撮影日記


2015年03月01日(日) 天気:雨

小は大を兼ねる?
CR2をCR123Aとして使う

ニコンの一眼レフカメラは,1959年に発売された最初のモデル「ニコンF」以来,現在のディジタル一眼レフカメラまで,レンズマウント(レンズとボディをつなぐ部分)の基本的な形状を変更していない。したがって,理屈の上では,初期のボディに最新のレンズを取りつけたり,最新のボディに初期のレンズを取りつけたりできるはずなのだが,実際には使えない組みあわせが存在する。使えない組みあわせが存在するのは,ボディやレンズの機能の発展に伴う,情報伝達のしくみの変更によるものが多い(2015年2月17日の日記を参照)。

キヤノンやミノルタでは,オートフォーカス一眼レフカメラを発売したときに,それ以前のボディやレンズとの互換性を考慮しなかった。
 すでにキヤノンやミノルタのマニュアルフォーカス一眼レフカメラでシステムをつくっていた人にとっては,オートフォーカス一眼レフカメラを使うためにはボディや交換レンズをすべて買い直さなければならなくなる。その金額的な負担は小さくないし,使い慣れたボディやレンズが使えなくなるのは,撮影の効率が悪くなる懸念もある。マニュアルフォーカス一眼レフカメラのシステムの生産が終了したら,あたらしい交換レンズが開発されなくなり,既存のアクセサリや交換レンズなどの製造・販売も終了し,さらには補修部品の払底などからメンテナンスもされなくなる懸念が生じる。これらの点から,以前からのユーザに対するサポートを切り捨てるかのような,キヤノンやミノルタの方針を批判する声も,よく耳にしたものだ。
 その一方で,あたらしいオートフォーカス一眼レフカメラの性能をフルに発揮するには,結局は,すべてあたらしいボディやレンズに買い直すことになる。以前からの規格に制約されないほうが,あたらしいシステムをより高性能なものとして製品化することができるはずだという面から,互換性にこだわらないとする決断が正しいものであったとする声もある。
 キヤノンやミノルタに対してニコンでは,互換性を重視する態度を示した。そのため,マニュアルフォーカス一眼レフカメラのシステムから,オートフォーカス一眼レフのシステムへ,一気に乗り換えるだけでなく,ゆっくりと移行していくことも可能であった。たとえばとりあえずオートフォーカス一眼レフのボディ1台と標準ズームレンズ1本だけ買って,標準ズームレンズ以外のレンズは,従来のマニュアルフォーカス用のレンズを使えばよいのである。少しずつシステムを増やしていこうとする人や,以前からの使い慣れたものも引き続き使いたいという人にとっては,じつに好都合である。その結果,「○○はできるが,××はできない。」という違いが,機種ごとにじつに細かくわかれていくのである。

「ニコンF-601」は,1990年に発売された。15年も前の古いカメラであるが,もっと見直されてもよい機種だと思う。
 Nikon F-601は,中級モデルとして位置づけられていたオートフォーカス一眼レフカメラである。より下位モデルのNikon F-401には,従来のマニュアルフォーカス用レンズを装着することはできるが,露出計がはたらなかいという制約がある。一方,より上位モデルのNikon F-801にくらべると,シャッター速度の最高速が抑えられている(F-801では1/8000秒,F-601では1/2000秒)ことや,プレビューボタン(レンズを絞りこんだ状態をファインダーで確認できる機構)がないことなど簡略化された面がある。だが,マニュアルフォーカス用レンズ(Ai方式)でも露出計が動作し,マニュアル露出と絞り優先AEが使えることは共通している。それに加えてNikon F-601には,Nikon F-801にはないフラッシュが内蔵されている。
 ニコンの一眼レフカメラのなかで,マニュアルフォーカス用レンズを使うときに露出計が動作し,さらにフラッシュを内蔵しているものは,Nikon F-601とNikon F70の2機種だけである。このうちNikon F70は,モード変更などのユーザインタフェースがほかの機種と異なるため,いろいろな機種を併用するときには使いにくいとされている。多くの人にとっては,Nikon F-601のほうが使いやすいはずだ。
 マニュアルフォーカス用レンズが使えて,フラッシュも内蔵されている貴重な存在であるNikon F-601だが,残念な点もある。気になるのはなんといっても,その動作音だ。とにかくけたたましく,甲高い。「動作が歯切れよい」「しゃきしゃき動作していることがわかりやすい」などと,贔屓目な見方をするのも苦しい。

