撮影日記


2010年06月05日(土) 天気:晴れ

6月4,5日は「セミ判の日」

2006年1月には,ニコンがフィルムカメラのラインアップを大幅に整理することと,コニカミノルタが写真・カメラ事業から撤退することという,衝撃的な発表が相次いだ。このときすでに京セラも,CONTAX事業からの撤退を発表しており,フィルムカメラの時代が事実上終わりを迎えたのである。ただし,あたらしいフィルムカメラが供給されなくなったとしても,すでに存在している大量のフィルムカメラの機能は,維持されている。フィルムの供給と,その現像サービスさえ続けば,まだまだフィルムカメラを使い続けることができるのだ。ライカを見よ,ニコンFを見よ,発売から50年以上が経過していても,じゅうぶんにきれいな写真を撮ることができる機能は維持されているのである。
 衝撃的な発表と歩調をあわせるかのごとく,富士フイルムやコダックが,フィルムの供給を続けることを宣言。これは,希望につながる発表であった。ただしその後,フィルム等のラインアップの縮小や値上げが続いているのは,周知の通り。そんな中で,限定生産という扱いではあったが,富士フイルムが中判カメラの新製品「GF670」を発売したことは,まだ記憶に新しい。
 そうだ,中判カメラだ。
 かつて,35mmフィルムと比較して「いまひとつ」な画質だったディジタルカメラであるが,さらに高画質化が進んだいまでは,35mmフィルムと同等の品質が得られるようになったという人もある。富士フイルムが発売した「GF670」は,中判という大きなフォーマットで撮ることで,ディジタルカメラで得られる画像データよりも,より高品位な写真を楽しめることを謳っている。フィルムのよさを見なおしてほしいという,フィルムメーカーの1つの姿勢と考えることができるだろう。

ということで,私たちのように,趣味で写真を楽しむ者としても,中判写真の楽しさを伝える努力をしていこうではないか。そう考えて勝手に提唱したものが「中判写真週間」である。
 現在の「中判写真」とは,幅約6cmの120(または220)フィルムを使って撮影するもので,そのフォーマットは,6cm×4.5cm,6cm×6cm,6cm×7cm,6cm×8cm,6cm×9cmと,さまざまなものがある。このフォーマットにちなんで,6月4日から6月9日を「中判写真週間」とし,積極的に中判カメラを使って中判写真を撮る日にしたいと考えたのである。「シノゴの日」や「ゴナナの日」と同じ発想である。
 そして,「中判写真週間」がいよいよはじまった。6月4日,5日は「セミ判の日」である。さて,どのカメラを使うべきか。AEファインダーが使えるZENZA BRONICA ETRSなら,お手軽に撮影ができそうである。ブロニカが重いなら,ZEISS IKONのNETTAR (セミネッター)を使うのもおもしろい。結局,少しだけ考えて,蛇腹を直したあとまだ試運転をしていないKorelleを使うことにした。使うフィルムは,すなおにNEOPAN 100 ACROSである。

まず,県道に出て,先日の畳屋さんを撮る。朝から天気がよく,看板にくっきりと影が出てしまったのは,訪れるタイミングが悪かったか。ただ,いつもの看板は,相変わらず存在感が大きい。まだまだ,これからもがんばれ。

Korelle, Radionar 7.5cm F4.5, ACROS100 / EL-NIKKOR 75mm F4.5, ILFORD MGIV RC

この県道沿いには,営業中の鮮魚店もある。また,クリーニング店の看板が残っている建物もあるが,これはどうも廃業しているようだ。ほかにもショーウィンドウの跡のようなものがあって,なんらかのお店だったことをうかがわせるような建物もある。
 さらに進むと,チョコレートの看板が掲げられた建物がある。間違いなく,お菓子屋さんであろう。ガラガラガラと戸を開けて,中を覗いてなにか買ってみたいものだが,今は営業しているふうはない。よく見てみれば,看板に書かれた電話番号の市内局番は1ケタ。営業をやめたのは,ここ10年くらいのことではないのかもしれない。まあ,看板が古いだけで,お店はつい最近まで営業していたという可能性は否定できないのだが。
 こんなお店の前の道は,クルマがびゅんびゅん通っているより子どもたちが遊んでいる方が似合う。現実にはクルマの通行量が多く,子どもたちが遊ぶに適した場所ではない。

Korelle, Radionar 7.5cm F4.5, ACROS100 / EL-NIKKOR 75mm F4.5, FUJIBRO WP FM3

子どもの遊び場として適していないだけではない。この県道には,およそ歩道というか歩行者のためのスペースがなく,のんびり歩くにも決して適したところではない。一言でいえば,歩行者にやさしくない道である。かつてはメインストリートだったはずだが,クルマの交通量の増加にともなって歩行者が追い出されてしまったのだろう。あたらしく国道(現在の国道183号線)ができて,クルマのメインストリートの座をそちらに譲ったはずだが,それでも少なくないクルマがこの道を通るわけである。
 そこで,のんびり歩けそうな路地裏に入ることにする。するとさっそく,板壁を発見。そして,こっちは蔵だろうか。

Korelle, Radionar 7.5cm F4.5, ACROS100 / EL-NIKKOR 75mm F4.5, ILFORD MGIV RC
Korelle, Radionar 7.5cm F4.5, ACROS100 / EL-NIKKOR 75mm F4.5, ILFORD MGIV RC

この路地を通り抜けると,安川緑道に出る。安川の一部を廃川にしたあとを,緑道として整備したものだ。この緑道はまだあたらしくて木が茂っていないせいか,日陰が少ないのが欠点といえば欠点である。もっとも防犯上は,木があまり茂っていないほうがよいという考え方もあるので,今後,この緑道に日陰が増えるのかどうかはわからない。

Korelleのようなセミ判のスプリングカメラでは,120フィルムで16カット撮ることができる。のんびり歩きながら,気になったものに向けてシャッターを切る,という使い方には手頃な枚数だ。露出もピント調整もすべてマニュアル操作,とくにピント調整は目測式なので,「だいたいこんなもんかな」と割り切れる性格の人であれば,軽快に撮り続けることができるはずだ。


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