撮影日記


2012年04月05日(木) 天気:晴ときどき曇

今年もやってきた 4月5日は「シノゴの日」

一昨年からはじめた「シノゴの日」も,3回目となった。「シノゴの日」とは,4×5判以上の大判写真を楽しむための日である。2012年3月1日にコダックは,カラーポジフィルムの製造販売中止を発表した(*1)。富士フイルムも,フィルムのバリエーションを減らしている。フィルムが供給される環境は,年々,縮小している。今後も,メーカーさんにフィルムを供給していただくには,ユーザが一定量の消費を続けなければならない。
 そもそも,フィルムで写真を撮ることに意味はあるのか?そういう疑問も,湧いてくると思う。そうだ,これだけディジタルカメラの性能があがり,価格も安くなってくれば,フィルムを使う必然性はないのかもしれない。だからこそ,「中判写真」や「大判写真」なのである。6×4.5判以上の大きなフィルムなら,とくに引き伸ばし作業をしなくても,そのまま緻密な写真を鑑賞できるのである。それだけに,コダックがカラーポジフィルムから撤退することは,フィルムの選択肢がそれだけ減るということであり,その影響は大きい。
 フィルムで写真を撮る楽しみとしては,モノクロ写真の魅力も捨てがたい。完全なブラックボックスではなく,いろいろな調整が楽しめるというのは,とてもおもしろいことである。
 そして,ディジタルカメラとの最大の違いは,「フィルム」という「物」に画像が固定されることである。ディジタルカメラで撮影したものは,ただの電気的な信号にすぎない。それを「物」として固定するには,なんらかの形でプリント出力する必要がある。家庭用プリンタで出力すればお手軽であるが,その品質や保存性など,未知数のところがある。ある程度の品質で出力すると,それなりの大きさになり,それなりのコストもかかる。そういう目で見れば,フィルムのコストは決して高くはないと思うのだが。また,RAWであれ,TIFFであれ,JPEGであれ,そのような形式のデータが,はたしていつまで利用できるものか。また,それらを記録したCDあるいはDVDや,メモリカードなどが,いつまで利用できるものか。そういうことを考えれば,画像が「物」に固定されることには,大きな魅力があるのだ。

ともあれ,今年も4月5日に,4×5判の写真を撮ることにした。
 昨年,一昨年は,OKUHARA CAMERA Co.LTDという銘板のついた組立暗箱を使った。これは,さらに大きな判でも撮影が可能なので,5月7日「ゴナナの日」8月10日「バイテンの日」に使うことにする。今年は,証明写真用の「FP-UL」というカメラを使うことにした。このカメラで使う,本来のフィルムのサイズは,じつは4×5判なのである。
 「FP-UL」に,露出計は内蔵されていない。4群4枚構成のFUJINON 120mm F8レンズが固定されており,シャッター速度は1/60秒と1/125秒の2段階のみで,絞りはF8〜F90が選択できる。このあたりは,一般的な大型カメラととくにかわることはない。特異的な点は2つあり,1つは,ピントが固定されていることである。これは証明写真撮影専用のカメラであり,カメラと被写体との距離は,いつも一定の状態で使われるものなのだ。その距離はおよそ1.2m,ファインダーには緑色と赤色のLEDによるフォーカスインジケーターが内蔵されており,被写体がピントのあう範囲にはいっているかどうかを確認することができる。しかしこれが,日中の屋外ではひじょうに見えにくい。そもそも屋外での使用は考慮されていないはずだから,欠陥というわけでもないのだが,これは少々いただけない。特異的なもう1点は,撮影のためのレンズが2つ並んでおり,同じ写真を同時に2枚撮影できるようになっていることだ。まさしく証明写真撮影専用のカメラなのだが,この2枚は厳密にはまったく同じというわけではない。レンズの位置が違うのだから,被写体を見る角度が微妙に異なる。つまり,視差があるわけで,この2枚の写真を並べると立体視が可能になる。
 つまり,証明写真撮影専用カメラを,強引に,大判のステレオカメラとして使おう,というのが今日の目的なのだ(2011年10月16日の日記を参照)。

FUJI FP-UL, FUJINON 120mm F8, NEOPAN 100 ACROS

被写体は,近所の公園のサクラである。目立つ花にピントをあわせてやろうと思うのだが,先も書いたように,フォーカスインジケーターが見えにくい。とくに,明るい空を背景にすると,まったくといっていいほど見えないのである。はたして,ピントも構図も,なんか狙いを妙にはずしてしまい。立体視してもステレオ感が感じられないものになってしまった。

FUJI FP-UL, FUJINON 120mm F8, NEOPAN 100 ACROS

次に,地面に落ちた花びらを狙うが,この場合もフォーカスインジケーターが見えにくく,なかなか思うような構図をつくれない。

FUJI FP-UL, FUJINON 120mm F8, NEOPAN 100 ACROS

そこで気を取り直して,すなおに水飲み場の蛇口を撮ってみた。背景がすっきりすると,ステレオ感は感じられやすい。ただ,この向きではなく,右から撮ってみたかった。そうすれば,背景によく咲いているサクラが入るのである。だが,そちらの方には人がいて,カメラを向けるのに抵抗があるのだった。いや,その人も写しこんでしまおうというなら,その人に声をかけて写りこんでもらえばいいのだが,その人を写すつもりはまったくない。だから,声をかけるのも難しく,お昼休みという短い時間内では,こんな写真でお茶を濁すしかなかったのであった。

*1 コダック プロフェッショナル エクタクローム及びエリートクロームフィルム 製造販売中止のお知らせ (コダック株式会社 コンシューマービジネス本部 2012年3月1日)
http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/corp/info/2012/info0301.shtml


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