撮影日記


2010年01月22日(金) 天気:曇

「Professional」にあこがれる

古い話になるが,ワードプロセッサで文書をつくるときに,「文字がそろわない」と嘆いている人がいた。そのデータを見せていただくと,「文字がそろわない」原因が判明。フォントに「MS P明朝」を使っていたのである。
 「MS P明朝」の「P」はプロポーショナルフォントを意味する。プロポーショナルフォントは,文字によって文字の幅が異なるフォントである。たとえばプロポーショナルフォントの「w」は,「i」にくらべて数倍の幅をもっている。一方,「w」も「i」も同じ幅になっているフォントもある。そのようなフォントは,等幅フォントと呼ばれる。
 プロポーショナルフォントを使えば,文字と文字の間隔が一定で最適なものになる。英語の文章を表現するときには,プロポーショナルフォントの使用が適している場合が多い。
 一方,日本語の文章で使われる漢字は,一定の幅のなかにデザインされているので,等幅フォントでも問題はない。ただしプロポーショナルフォントを使えば,かなが適度に詰められるようになるので,見た目が美しい文章になる場合が多い。そのかわり,同じ文字数であっても,文章の幅は変わってしまう。先の「文字がそろわない」は,そのことを言っていたのである。

では,なぜその人は,「MS P明朝」を使っていたのか?聞くと,「Pはプロのことだと思っていた。プロフェッショナル用のフォントを使うほうがいいと思っていた。」とのこと。たしかに「P」は「プロ」だが,「プロポーショナル」の意味であり,「プロフェッショナル」の意味ではなかったのである。残念。

ともあれ,「プロフェッショナル」の意味での「プロ」に,一種のあこがれのような感覚を抱く人は少なくないだろう。子どもたちにあこがれる職業を問えば,「プロスポーツ選手」という答えが返ってくることなど,珍しくない。「professional」を辞書で参照すれば,「専門」「本職」という意味が出てくる。「プロ」は,ふつうの人よりもうんとレベルが高い人をさすことばなのである。「プロ野球選手」は野球がとてもうまい人であり,「プロカメラマン」は写真がとてもうまい人なのである。
 辞書を見れば,「professional」には「職業」という意味も含まれていることがわかる。たしかに「プロ」と呼ばれる人たちは,それによって「お金」を得ている。すなわち,職業なのである。そして,「プロ」と呼ばれる人たちは,「お金」をもらえるだけの「いい仕事」をしているのも,事実なのである。
 だから,仕事をしている人は,みんななにかの「プロ」なのである。しかし,それをわざわざ「プロ」だと意識していない人も多いのだろうか。とにかく,人は「プロ」にあこがれる。いや,「プロ」ということばにあこがれているのかもしれない。たとえば,趣味で写真を楽しんでいる者として,撮った写真を「プロ並みですね」などと言われると,ちょっとはいい気分になるものである。使っている機材を「プロ並みですね」と言われるのは,……適当に笑ってごまかすしかない(笑)。

しかし,機材を「プロ並み」にしたいと考える人は,多いはずだ。「プロ」と呼ばれる人たちは,いい仕事をするために,それなりにいい機材を使っているのは間違いない。「学ぶ」は「まねをする」ことに通じるのだから,「うまい人」が使っているのと同じ機材を使い,同じようなスタイルで撮影を試してみるのも,学習の1つの段階としては必要だろう。
 ところでカメラ等にやたらと「Professional」という文字がついているのを見ると,その「Professional」にはいったいどんな意味が含まれているのか,疑問に感じてしまうのだ。たとえばフジのカメラを見れば,「GX680III Professional」という製品がある。なるほどこれは,撮影スタジオなどでよく見かけるカメラだ。たしかにプロが仕事で使うカメラであろう。観光地の記念撮影現場でよく見かけるGW690にも「Professional」がついている。これも,仕事用のカメラであろう。
 最近発売されて話題になったGF670も,「Professional」だ。オートフォーカスにAEでフラッシュも内蔵された,フルオートコンパクトカメラのようなGA645にも「Professional」がついている。あくまで個人的なイメージであるが,これらのカメラは「仕事用」と言う面よりも,アマチュアが趣味で使うカメラだというイメージが強い。だから私としてはこれらのカメラには,「Professional」ではなく「Amatuer」などと書いておいてもらいたい(笑)。英語の「Amatuer」には「素人」という意味が強いのだろうが,日本語での「アマチュア」には「愛好家」の意味が先にあり,ただの素人より少しはステージが高いような印象を受けるものである。
 いや,はっきりと「ただの素人」とは差をつけてほしい,というならば。「ハイアマチュア」(ハイアマ)や「アドバンストアマチュア」(アドアマ)などと称すればよいのである。カメラの本体に「Professional」と書くかわりに,「for High-Amatuer」「for Advanced Amatuer」あるいは単に「Advanced」などと書くのはどうだろうか?
 いや,メーカーさんはあくまでも,「仕事にも使える高品質な製品」すなわち「Professional仕様だ」と考えているのかもしれない。

なになに?「Advanced」だと,「APS」みたいで嫌だ,と?
 うーむ,たしかにそうだな(笑)。


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