ということで,今日のお話は,ここらあたりからが本題である。

Nikon F-601の残念な点としては,使用する電池もある。
 同時代の上位モデルNion F-801も,下位モデルNikon F-401も,電源は単3乾電池4本である。このときのフラッグシップモデルNikon F4も,単3乾電池を電源として使用できる(バッテリーパックの形状により,4本または6本の使用)。さらに,前モデルのNikon F-501も単3乾電池4本で動作する。その当時の,ニコンにおけるワインダーを内蔵したオートフォーカス一眼レフカメラがことごとく単3乾電池を使用するようになっていたのに対して,Nikon F-601だけはリチウム電池CR-P2を使うようになっていた。
 電源としてリチウム電池を使うようにすれば,単3乾電池を使うようにしたカメラにくらべて,かなりの小型化・軽量化が実現できる。中級機であるNikon F-601が電源としてリチウム電池を採用したのも,上位モデルF-801にくらべての小型化・軽量化を目指したものであろう。だがユーザとしては,単3乾電池のほうが安価だし,さらにはNi-MHなどの充電式電池も利用しやすいのでありがたい。CR-P2をふつうに買うと1000円前後するが,1000円も出せば,4本入りの単3乾電池を10パックくらい購入可能だ。単3乾電池なら売っていても,リチウム電池は売っていないというお店もある。そして家の中には,単3乾電池を使う機器は,たくさんあるので,つねに買い置きしている人も少なくないはずだ。カメラの大きさ,重ささえいとわなければ,電源としては単3乾電池を使うようになっているのがもっとも好都合なのである。

比較的高価で,売っているお店が少ないとしても,その電池が1種類だけでいろいろなカメラやそのほかの機器でも使うというならば,つねに買い置きしておくなどの対応が考えられる。ところが,リチウム電池には,カメラの主電源としてよく使われるものだけでも4種類ある。3VタイプのCR123Aと,やや小型のCR2,6VタイプのCR-P2とやや小型の2CR5という具合だ。Nikon F-601はCR-P2,Nikon F50は2CR5,Nikon F60,F70,F80はCR123A,Nikon U,Us,U2はCR2を使う。ニコンでは,F-601以降,エントリーモデルや中級モデルのカメラが電源としてリチウム電池を使うようになったが,F-601はほかと電池が共通していないのだから面倒このうえなし。

ところで,「単3乾電池を単1乾電池として使う」ためのアダプタや,「単4乾電池を単3乾電池として使う」ためのアダプタが,いろいろと売られている。以前から売られていたのかもしれないが,2011年3月11日の「東北地方太平洋沖地震」による「東日本大震災」において,「非常用の懐中電灯などで使うための単1乾電池」が不足していたころにとくに注目を浴びるようになったのではないかと感じている。アルカリ乾電池やマンガン乾電池は,単1型だろうと単3型だろうと,大きさが違うだけでどれも1.5Vの出力がある。よほど大きな電流を流す必要がある場合を除いて,単1乾電池のかわりに単3乾電池を使っても,使用可能時間が短くなる以外の問題はない。
 では,リチウム電池でそれができないのだろうか。とくにCR123AとCR2は,大きさがすこし違うだけである(*1)。直径15.6mm,高さ27mmのCR2を,すこし大きな直径17mm,高さ34.5mmのCR123Aとして使うためのアダプタくらい,市販されていてもいいはずだ。CR2をCR123Aとして使えるようになれば,少なくともこれらを使うカメラの電池は共用できるようになる。
 だが,そういう都合のよい商品は見つけられない。しかたがないので,さくさくっと厚紙で工作してみた。

これにCR2をはめて,CR123Aのかわりにカメラ(Nikon F80)に装填する。

なんの問題もなく使用できる。

今後はCR123Aを買わずに,CR2だけを買うようにすればよさそうだ。
 いや,こういうときこそ,CR2型の充電式電池が活用できるのではないだろうか。
 CR2型の充電式電池は,なぜか日本の有名なメーカーからは発売されていない。ヨドバシのような量販店でも,なぜか扱われているのを見かけない。以前から気になっていたのだが,製品の品質などに対して大いに不安を感じていたものである。だが今こそは,この製品を試してみるときだ。やや不安になりながらもCR2型の充電式電池(充電器付き)をamazon.comで注文してみたところ,注文の翌日には手元に届いた。Made in Chinaの製品であるが,パッケージを開けてみると,思ったよりもちゃんとした製品に感じられた。さっそく充電し,自作のアダプタを使ってカメラに装填したが,問題なく使えている。

これで,CR2およびCR123Aを使うカメラの電池の問題は,一気に解決した。
 そこで,CR2互換の充電式電池を追加で購入しようと思ったのだが,よく見るとこの充電器は,CR123A型の充電式電池にも対応しているようだ。もしかすると,CR2をCR123Aとして使うためのアダプタを併用するよりも,すなおにCR2型の充電式電池とCR123A型の充電式電池を買っておく方が,運用しやすいかもしれない。ともあれ形さえあわせれば,CR2をCR123Aとして使えることは確認できたのだ。つぎは,Nikon F-601などを活用するために,CR-P2として使うためのアダプタをつくってみよう。さらには,2CR5にも対応させたい。

ところで,このたび購入したものに付属していた充電器だが,電源プラグが交換可能になっており,そこを交換することで電圧やプラグの形状が異なる国でも使用できるように配慮されている。さらに,充電式電池をはめこむ部分が交換可能になっており,CR-P2型や2CR5型の充電式電池にも対応できるようになっている。よくできた製品だと思うから,1つ買っておけばなにかと便利ではないだろうか。

*1 CR系円筒形リチウム電池|電子デバイス・産業用機器 (パナソニック株式会社)
http://industrial.panasonic.com/jp/products/batteries/primary-batteries/lithium-batteries/cylindrical-type-lithium-batteries-cr-series?reset=1


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