撮影日記


2012年10月26日(金) 天気:晴

さまざまな技法を再認識
東京都写真美術館「機械の眼 カメラとレンズ」

私は,美術や芸術のことはよくわかっていない。それでもたまには,美術館というところへ行くこともある。ただ,古典的な名作とされるものの展示よりも,どちらかというと現代美術とされるものの展示のほうが好みである。現代美術とされる作品を見ても,作品の意味するもの,作者の意図するものなどはわからない。だが,なんとなく,自分もなにかを創作したい,そういう気にさせてくれることが多い。そのような感覚をもてるところが,好きなのである。
 広島市内には,「広島県立美術館」「ひろしま美術館」「広島市現代美術館」という美術館があるが,このなかで私が足を運ぶ機会が多いのは,「広島市現代美術館」となる。ここには,それこそさまざまな分野の作品が展示されるのだが,「写真」の作品が展示されることもある(2007年2月4日の日記を参照)。そういうものを見ると,「写真を撮りたい」という気持ちが強くなる。

今日は東京で,午後から用事がある。それまでの空き時間を利用して「東京都写真美術館」へ行き,ちょうど開催されていたコレクション展「機械の眼 カメラとレンズ」(*1)を見てきた。「長時間露光/ブレ/瞬間」とテーマされた展示では,アンリ・カルティエ=ブレッソンの「サン・ラザール駅裏」のような著名な作品をプリントで見ることができる。それだけでも楽しいことだが,この展示「機械の眼 カメラとレンズ」は「表現と技法」をテーマに作品を集めているため,結果として古今東西のさまざまなタイプの作品をまとめて鑑賞できることになる。写真表現の方法を教科書的に眺めることができる,と言ってもよいかもしれない。だから,写真に興味がある人ならだれが見ても,それぞれ違った楽しみ方ができるはずだ。

「広角レンズと望遠レンズ」とテーマされた展示に含まれていた,ユージン・スミスの「MINAMATA」からの1枚では,誇張された遠近感の力強さを再認識できた。ふだんからカメラのファインダーを覗いていれば無意識のうちに多用する技法かとは思うが,こういう撮り方は雑になりがちにも思われるので,きちんと意識していきたいものである。ともあれ,著名な作品のオンパレードである。
 また,「俯瞰撮影と仰角撮影」とテーマされた展示に含まれていた,アレクサンドル・ミハイロヴィチ・ロトチェンコの「下から見上げた建物」は,カメラを持てばだれでもごく自然にそう撮るだろうなとも思われる作品である。しかし,「俯瞰」や「仰角」は写真独特の特殊な視点であると言われれば,これもまたきちんと意識していくべきものかと思わされる。
 そこでふと,写真を撮りたいという気持ちが強くなってきた。とりあえずは,原爆ドームをもっと撮っておきたい。俯瞰は難しいから仰角で,いままであまり撮らなかったような位置からも。そして,カラーフィルムではなく,モノクロで。できれば,フィルムではなく組立暗箱を使って,印画紙で撮影。そういう写真をもっと撮りためたくなってきたのである(2011年8月10日の日記を参照)。我ながら,単純なヤツである(笑)。

やはり,美術館で作品にふれると,なにかを創作したいという気持ちが強くなるようだ。とくに「機械の眼 カメラとレンズ」は,写真の技法にかかわるものだから,その影響力はあまりにストレートであったかと思われる。
 そういえば,「広島市現代美術館」にも,ここしばらく訪れていないような気がする。そうか,最近,あまり写真を撮らなくなってしまったのは,単に忙しいというだけでなく,「広島市現代美術館」に行っていないために「なにかを創作したい」という気持ちが減少していたからなのかもしれない。

*1 機械の眼 カメラとレンズ 平成24年度東京都写真美術館コレクション展 (東京都写真美術館)
http://syabi.com/contents/exhibition/index-1649.html


← 前のページ もくじ 次のページ →