撮影日記


2013年09月16日(月) 天気:台風一過

江波山気象館からの見晴らしはいいぞ

私はこの夏まで,通天閣の展望台へ上ったことがなかった。通天閣の近くには,もう長年にわたって何度も通っているのだが,展望台へ上がったことはなかったのだ。まあ,そういうものだろう。地元の者にとっては,「まあ,いつでも行ける」「わざわざ行くこともあるまい」という感覚になるのだ。で,だいたいは,よその土地の者といっしょに行くことになるわけだが。
 通天閣からの見晴らしは,たしかによい。訪れた日は,晴れてはいたもののややかすんでおり,さほど遠望が利くわけでもなかったが,たとえばいつも通天閣を横に見て通る高速道路を上から見下ろすのも,たまにはいいものだ。そうだたしかに,あんな具合にカーブしているんだよな。とかなんとか。
 通天閣へ上がることについて,あまり積極的になれなかった理由としては,その高さもあるだろう。いや,絶対的な高さ,低さの問題ではない。たしかに通天閣の高さは100m,展望台の高さは90mに満たない(*1)。東京タワーや東京スカイツリーにくらべれば,あまりにささやかな高さである。だがそれでも,この展望台が平野のど真ん中にあるならば,とても魅力的なものになっただろう。残念なのは,通天閣のすぐ東側が標高15mから20mくらいの丘陵地帯になっていることだ。そのうち,茶臼山(古墳)とよばれるところの標高は26mもある。ここから見ると,通天閣があまり高く感じられないのである。
 ただそれは,食わず嫌いのようなものだった。通天閣の展望台の高さは,80mをこえている。標高26mの茶臼山も,足元に見下ろすことになるのだ。

全国各地に,いろいろなタワーがある。おもに観光用か,電波発射用のものである。通天閣は観光用タワーだが,東京タワーや東京スカイツリーは,テレビ放送やFM放送の電波を発射するためのアンテナをそなえた電波塔だ。大阪のテレビ放送やFM放送の電波は,東にある生駒山の上にアンテナをたてて発射している。大阪には,高い電波塔をつくる必要がない,ということのようだ。
 これは,広島にもあてはまる。広島市は,太田川の河口に開けた三角州上に広がっているわけで,その周囲は山である。また,かつて島だったところが,市内に「山」として残っている。広島市を対象にしたテレビ放送やFM放送の電波を発射するアンテナは,広島市内の比治山や黄金山,さらに東にある絵下山などの上にたてられている。また,広島の周囲は山がちな地形であり,電波の中継局があちらこちらの山に設置されている。つまり,広島には電波塔を立てる必要がない,というか電波塔をたてたのでは効率が悪いといえる。
 だから広島にタワーがたてられるとしたら,それは観光用の展望塔ということになるだろう。そういえばこの夏に,「広島ピースタワー」が2015年に開業予定であるというニュースがあった(*2)。「タワー」といっても塔があらたにたてられるわけではなく,原爆ドームに隣接するオフィスビルを改修し,高さ約90mの屋上に展望テラスを設けるというもののようだ。原爆ドームを高いところから見学できる,という。広島市内でかつて島だった「山」は,いまでは公園になっている。見晴らしのよいところから市内を一望できるとはいえ,原爆ドームはそれらからよく見えない位置になる。だから「広島ピースタワー」も,それなりに興味深い存在になるだろう。

Nikon D70, AF-S DX Zoom-NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6G VR

台風が過ぎ去り澄んだ青空が広がっていたので,広島市内の「山」の1つ,江波山に行ってみた。江波山にはかつて広島地方気象台があり,その建物は「広島市江波山気象館」という博物館として利用されている(*3)。気象のことに特化した学習施設というのは,ほかにあまり例がないようだ。江波山の上にあるこの建物の屋上には三角点が設置されており,標高は40m足らずである。そこからは「広島バスセンター」の建物が遠望できる。遠いような,意外と近いような,そんな距離感だ。なお原爆ドームはビルの谷間に埋もれてしまって,直接ここから眺めることはできない。だが,「広島バスセンター」のちょっと左側にあるはずだ。その上空に投下された原子爆弾の影響をさえぎるものはなかった,ということである。実際にこの建物は,いわゆる被爆建物の1つとしても,重要な存在になっているのだ。
 広島市内中心部からはちょっと不便に感じる場所にあるが,広島を訪れることがあったなら,ぜひここにも足を伸ばしてみるといいだろう。

Nikon D70, AF-S DX Zoom-NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6G VR
上の画像をトリミングしたもの。

*1 通天閣オフィシャルサイト 資料館 (通天閣観光株式会社)
http://www.tsutenkaku.co.jp/shiryo/

*2 ビルに平和学習の場や物産館光 (中国新聞 2013年08月09日)
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201308090057.html

*3 広島市江波山気象館
http://www.ebayama.jp/


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