撮影日記


2011年03月05日(土) 天気:晴

廃止された鉄道が復活する
可部線が延伸

先月2月3日のこと,中国新聞が「可部―旧河戸間を復活方針」というニュースを伝えた。以前から地元では要望があり,広島市もそのような計画を用意していたものだが,内情を知らぬ者としては「いつまでも計画ばかり」で,いつ具体化するのかが見えていなかった。この記事では,「2011年度に着工し,2013年度までに完成させる」方針を広島市が固めたということを伝えている。
 JR可部線は,現在,広島市西区の横川駅と広島市安佐北区の可部駅とを結んでいる。かつて,可部駅から先,安芸太田町の三段峡駅まで路線があったが,これは2003年11月30日をもって廃止となった。今回の路線延伸は,その廃線区間の一部を利用するものである。廃線区間はおよそ40kmにおよぶものであるが,延伸されるのは2kmほどにすぎない。それでもこれは,「廃止された区間が復活する」貴重な例となる。

今回,延伸が計画されている区間は,可部の市街地の西端にあたる。住宅団地も近く,それなりの人が住んでいる地域であるが,ここにあった河戸駅を発着する列車は,ごく少ないものだった。可部駅と三段峡駅との区間が廃止された2003年当時,可部駅では,横川方面から1日に約50本の列車があった。日中,約20分おきの運転である。一方,三段峡方面の列車は,1日に8本である。1時間に1本あるかないか,という状況だったのである。
 これだけの運転本数では,なかなか利用しづらいものがあっただろう。それを反映してか,河戸駅は目立たない場所にあった。下の画像は河戸駅の駅前だが,河戸駅への入り口がわかるだろうか?

この画面中央に見える,緑色のテントの「グリル天草」のところから,河戸駅に入ることができる。

いまは草に埋もれかけているが,近づけばちゃんと,看板もたっている。ただ,この看板は,(国鉄時代や)JRの駅でよく見られるものとは少々,様相が異なる。(国鉄あるいは)JRによって設置されたものではなく,地元の人が設置したものかもしれない。

駅舎もなく,ホームにちょっとした待合所があるだけの簡素な駅だが,待合所に入れないように封鎖されているだけで,そのほかは驚くほどきれいに,現役当時と変わらぬ姿で残っている。「河戸駅まで電化早期実現」という看板もあり,地元の人たちによって維持・管理がなされているのだろう。

ただし,河戸駅はたぶんなくなる。これは,河戸駅の維持や管理をしてきた人たちにとっては,すこし残念なことかもしれない。今回の復活では,河戸駅のもう少し先,かつて県営住宅があった場所あたりまで延伸される予定とのこと。延伸にともなって,終点になる駅と可部駅との中間,公共施設やショッピングセンターなどが集まるあたりにも駅が新設される計画があるが,河戸駅はそれらの中間にあたり,どちらの駅からも近すぎるのである。

 可部線が延伸されるのは,河戸駅のすこし先あたりまでとなる。現在,線路の跡は,可部線と県道とが交差するあたりを境に様相が異なる。そこより可部側はまだレールが残されているのに対し,三段峡側はすでにレールがきれいに撤去されている。ここから先,三段峡までの線路の跡は,道路の拡幅や自転車道,遊歩道の整備に使われるという。

ここから先,三段峡までの可部線の復活は,考えられていないということだ。それに対して,ここまでは線路も残されており,踏切も,その上をアスファルトで覆っただけで,いつでも元に戻せるように考えられているのだと思われる。
 ここを電車が走るようになる日を,楽しみに待つことにしよう。

画像はすべて,SONY DSC-P10による。


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