撮影日記


2010年09月18日(土) 天気:はれ

なぜか安かった「アクメルMD」

昨日の日記の続き。

ヤシカ「アトロン・エレクトロ」の販売が終了したことで,日本製ミノックス判カメラの流れが立ち消えたかのように思われた1984年,「カメラ総合カタログ vol.79」(1984年)の広告ページに,あらたなミノックス判のカメラが登場した。その名称は,「アクメル・ミニ」といい,フラッシュを内蔵しないかわりに65mm×26mm×16mmの超小型ボディを実現した「ACMEL M」と,フラッシュを内蔵しておよそ2倍の幅(126mm×26mm×16mm)がある「ACMEL MX」の2機種が紹介されていた。写真用品のKINGブランドで有名な,浅沼商会からの発売である。同年の「写真用品ショーカタログ No.14」(1984年)の浅沼商会のページにも,「アクメルM」と「アクメルMX」が掲載されている。「アクメルM」「アクメルMX」とも,シャッター速度は1/200秒だけで,絞りを手動であわせる(F3.8〜F11)ことで露出を調整する。また,ピントは調整不要で,1m〜∞の固定焦点になっている。当初はブラックボディだけだったようだが,翌年版からはカラーバリエーションとして赤いボディのものも掲載されている。
 これらの機種は,「写真用品&映像ショーカタログ No.19-II」(1989年)には掲載されているが,「写真用品&映像ショーカタログ No.20」(1990年)では姿を消し,「アクメル&ミノックスカメラ用ネガカラーフィルム」だけが掲載されている。「アクメル」は,ここに終焉を迎えたかのように見えた。
 「アクメル」の名前を見なくなり,その存在を忘れたころ,「カメラ総合カタログ vol.106」(1993年)にふたたび「アクメル」の名前があらわれた。こんどは「アクメル・mini2(ミニミニ)」と称する,「ACMEL MD」という機種である。専用フラッシュが別売になり,ボディのサイズは84mm×37mm×21mmで,「アクメルM」より少し大きい。15mm F3.5のレンズを搭載し,絞りはF4.8で固定されているが,電子制御シャッターで自動露出になった(シャッター速度の範囲は2秒〜1/500秒)。そして,ピントは目測式で,最短30cmまで調整ができる。一気に,かなりスペックアップしたという印象だ。「写真・映像用品ショーカタログ No.23」(1993年)にも掲載されている。
 その後,「アクメルMD」も姿を消し,変わってフジカラー販売から「MC-007」というミノックス判カメラが発売された。これは,「アクメルMD」とほぼ同じものだそうだ。富士写真フイルムではなくフジカラー販売が取り扱っていたためか,日本カメラショーの「カメラ総合カタログ」では,その姿を見かけない。また,カメラに記載されたロゴも「FUJI」や「FUJIFILM」ではなく「FUJICOLOR」である。

今週も大阪に用があり,「八百富写真機店ディアモール店」に立ち寄る機会があった。アマチュアショップ「マルシンカメラ」と違って,21時ころまで開いているのが,ありがたい。いや,ありがたいどころか危険であるというべきか。
 「八百富写真機店ディアモール店」に立ち寄ったのは,ローライの127フィルムをもう1本購入しておこうと思ったからである(2010年8月13日の日記を参照)。残念ながら,127フィルムは品切れのようだ。ただ,その隣には,ミノックス用フィルムがたくさん置いてある。ミノックス用フィルムがあるということは,そのお店には,ミノックス判カメラもあるということだ。店の奥,中央のショーケースを眺めてみると,16mm判カメラとあわせてケース内の1段をこの種の超小型カメラが占めている状態。在庫は,数も種類もけっこう豊富に見える。
 本家ミノックスは,モデルにもよるが数万円以上の価格がついている。さすがに,お気軽に手を出せる金額ではない。ヤシカ「アトロン」なら8000円ほどだが,それでも衝動買いしたくなる金額ではない。それに見た目がいまひとつカッコよくない。ヤシカ「アトロン」の横には,フラッシュを内蔵した「アクメルMX」が10000円ほどで並べられている。こちらは「アトロン」よりも,カッコよく見える。フラッシュ内蔵というのは便利そうだが,10000円というのは,やはり衝動買いしたくなる金額ではない。
 ミノックス判は110判とはちがって,フィルムがまだ入手できるだけあって,カメラもそんなに値崩れしていないのだろう。そう考えて目を離そうとしたとき,2800円という安価な値札が目に入った。
 それは,「アクメルMD」本体につけられた価格である。

電源として2個のCR(1/3)が必要だが,4個のLR44でも動作する。

固定焦点のヤシカ「アトロン」や「アクメルMX」にくらべれば,ピント調整のできる「アクメルMD」のほうが,はるかに実用性は高いと考えられる。それにもかかわらず,価格は数分の1とお手軽だ。1つには,小さなプラスチックのボディでは,趣味性というのが薄いからということが考えられる。コレクション的には,金属ボディで機械式シャッターのヤシカ「アトロン」がはるかに勝るだろうが,そう考えると,ピント調整のできない「アクメルMX」が,いかにフラッシュを内蔵しているとはいえ,もっと安くてもいいはずだ。
 さて,「アクメルMD」をウィンドウから出してもらってよく眺めれば,ピント調整の目盛が消えかけている。安さの秘密は,このあたりにあるのだろうか?店頭での動作チェックも問題なし。比較的実用性が高いと思われるミノックス判のカメラを思ったより安価に入手できたことには,ちょっと満足している。


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