撮影日記


2011年08月04日(木) 天気:晴

D-23をつくる

まもなく8月10日,「バイテンの日」がやってくる。「バイテン」とは,8インチ×10インチという大きなサイズのフィルムをさす。「バイテンの日」には,できるだけ大きなフォーマットで写真を撮ろう。
 とはいえ4×5判よりも大きなフォーマットのフィルムは,入手がやや億劫である。店頭に在庫がないことも多いだろうし,価格も高い。現像処理もそれなりに高額になる。4×5判までのフォーマットと,それを越えるフォーマットとの間には,越え難い「高い敷居」が存在するのである。
 「印画紙で撮影」すれば,その敷居をかなり下げることができるので,4×5判を越える大きなフォーマットでの撮影にも果敢に挑んでいきたい。

とはいえ,印画紙で撮影するには問題点がある。まずは,感度が低いことだ。実質的な感度は,ISO3くらいだろうか。さらに,大きなフォーマットでの撮影だから,できるだけ絞りこんでおきたい。私の場合は,使うカメラが古典的な組立暗箱であり,全体にガタも感じられ,精度もあまりよさそうではない。だからなおさら,絞りこんで撮影したい。結果として,晴れた日中でも数秒の露光時間が必要になるので,動く被写体は撮影できないことになる。こればかりは,どうしようもない。
 別の問題点として,印画紙の特性がある。まず印画紙は,赤い色への感度が低い。被写体には,いろいろな色で区別されるものよりも,形や明暗のはっきりしたものを選ぶのがよいだろう。その上,印画紙での撮影は,どうしても中間のトーンが失われて硬調になるといわれている。これは,印画紙用の現像液ではなく,フィルム用の現像液を使用するなどして,ゆっくりと現像を進行させ,進行を見ながらちょうどよさそうなところで引き上げて定着をおこなうようにすることで,ある程度はカバーできそうである。
 そこで今回は,軟調現像液とされているD-23現像液で処理をおこなうことにした。

公開されているD-23の処方(*1)によると,必要な薬品はメトールと亜硫酸ソーダだけである。これらの薬品は,ヨドバシカメラやビックカメラなどの通信販売でも購入できる。処方通りに薬品をはかりとって溶解し,さっそく現像処理をおこなう。ところが,これが思ったよりも進行が速い。原液ではなく,希釈液で処理をすべきだったようだ。それ以上の要因として,うちの暗室に換気扇がない。もちろん,エアコンがあるはずもない。夏は蒸し風呂状態,すなわち室温が高く,そんななかで使用する液温は,とんでもなく高いわけである。
 希釈したうえで,十分に冷やしてから処理すべきであったか。
 それでも撮影したネガ像は,ちゃんと得られたようだから,これでもよしとする。

OKUHARA CAMERA, FUJINON W 150mm F5.6, FUJIBLO WP FM2 (ISO 1.5として撮影), D-23で現像

*1 50℃の湯0.75リットルに,メトール7.5g,亜硫酸ソーダ100gを溶解し,水を加えて1リットルにする。
「新アサヒカメラ教室 6」(朝日新聞社,1979年)による


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