撮影日記


2010年09月03日(金) 天気:はれ

ZEレンズアダプタはレアな存在

昨日の日記で紹介したように,マミヤの35mm判一眼レフカメラは,6種類のレンズマウントを採用してきた。あたらしい機構を導入するためには,よりあたらしいタイプのレンズマウントを使うのが有利なのである。
 ところが,「マミヤNC1000s」と「マミヤZE」とでは,レンズに互換性はないのだが,レンズマウントの形状は同じなのである(レンズに互換性がないから,これらは別のマウントと見なすことにする)。このようなことをしているのは,レンズマウントを変更すると,それを生産するための金型などのコストがばかにならないからではないだろうか。「マミヤNC1000s」と「マミヤZE」のレンズマウントは,基本的な形状は同じものが90°回転した状態で使われているのである。
 しかし形状が同じだからこそ,そこには「ちょっとだけ」互換性があった。

これは,「PマウントアダプタZE」という製品である。「マミヤZE」シリーズのカメラに,M42マウントのレンズを取りつけて使うための純正マウントアダプタである。
 このマウントアダプタを見ると,自動絞りに対応したM42マウントレンズにある,絞りを動かすためのピンを抑えることができそうな「ベロ」があることがわかる。しかし「マミヤZE」に,このアダプタを使ってM42マウントレンズを装着しても,自動絞り機構ははたらかない。「ベロ」を動かす部分と,「マミヤZE」の自動絞りのレバーの位置とが,あきらかにずれているのである。
 このマウントアダプタは,本来は「マミヤNC1000s」用のものなのであろう。日本カメラショーの「カメラ総合カタログ」では,「PマウントアダプターZE (TL・SXレンズ用)」は「マミヤZE」シリーズ登場と同時期に,すでに用意されていることがわかる(たとえば,「カメラ総合カタログvol.69」,1980年を参照)。また,「マミヤNC1000s」の時代にも,「Pマウントアダプター (TL・SXレンズ用)」という製品が用意されていることがわかる(たとえば,「カメラ総合カタログvol.67」,1980年を参照)。
 これらは同じ製品なのだが,「マミヤNC1000S」ならば自動絞りが使えるのに対して,「マミヤZE」ではマウントが90°回転した状態になっているので,自動絞りが使えなくなっているのだった。それでもこのマウントアダプタだけは,「マミヤNC1000s」と「マミヤZE」と共通に使えることにはかわりない。

「カメラ総合カタログvol.73」(1982年)を参照すると,「マミヤZE」用にあらたな純正マウントアダプタが用意された。それは「マミヤM645レンズ−ZEアダプターリング」というものだ。「マミヤZE」で,セミ判一眼レフカメラ「マミヤM645」用のレンズを使用するためのアダプタである。自動絞りには連動していないが,「マミヤZE」用の交換レンズのラインアップでは,単焦点の望遠レンズがさびしい状況なので,使える望遠レンズの選択肢を広げるには有効な製品として位置づけられていたことだろう。
 ただ,そもそも「マミヤZE」はそれほど大ヒット商品にはならなかったように思うがどうだろうか?それはあなたが,「誰かがマミヤZEを使っているところ」をどれくらい見たことがあるか考えれば,ある程度は想像できるのではないだろうか。「ニコン」や「キヤノン」にくらべて,どうだっただろうか?
 セミ判を使うようなアマチュアが,「ニコン」や「キヤノン」の35mm判一眼レフを併用するようなことがあっても,「マミヤZE」を併用するような状況があったと想像できるだろうか?もし,「マミヤZE」が爆発的に売れていたなら,中古カメラ店の店頭に,「マミヤZE」がもっとたくさん並んでいることだろう。そして,「マミヤM645レンズ−ZEアダプターリング」も,たくさん流通していることだろう。

しかし私は,「マミヤM645レンズ−ZEアダプターリング」が中古カメラ店の店頭に並んでいるのを見たことは,1回しかなかった。そして,そのときつけられていた価格は,発売当時のメーカー希望小売価格の2倍以上にあたる9800円というものだったのである(2006年5月26日の日記を参照)。
 そんな「マミヤM645レンズ−ZEアダプターリング」を大阪駅中央口の八百富写真機店で見かけたのは,7月のこと。つけられていた価格は,消費税込で3990円(消費税別なら3800円)。決して安くはないが,製品のレアさを考えれば,妥当なものではないだろうか。だが私はそれを購入せず,見送った。なぜならば,「マミヤZE」のボディは私の手もとにあるが,M645のレンズは1本もないからである。
 そして,今夜。あれから2カ月近くが経っても,「マミヤM645レンズ−ZEアダプターリング」はまだ店頭に残っていた。私が保護するのを待ってくれていたとしか思えない。M645のレンズとは,いずれきっと,よい出会いがあることだろう。


← 前のページ もくじ 次のページ →