撮影日記


2010年12月12日(日) 天気:晴のち曇

まじめなニコンU

「オートボーイ」,「ピカソ」,「現場監督」など,コンパクトカメラには「愛称名」が与えられていることがある。しかし,一眼レフカメラの名称は,初心者向けとされる廉価な機種であっても,「EOS1000」,「α-303si」,「F-401X」など,記号,数字の羅列であった。
 そんな傾向に変化を与えたのは,キヤノン「EOS kiss」の商業的な成功だろう。「EOS kiss」の後,各社ともファミリーユースを想定したエントリーモデルの一眼レフカメラに,単なる記号や数字ではない,愛称名のような機種名をつけるようになった。ミノルタは「α-sweet」,ニコンは「U」といった具合だ。いや「U」はただのアルファベットだろ?という見方もできるが,これには「you」という意味も含まれているとか。「you」という名前にしないあたりは,ニコンの「固い」という印象につながるものなのかもしれない。

ニコンのエントリーモデルの一眼レフは,他社にくらべてまじめにつくりこまれていると,評論家たちは言う。たとえば,レンズマウント部分をプラスチックではなく金属でつくる点などが,具体例としてあげられる。それは,価格が高く,重くなるという,エントリーモデルとしては致命的な欠点となりえるのだが,それでもあえてそうつくるところを,「ニコンらしさ」と評価するようだ。

そうは言っても,ニコンとてそれなりに「手を抜く」ようになってくる。ニコンUの前モデルであるニコンF60では,ファインダーにはペンタプリズムが用いられていたが,ニコンUではペンタミラーになっている。これは,ファインダーの見え具合のクオリティを低下させるので,まず確実に,マニア層は嫌うことになる。そのかわり,ずいぶんと軽くなった印象を受けるので,ファミリーユースにはむしろ適切ということになる。
 そんなニコンUだが,私が大きく評価したい点が1つある。それは,電池ボックスの蓋だ。たとえば同クラスの,キヤノンNew EOS kissやペンタックスMZ-60などでは,電池ボックスの蓋は,薄いプラスチックを折り曲げただけでつながっている。これでは,何度も開閉をしているうちに,ちぎれてしまいそうで,無用な開閉を避けたい気持ちになってしまう。まあ,長寿命のリチウム電池を使用していること,ファミリーユースであればそうそう電池が消耗することもないだろうことから考えれば,必要にして十分な強度は確保されているのだろうと思うが。
 それに対してニコンUは,きちんと蝶番としてつくりこまれている。電池ボックスの蓋の開閉が,これなら安心しておこなえる。

ニコンUは,ニコンF60とくらべると,明らかに安っぽくなった。一方,オートフォーカスの測距点が5つになったことや,AF-Sレンズ(超音波モーター内蔵レンズ)に対応するなど,機能的には進歩している。ニコンUもニコンF60も,どちらも家庭内でのスナップに使うのであれば,十分な品質をそなえているのは間違いない。自動化機能が充実し,小さく軽くなることが,このクラスのカメラが進む道としては,やはり正しいことなのだろうと思う。
 ほかでもないが,ずっと使ってきたニコンF60を激しくぶつけてしまい,一部の機能が少々不調になったので,急遽,安く売られていたニコンUをお迎えしたものである。


← 前のページ もくじ 次のページ →