撮影日記


2012年05月21日(月) 天気:曇ときどき晴

金環日食を撮る

今朝は予報されていたとおり,金環日食が起こった。日本のかなり広い範囲で金環日食を見ることができるのだが,惜しいことに広島では部分日食しか見られない(2012年5月4日の日記を参照)。そこで,大阪で日食を見ることを考えたのだが,先週以来,天気予報は曇りがちなことを伝えている。だが,金環になるあいだだけでも,雲の切れ間からその姿を見ることができればいいのだ。そんな期待も込めて,大阪に行ったのである。
 ところが昨夜は,雨である。しかもときおり,激しく降ってくる。薄曇くらいならいいのだが,雨が降るようでは絶望的だ。大阪に行ったのも徒労に終わるか,と思ったら,まもなく雨はやんだ。そして,朝になってみると,曇ってはいるものの,雲を通して太陽の姿を見ることはできそうである。今日の日食は,大阪では食のはじまりが6時17分ころ,金環のはじまりが7時28分ころで,金環は3分間ほど続く。日食を見ることに決めていた場所に5時半ころに行って,日食のはじまりを待つ。空はどんよりと曇ったままだが,かすかな期待をいだきながら,三脚を立てて,カメラをセットする。今日,用意したカメラは,Nikon D70とモノクロフィルムNEOPAN 100 ACROSを装填したNikon F-801,それにビデオカメラSONY DCR-TRV33Kである。Nikon用に用意したレンズは,Reflex-NIKKOR 500mm F8とMicro-NIKKOR 200mm F4,それにテレコンバータTC-200である。Reflex-NIKKOR 500mm F8を選んだ理由は,私の手元にあるもっとも長焦点のニッコールだからである。Micro-NIKKOR 200mm F4を選んだ理由は,私の手元にあるフィルタ径が52mmのニッコールでもっとも長焦点のものだからである。

さて6時15分,そろそろ食がはじまるが,まだ太陽は姿を見せない。これで,食のはじまりから終わりまで,連続して撮影することはあきらめた。せめて金環がはじまるまでには,少しでも雲が薄くなってくれればよい,そんな願いが通じたのか,6時30分ころには急に雲が薄くなり,太陽の姿がわかるようになってきた。「日食グラス」を通じて見れば,太陽が欠けはじめたことがよくわかる。

Nikon D70, Reflex-NIKKOR 500mm F8

2倍テレコンバータを併用して,もっと大きく撮ってみよう。

Nikon D70, Reflex-NIKKOR 500mm F8 + TC-200

撮影場所は,なんの特徴もない,ふつうの町なかの公園である。ただ,小さな川沿いにあるためか,近所の人のお散歩コースにもなっているようだ。お散歩が目的の人は,「日食グラス」など用意していない。私が太陽に向けていたビデオカメラが,ちょうどよいモニタとなり,通りかかる人が覗きこむ。
 そうするうちに,だんだんと人が集まってくる。こういうときは,いったん人が集まりはじめると,不思議とどんどん人が集まってくる。なかには,「日食グラス」を用意している人もあるが,そうでない人も少なくない。日食があることは知っていたが,だからといって,とくに準備などしていなかった人たちも多いということだ。自然と,集まってきた人びとの間で日食グラスの貸し借りもおこなわれるようになり,金環になるときに向かって,人びとの期待も高まってくる。
 「日食グラスをコンパクトディジタルカメラのレンズにかぶせる」ことで,欠けた太陽をうまく撮影できた人もあった。一方で,日食グラスをかぶせそこねたのか,撮像素子を焼きつかせてしまった人もあるようだ。空にはかなり晴れ間も広がってきたが,それでもときおり,雲が太陽を隠す。そんなときは,「日食グラスがないほうがよく見えるよ」といって,なにもせずに太陽を見ていた人もあるが,それはやはり危険なことであろう。

Nikon D70, Ai Micro-NIKKOR 200mm F4 + TC-200

ところで,Reflex-NIKKOR 500mm F8での撮影には,ネオパンSSを露光させて真っ黒にしたものをフィルタとして利用して,撮影した(2009年7月23日の日記を参照)。この場合,表面にコーティングがないせいか,画像がフレアっぽくなり,やや不鮮明なものになる。いっぽう,Ai Micro-NIKKOR 200mm F4での撮影には,ND4とO76とをかけて,さらにめいっぱい絞りこんで撮影した。やはり,ちゃんとフィルタとして市販されているものを使うほうが,画像がすこしは鮮明に見えるようだ。

さて,天気がどうなるか心配だった日食も,いよいよクライマックス。雲にじゃまされずに,金環のときを迎えた。

Nikon D70, Reflex-NIKKOR 500mm F8 + TC-200

Nikon D70, Reflex-NIKKOR 500mm F8 + TC-200

Nikon D70, Reflex-NIKKOR 500mm F8 + TC-200

この瞬間,みんな歓声をあげた。集まっていた人たちの間に,一種の連帯感のようなものが生じていたことは,間違いないだろう。こうして無事にショーはクライマックスを迎えたわけであるが,不思議なことにこのあと急速に雲が広がり,太陽の姿が見えにくくなっていったのであった。
 ということで,あのときの感動を,動画でもう一度。

SONY DCR-TRV33K, Carl Zeiss Vario-Sonnar 3.7-37mm F1.8-2.0

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