりあえずは「緩め」で考えておこうと思うが,コーワ,ペトリ,ミランダ,チノン,リコー,コニカ,ライカ,シグマなど,一眼レフカメラを1台も入手していないメーカーはたくさんある。まだまだ,先は長いのだ。

入手していない「シリーズ」のうち,私のなかで優先順位の高いものに,フジカ「AXシリーズ」があった。優先順位が高かった理由は,ずっと以前にフジカAX用のタムロン・アダプトール2マウントを入手していたからである(2007年10月26日の日記を参照)。フジカAXシリーズの動作するカメラが市場に存在するうちに入手して,このマウントを無駄にしたくなかったのだ。
 ところが,フジカAXシリーズは,なかなか中古カメラ店でも見かけない。M42マウントのフジカSTシリーズはたまに見かけるが,フジカAXシリーズを見かけることはない。フジカAXシリーズにくらべれば,マミヤZEシリーズのほうがケタ違いにポピュラーな存在に思えるくらいである。意識的にさがしていたのだが,ようやくフジカ「AX-1」を先月になって入手することができた。

フジカAXシリーズのうち,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に掲載されていたものは,3機種ある。最上位モデル「AX-5」はマルチモードAE機だが,このたび入手した「AX-1」は絞り優先AE専用のシンプルな機種である。また,あわせて入手したレンズは,X-FUJINON 50mm F1.9 FMという廉価版の標準レンズだ。FUJINONといえば,EBCと称するコーティングがセールスポイントの1つにあるが,このレンズはEBCではない。EBCのつかないFUJINONは,名称には萌えないレンズである。

フジカAXのレンズマウントは,専用のバヨネットマウントになっている。レンズの名称は,「X-FUJINON」だ。いま,「Xフジノン」で検索をすると,ディジタルカメラ用のレンズばかりがヒットすることだろう。そのディジタルカメラのレンズマウントも「Xマウント」と称しているようだが,フジカAXのマウントとはもちろん異なっている。厳密にはディジタルカメラのほうを「フジフイルムXマウント」と呼び,フジカAXのほうは「フジカXマウント」と呼ぶべきなのだろう。あるいは「フジカAXマウント」か。
 どのメーカー,どのシリーズでも,50mmの標準レンズは明るさの違うものが何種類かラインアップされていることが多い。フジカAX用に用意されていた50mmのXフジノンレンズは,F1.6,F1.9,F2.2という3種類のものがあった。「50mm F1.9」というスペックだけぱっと見れば最廉価版のように思えるかもしれないが,じつはそうでもなかったりする。
 ともあれ,まずは撮ってみよう。

FUJICA AX-1, X-FUJINON 50mm F1.9 FM, ACROS

この画像は縮小しているので判別できないが,ネガでは電車の車体に書かれた番号もなんとか判別できる。解像度としては,じゅうぶんなものがあるだろう。
 つぎに,タムロン・アダプトール2マウントを活用するために,タムロン35-135mm F3.5-4.5 (40A)につけかえて撮ってみよう。

FUJICA AX-1, Tamron 35-135mm F3.5-4.5 (40A), ACROS

うむ,これは「つまらない」。
 いや,タムロンのレンズが悪いわけじゃなく,せっかくフジカAX-1という珍しい機種を使っているのに,タムロンレンズではおもしろくないということだ。また,小型軽量なフジカAX-1には,小型軽量な標準レンズが似合うのだろう。このあとは,X-FUJINON 50mm F1.9 FMだけで撮ることにした。

FUJICA AX-1, X-FUJINON 50mm F1.9 FM, ACROS

これは,開放付近の絞りで撮ったものである。標準レンズにしては,周辺減光があるように思われるが,この場合は中央の重機がうまく浮かび上がってくれたようで,好都合である。

FUJICA AX-1, X-FUJINON 50mm F1.9 FM, ACROS

サクラ並木におかれた自転車が,背景からうまく浮かびあがってくれた。見た目のシャープさは,じゅうぶんであろう。

FUJICA AX-1, X-FUJINON 50mm F1.9 FM, ACROS

そもそも背景がうるさいせいもあるかもしれないが,ボケに美しさは感じられない。

FUJICA AX-1, X-FUJINON 50mm F1.9 FM, ACROS

少しだけ絞って,鮮鋭さを求めるほうが,このレンズには似合っていそうだ。

FUJICA AX-1, X-FUJINON 50mm F1.9 FM, ACROS

さて,フジカAX-1を使っていて,気になることが1つあった。
 ときどき,意図したよりも露光時間が長くなることがあったのだ。
 たとえば開放付近の絞りで撮っていて,同じ構図で2段ほど絞ったものも撮ってみようと思ったとき,意図した以上に長い露光になることがあるのだ。
 その原因として1つ考えたいのは,プレビューボタンの位置である。
 カメラを構えるときのクセにも左右されるものと思うが,私の場合,とくに意識せずにカメラを構えると,下の画像のように中指がプレビューボタンにあたる。

FUJICA AX-1, X-FUJINON 50mm F1.9 FM, ACROS

シャッターレリーズボタンに力を入れるとき,無意識に中指にも力が入って,絞りこみをおこなっている可能性があるのかもしれない。実際に,シャッターレリーズ動作時に,プレビューボタンの動きを指で感じることがあるのだから,少しはプレビューボタンを押しこんでいるのは間違いないと思う。こればかりは,撮影時に気をつけるしかないだろう。

もう1つ考えられることとして,ファインダー内の露出計表示にだまされている可能性がある。
 フジカAX-1の露出計は,下の画像のようにLEDの点灯であらわされる。この画像の場合は,「1/15秒または1/8秒」であることを示している。このように,2段階ずつの刻みで,1/1000秒から1/2秒までが表示される。
 たとえば露出計が「1/60秒または1/30秒」を表示しているときに,これを「1/60秒」だと思いこめば,そこから2段階絞っても1/15秒だ。1/15秒なら,そのまま手持ちでがんばろう,と判断するだろう。ところが実際には,その表示のときは1/30秒だったのかもしれない。そのまま2段階絞りこめば,1/8秒となる。それは明らかに,意図していたより長い露光時間となり,とくに手持ちでは困ったことになる。

そのように,露出計の表示にだまされていた可能性も捨てきれない。
 この点についてはフジカAX-1に対して,「手抜きが下手だ」という評価を与えたい。
 フジカAX-1は,絞り優先AE専用の廉価版である。このクラスのカメラは,初心者向けという位置づけでラインアップされている。初心者が対象であれば,細かい厳密な情報を与えるよりも,表示をシンプルにしたほうがよい,という判断はあり得るだろう。また,LEDを1つでも減らすことが,コスト削減につながるかもしれない。だが,それを現実化する具体的な方法として,2段階ずつ表示するというのは不適切だったように思う。
 露出計表示で「手抜き」するなら,マミヤZEのように「1/1000秒から1/30秒までは1段階刻み,それより長い露光時間はLT表示で省略」というほうが合理的だと思うぞ。


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