撮影日記


2011年04月03日(日) 天気:曇のち晴

ミノルタSRT101は生きていた

「カメラのキタムラ 高取店」のジャンク品は,たくさん買うほど単価が下がるような価格が設定されている。オリンパス「トリップ35」を救出したことは,2011年3月20日の日記に書いたとおりだが,当然ながら,単価を下げるために,ほかにもいろいろと救出したのである。

この,ミノルタSRT101とMC W.ROKKOR-SG 28mm F3.5も,そういう事情で救出したものの1つである。
 ミノルタSRT101は,ミノルタSR-2にはじまる一眼レフカメラのシリーズだ。ミノルタSRシリーズではじめて,TTL露出計を内蔵した機種である。TTL露出計には,画面全体の平均的な明るさを測光する「全面測光」のものや,中央付近にやや限定した範囲を測光する「中央部重点測光」のもの,中央部のごく狭い範囲を測光する「スポット測光」のものなどがある。
 最初に商品化されたTTL露出計つき一眼レフカメラは,東京光学のトプコンREスーパー(1963年)だが,これは全面平均測光である。商品化はトプコンに遅れをとったものの,試作品の発表はトプコンより早かったペンタックスSP(1964年)は,試作品ではスポット測光,量産品では全面平均測光になっていた。ニコンではじめてTTL露出計を内蔵したニコマートFT(1965年)は全面測光だったが,モデルチェンジしたニコマートFTN(1967年)では,中央部重点測光になっている。
 それぞれの測光方式には,得意とする分野とそうでない分野とがあるが,全体の傾向としては,全面測光から中央部重点測光へ移り変わっていくような印象を受ける。中央部重点測光が主流になっていったのは,全面測光だと逆光時に露出計の値のとおりに撮影すると,被写体が暗くなってしまうことを避けるためだと思われる。観光地などでの記念写真で,顔が暗くなってしまうことは,多くのユーザにとって「避けたい」ことであるのは,疑うまでもないだろう。自動露出専用のカメラに「逆光補正ボタン」が用意されたような例からも,そのような要望が強いことがうかがえる。
 測光方式はさらに進化し,ニコンFA(1983年)では,画面全体を5つに分割し,それらの明るさから撮影の状況を判断して適切な露出を与える「多分割評価測光」が実現された。つまり,「自動露出補正」なのである。
 さて,ミノルタSRT101(1966年発売)の測光方式は,独特のCLC方式という「上下2分割測光」である。要は,記念写真を撮るときなど,横位置で撮影するときに空の明るさにひっぱられて被写体の顔が暗くならないようにするものである。測光方式の工夫の目的の1つは,結局,そこにあるのだろう。

さて,ジャンクコーナーにあったミノルタSRT101を手にしてみる。MC W.ROKKOR-SG 28mm F3.5もついている。ミノルタSRT101はポピュラーな機種ながら未入手だったし,広角レンズは標準レンズや中望遠レンズにくらべてジャンク品として流通することが少ないように思うので,どちらもこの機会に救出してみたいものである。
 ミノルタSRT101の巻き上げは,ちゃんと動いた。シャッターレリーズボタンを押せば,シャッターも動作した。このクラスの一眼レフカメラがジャンク扱いになっているときには,シャッターはちゃんと動作しても,露出計が使いものにならなくなっているケースが多い。このカメラもそうなのだろうか。シャッター速度を1/1000秒から順に変えながら,空シャッターを切っていく。1/60秒までは,ちゃんとシャッター速度が変化しているようだが,そこから先はシャッター速度が変化しない。これは残念な状況だが,「カメラのキタムラ 高取店」のジャンクカメラは,たくさん買えば単価が下がるのである。少し迷って,やはり救出することにした。清算時に,ボディとレンズとはそれぞれ1個として数えられたので,オリンパスTRIP35とあわせて,単価がぐぐっと下がったのである。
 3月中は仕事が忙しかったので,4月になって余裕ができたら分解してみようと思い,ずっと放置していた。今日,あらためて手にとってみると,1/30秒〜1秒のシャッター速度もちゃんと使えるようになっているではないか。なにか,一時的にひっかかっていただけだったのだろうか。そこで,電池を入れてみたところ,露出計もちゃんと動作する。ジャンク扱いになっていたが,このミノルタSRT101は生きていたようだ。

なお,この日はさらに2個のジャンクカメラを救出したので,単価は300円となった。いちおう動作するミノルタSRT101と,前玉に少し傷はあるもののMC W.ROKKOR-SG 28mm F3.5とをあわせて600円で購入できたことになる。
 こういうことがあるから,ジャンクコーナーは楽しいのだ。


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