撮影日記


2011年10月14日(金) 天気:雨

FP-ULはどんなカメラか

最近,ディジタルカメラを発売する一部のメーカー等が,一眼レフカメラ風のスタイルをしたボディをもちながら「一眼レフ」の構造をもっていない製品を「一眼カメラ」と称している。「一眼カメラ」には,「豊富な交換レンズを用意したシステムカメラ」という意味も含ませているようだが,「一眼」という言葉と「交換レンズ」という言葉を結びつけるには,いささか無理がある。「交換レンズを利用できる」ことを強調するのであれば,「一眼」ではなくむしろ「複眼」というべきではないだろうか。もし,「交換レンズ」が「一眼カメラ」の条件であるならば,ライカのようなビューファインダーシステムカメラ(いわゆるレンジファインダーカメラ)も「一眼カメラ」とよばれてしかるべきである。
 そもそもカメラというものは,1つのレンズで1つの像を結ぶようになっているのだから,本質的に「一眼」なのである。「一眼レフカメラ」は,ミラーを使った「レフ」機構によって撮影レンズを通った光をファインダーに導くことにより,1つのレンズを撮影用とファインダー用とに使い分けている。その大きな特徴を強調したいからこそ,わざわざ「一眼レフ」とよばれるのである。
 逆の見方をして,「一眼カメラ」でないカメラには,どんなものがあるだろうか,考えてみるとよい。まず思い浮かぶのは,「二眼レフカメラ」であろう。「二眼レフカメラ」は,撮影用のレンズとほぼ同様なレンズをファインダー用にも備え,大きな2つのレンズが縦に並んだ独特の姿をしているのである。「二眼レフカメラ」では2つのレンズが縦に並んでいるが,「ステレオカメラ」は2つのレンズが横に並んでいる。視差のある2つの画像を同時に撮影することで,立体視ができる写真を得ることができる。そのほか,Lomographyなどで売られている「連写カメラ」がある。4つ(あるいはそれ以上)のレンズがついていて,短時間の動きを分解した連続写真を撮影できるようになっている。そして,証明写真用の「4眼カメラ」や「2眼カメラ」をあげることができる。
 繰り返すことになるが,「証明写真用4眼カメラ」「証明写真用2眼カメラ」「ステレオカメラ」「連写カメラ」などのように複数の撮影用のレンズのあるカメラと「二眼レフカメラ」とを除いたカメラは,すべて「一眼カメラ」ということになる。ごく一部のタイプのディジタルカメラだけを指すために「一眼カメラ」という言葉を使うのは,言語明瞭意味不明瞭。「一眼カメラ」という言葉を正当化しようとする行為にいたっては,笑止千万。これが,私としての見解である。もっとも,「一眼カメラ」という言葉を使っている人も,そのあたりの事情はふまえたうえで,「あえて」使っているのかもしれない。そこにどういう意図があるのかは,まあいろいろと想像できないこともない。

ところで,「証明写真用2眼カメラ」「証明写真用4眼カメラ」は,文字通り証明写真を撮影するための専用のカメラである。写真店の店頭などで,証明写真を効率よく撮影するための機能が用意されている。証明写真用2眼カメラである富士フイルムの「FP-UL」を詳しく見てみよう。
 正面から見ると,2枚の写真を同時に撮影するために,2つの撮影レンズがあることが大きな特徴であることがわかる。また,正面上部には,大きなフラッシュが内蔵されている。
 シャッター速度は1/60秒と1/125秒の2段階しかない。だが,「FP-UL」はフラッシュを利用した室内撮影を前提としたカメラなのだから,これで十分なのである。

一方,絞りはF8からF90まで,幅広く設定できる。また,「FP-UL」には,露出計は内蔵されていない(AE機構があるわけでもない)。これも,フラッシュによる撮影を前提としているのであるから,合理的なことである。

また,ピントは,1.2mに固定されている。証明写真は,人物の顔をある一定の大きさで写しこんだものになる。だから,極端に顔が大きい(あるいは小さい)という場合を除き,被写体とカメラとの距離は一定でよいのである。「FP-UL」に搭載されたレンズで撮ったときに,証明写真の大きさにちょうどよい大きさで写るのが,1.2mということだろう。カメラと被写体の位置を固定しておくと,ライティングもほぼ固定しておくことができる。これも,実に合理的である。
 ファインダー内には,「顔の位置をあわせる」ための指標も設けられている。また,ファインダー下部にはフォーカスインジケータがあり,被写体までの距離が1.2mであれば中央の緑色のLED(近すぎる場合は左側の赤色のLED,遠すぎる場合は右側の赤色のLED)が点灯するようになっている。
 まさに「FP-UL」の仕様は,効率よく証明写真を撮るために特化した結果なのである。

ところで,「FP-UL」の本体価格は168,000円である。ちょっとした一眼レフカメラ一式が買えるような金額だ。さすがに特殊な用途のカメラということで,量産効果が出ないのであろうか。ともあれ,こんな高価なカメラを眠らせておくのはもったいない(本来は,証明写真を撮影して稼ぐために購入されるものなので,そういうことは問題にならないわけだが)。なにかほかに,使い道はないだろうか。
 「FP-UL」の特徴は,なんだっただろうか。そう,撮影用のレンズが左右に2個ついていることである。それは,「ステレオカメラ」と同じスタイルだ。つまり「2眼カメラ」というスタイルを生かせるのは,やはり立体視であろう。「FP-UL」をステレオカメラとして使うことができないだろうか。
 シャッター速度が2段階しかないとはいえ1/60秒と1/125秒とがあり,絞りの範囲は十分に広いので,日中屋外の撮影であれば,十分に対応できるだろう。ピントが1.2mに固定されているのが致命的と言えなくもないが,もっぱら1.2mの距離の被写体を狙えばよいのである。むしろそれくらい近距離のものを撮影したほうが,立体視したときにおもしろいかもしれない。
 先日の日記でも書いたように,インスタントフィルムホルダ「PA-45」のかわりに,4×5判のシートフィルムホルダを使っての撮影もできそうである。ネオパンなどのモノクロフィルムが使えれば,インスタントフィルムと違ってランニングコストが低くなって,好都合なのである。


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