撮影日記


2011年12月16日(金) 天気:雪

あの快速に意味はあったのか?
それでも残念な可部線快速廃止の発表

JR可部線は,広島市西区の横川駅から,安佐南区を通り,安佐北区の可部駅までを結ぶ路線である。横川駅から可部駅までの営業キロは14.0km,古くから電化されてはいたが全線単線の,短いローカル線である。
 可部線は,1909年に私鉄の軽便鉄道として開業した。軽便鉄道とは,おもに762mm軌間(2本のレールとレールとの間が762mm)の規格で建設された鉄道を指す。軌間が狭いため,建設が比較的小規模におこなえるが,車両が小さくスピードもあまり出せないため,輸送力は小さい。1911年には,横川駅から可部駅までが開業する。現在とはルートの異なる区間もあるが,全体として駅と駅との間隔は短かった。1930年までに電化,JR(当時の国鉄)と同じ軌間に改められ,1936年に国有化された。部分的な路線の変更や,廃止になった駅もあったが,駅と駅との間隔の短さは,継承されている。可部線はその後,1969年に三段峡駅まで延伸される。さらに浜田までの開通を目指していたが,それは実現されず,可部駅から三段峡駅までの区間は,2003年に廃止になった。

可部線の過去の時刻表を参照しても,特急や急行といったいわゆる「優等列車」の記載はみあたらない。普通列車ばかりが,運転されていたようである。ただ,三段峡駅まで運行されていたころには,観光シーズンの休日などに,広島駅から三段峡駅まで直通する快速列車が運転されていたことはあった。そんな快速列車も,横川駅から可部駅までの区間は,一時期を除いて,各駅に停車するようになっていた。全線単線のわりには列車の本数が多く,快速列車を割りこませることが難しかったものと思われる。一方,可部駅から三段峡駅の間は,全線単線のうえに上下列車の交換ができる施設も少なかったにもかかわらず,運転される列車の本数が少なかったために,快速列車の設定が容易だったのかもしれない。
 ともあれ,可部線の横川駅から可部駅の区間は,特急や急行どころか,快速列車の設定すら,ほとんどないに等しい路線だったのである。

三段峡行の快速列車 筒賀駅にて(2003年11月24日)
Mamiya Universal Press, Mamiya-sekor 250mm F5, E100VS

そんな可部線の横川駅から可部駅までの区間に変化が訪れたのは,2004年のこと。JRでは,広島駅を中心とする一定の範囲を「広島シティネットワーク」とし,快速列車を設定するようになっていたが,可部線も例外ではなくなった。夕方に3本,可部行きのみだが,2004年10月のダイヤ改正で,「快速 通勤ライナー」が設定されるようになったのである。横川駅から可部駅までの区間でいくつかの駅を通過する快速列車が,毎日運転される定期列車としては,はじめて設定されたということになる。

夕方の快速通勤ライナー可部行き 横川駅にて(2004年10月26日)
Nikon F-301, AF NIKKOR 20mm F2.8S, EBX

今日,来年(2012年)3月17日からの,JR西日本のダイヤ改正が発表された(*1)。
 広島関係をざっと見たところ,各線とも大幅な減便がおこなわれるようである。芸備線(三次駅から備後落合駅の区間)や福塩線(府中駅から塩町駅の区間)などは,これ以上は減らしようがないと思われるところまでの減便である。呉線や山陽本線でも,区間によっては目立つ減便がされている。
 可部線については,夕方の「快速 通勤ライナー」の各駅停車化が発表された。また,可部行きだった快速3本のうち2本は,緑井駅までの運転となる。現在,可部線の下り列車は,可部行き快速が3本,可部行き普通が49本,梅林行き普通が2本,緑井行き普通が17本運転されている。これが,可部行き普通が50本,梅林行き普通が2本,緑井行き普通が19本にかわることになる。快速列車が各駅停車化することによって,これまで快速列車が通過していた駅については,列車の本数が増えることになる。一方で,可部駅については,列車の本数が減ることになる。横川駅からの列車の本数の増減をまとめると,次のようになる。

 快速 可部普通 可部普通 梅林普通 緑井合計
三滝
古市橋
0→049→502→217→1968→71
安芸長束
下祗園
大町
緑井
3→049→502→217→1971→71
七軒茶屋
梅林
0→049→502→2-51→52
上八木
中島
0→049→50--49→50
可部3→049→50--52→50

現在の可部線は,距離が短く,全線単線で高速運転にも向いていない。現在,運転されている「快速 通勤ライナー」は,途中で先行する各駅停車を追い越すこともなく,所要時間も各駅停車にくらべて劇的に短いわけではない。単に,通過する駅の利用者が不便になっただけ,という見方もできなくはない。そう考えれば,すべて各駅停車化することは,利用者の立場から見て悪いことではなさそうだ。現在の可部線は,その大半が広島市安佐南区を通っている。安佐南区は,広島市のなかでは,人口の増加が目立つ地域である(*2)。ほかの路線では減便が目立つのに対して,可部線では運転本数がなんとか維持されているというのは,そういう状況が背景にあるのかもしれない。
 それはともかく,「快速」がなくなると,時刻表を眺めるときの楽しみが,少なくなってしまう。これは,大きな問題である。

*1 「平成24年春ダイヤ改正について」(JR西日本 2011.12.16)
http://www.westjr.co.jp/press/article/2011/12/page_1171.html

*2 「広島市/人口異動(社会動態・自然動態)」(広島市)
http://www.city.hiroshima.lg.jp/kikaku/joho/toukei/05_ido/ido-ind.html


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