撮影日記


2010年06月09日(水) 天気:晴れ

暗室電球の未来は
暗いか明るいか

ネガフィルムに記録した画像を,写真として鑑賞するためには,印画紙にプリントする(焼きつける)作業が必要になる。フィルムや印画紙は,そこに光があたることによって,像を記録するようになっている。したがって,像を結ぶための光以外の,不要な光があたらないようにしなければならない。そのため,プリントする作業は,部屋を真っ暗にすることができる暗室でおこなうことになる。
 しかし,まったくの暗黒では,作業が難しい。そこで,印画紙には感光しないような薄暗い赤い電球が使われる。この「暗室電球」を製造・販売していた東芝ライテック株式会社も,すでに取り扱いを終了している(*1)。また,今年3月には,一般の白熱電球の製造終了がアナウンスされた(*2)。2012年までに白熱電球を全廃したいという,経済産業省の意向を反映しての措置であろう。暗室で使うセーフライトとして,白熱電球を入れたボックスの前にフィルタをかけて使うようになっているものが市販されているが,白熱電球が全廃されたら,そのようなセーフライトも使えなくなるということになる。白熱電球が完全になくなるのは,まだ先のことであろうが,いまのうちになんらかの代替品を見つけておかねばならない。

白熱電球の代替品として注目されているものに,LED電球がある。白熱電球や電球型蛍光灯にくらべて価格が高く,明るさが足りないと指摘されている。価格が高いのはいただけないが,暗室電球のかわりに使うのであれば,明るい必要はない。むしろ,薄暗いほうが好都合だ。
 照明売り場を覗いてみたところ,「装飾用LEDナツメ球」というものが売られている。価格は300円前後。「装飾用」というだけあって,さまざまな色のバリエーションがある。「LEDを3個使用」などと明るいことをアピールしている製品はさけて,薄暗そうな橙色のものを1つ買ってみることにした。

さて,印画紙は,この橙色LED電球の光に感光するであろうか。
 まず,東芝暗室電球から実験する。暗室電球から15cmほどの位置で,感光しているかどうかわかりやすいように,その一部を指で覆って印画紙に20秒ほど光をあてる。そして,現像。富士フイルム「フジブロWP FM3」は,ほとんど感光していないようだ。一方,イルフォード「マルチグレードIV RC」は,はっきりと感光している。東芝暗室電球は,号数印画紙用でマルチグレード紙用ではないとされているが,その通りである。
 つぎに,橙色のLED電球で実験。そもそも東芝暗室電球にくらべればずいぶんと暗いのだが,暗室での作業をするのに困るような暗さではない。こちらもLED電球から15cmほどの位置で同様に,印画紙に20秒ほど光をあてて現像する。その結果,富士フイルム「フジブロWP FM3」もイルフォード「マルチグレードIV RC」も,感光しているようには見えなかった。どうやら橙色のLED電球は,十分に暗ければ,マルチグレード用のセーフライトとしても使えそうである。LPLなどから発売されているセーフライトを買わずに済むのは,ありがたい。また,この種のLED電球は今後も発売されるだろうから,しばらくは安心というもの。
 また,LED電球は発熱が少ないとされる。夏場の暗室作業が,多少は楽になるかもしれない(笑)。

*1 http://www.tlt.co.jp/tlt/faq/faqphoto/faqphoto.htm#q01

*2 http://www.tlt.co.jp/tlt/topix/press/p100317a/p100317a.htm


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