撮影日記


2013年01月14日(月) 天気:曇

「期限切れ」フィルムと現像液の活用?
クロスプロセス現像をやってみた

たとえば,ケーキを買ってきたとする。そこには,こう書いてあるだろう。
 「生物ですから,お早めにお召し上がりください。」
 ここでいう「生物」は,「せいぶつ」と読むのではない。「いきもの」でもない。「なまもの」と読む。だから,読み間違えることがないように,「生もの」という表記になっていることが多いだろう。さて「なまもの」とは本来,魚などに対して言うもののようで,煮たり焼いたり干したりしていない状態のものを指すようだ。ともあれ,そのような加工をしていない以上,傷みやすいとされている。つまり,「お早めにお召し上がりください」となる。魚にかぎらず,「お早めにお召し上がりください」なものは,「なまもの」と呼ばれている,ということである。
 写真のフィルムも,「なまもの」といえる。なまの魚のように数日で腐ってしまうというほどではないが,「使用期限」というものが設定されている。フィルムに塗られている乳剤というものは,温度や湿度あるいは年月によって少しずつ変質していく。そこで賞味期限ならぬ,使用期限というものが設定されることになる。使用期限をこえたフィルムは,感度や発色において,本来の性能が発揮できないとされている。保管条件がよければ,使用期限を多少こえても実用的な状態が保たれることもあるし,逆に保管条件が悪ければ,使用期限内であっても十分な性能が維持されないこともある。ともあれ,使用期限は1つの大きな目安となる。

私の手もとに,ずっと以前に使用期限を迎えたフジのPROVIA 100が1本あった。使用期限を過ぎているから本来の性能が出ない可能性があるし,そもそもふだん使わない銘柄のフィルムでもある。冷蔵庫の隅にころがったまま,使用期限を10年以上過ぎてしまったのであった。いかに冷蔵庫に入れてあったとはいえ,色バランス等が大きく崩れた画像しか得られないという懸念がある。そこで思いついたことは,いわゆるクロスプロセス現像をすることである。クロスプロセス現像とは,カラーポジフィルムに対してカラーネガフィルムの現像処理をおこなうこと(あるいはその逆)をいう。こういう「遊び」に使うのであるから,処理液は使用済みのナニワカラーキットSでじゅうぶんだ。昨年11月に溶解した後,135フィルムや120フィルムなどあわせて10数本の処理をした,まさに使用済みの処理液である。
 とにもかくにも,現像した結果はこうだ。

カラーポジフィルムとしてスキャンした結果を見るかぎり,ほんとうに色がついているのかどうか,わからない。ただ一部に,はっきりと緑色になっているところがわかる。ネガポジ反転すれば,そこは赤くなるのだろうが,そのほかの部分はどうなるだろうか。階調を反転させ,適当に色を調整してみると,それらしい画像が得られる。

BRONICA ETRS, ZENZANON E-II 75mm F2.8, RDP III (Naniwa Color Kit S)

無理に色調整をしたせいか,コントラストがきつすぎるようだ。こんどは,カラーネガフィルムとしてスキャンしてみよう。

BRONICA ETRS, ZENZANON E-II 75mm F2.8, RDP III (Naniwa Color Kit S)

こんどは,赤い部分以外は,彩度が妙に低いものになっている。これは,フィルムの熟成(笑)が進み過ぎていたせいか,それともクロスプロセス現像のなせる技か?今回は,「こんなこともできますよ」という程度のことであり,私自身にとっても今後の参考になりそうもない。何度かやってみれば,それなりのおもしろさも見えてくるとは思うが,ナニワカラーキットなど,家庭用のカラーフィルム現像液が入手しにくくなったからには,やりにくくなった遊び方である。


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