撮影日記


2009年12月15日(火) 天気:曇

真っ赤なトマト

昨日の日記の続き。
 大阪で時間に余裕があれば,梅田のマルシンカメラにはぜひ立ち寄っておきたい。何度も書いているように,ここはジャンクカメラが豊富なところが魅力なのである。今回も,なにかおもしろそうなものとの出会いを期待するのである。
 まずは,奥のほうの棚に,ボックスカメラがたくさん置いてあるのに気がついた。ボックスカメラとは,20世紀前半に流行した形式の,簡便なカメラである。その形態はまさに「箱」で,中央にレンズがあり,その上の左右に縦位置用と横位置用のファインダーのレンズがある。正面からみると,ちょうど顔のようになっている。20世紀半ばになるとプラスチック製のものもあらわれるが,木や厚紙の箱に皮を貼ったようなものが主流で,そのユーモラスな顔つきとあいまって,暖かみを感じるカメラが多い。機構としても簡便なもので,ピント調整不要の固定焦点。シャッターは,チャージの動作が必要ないエバーセット型で,B(バルブ)とI(インスタント,1/100秒ないし1/50秒くらいのものが多いようだ)だけのものが多い。120フィルムを使うものもあるが,もっとサイズの大きな116フィルムを使うものもある。フィルムのサイズにあわせて,大小さまざまなカメラがあるのも,ボックスカメラの魅力だ。たぶん,収集をはじめればキリがないだろう。
 残念なのは,つけられていた価格。3990円は,その時代のボックスカメラとしては,高いものではないと思う。ただ,このクラスのカメラは,できればもう少し安く入手したいものである。いつものことながら,このお店は,価格設定が絶妙である。

ジャンクコーナーの多くを占めているものは,戦後の国産35mmレンズシャッターカメラである。アイレスやタロン,ビューティーなど,それぞれ1機種くらいは所有しておきたいものだ。しかしこれらのカメラは,ジャンクコーナーにふさわしいコンディションのものが多い。
 残念ながら,今日は収穫なしか……と,立ち上がりかけたとき,これが目に入ってきた。これは少々高価であるが,救出せねばなるまい。

ペンタックス「オートロン」のカラーモデルである。
 ペンタックス「オートロン」(PENTAX PC35AF)は,オリンパスXA以来の流行であるカプセルタイプの,AFコンパクトカメラである。あまり知られていないようだが,このように黒以外のカラーモデルが用意されている。
 しかし,このカメラを救出したくなったのは,その色が理由ではない。オプションの「ワインダー」が付属していたことである。オートロンは,小型軽量をセールスポイントにしたカメラで,巻上げがノブ式の手動になっている。専用のワインダーを装着することで,当時最新の流行であった「フルオートコンパクトカメラ」に発展するのである。AFコンパクトカメラで,ワインダーがオプションになっているものは,ほかに例がないのではないだろうか(2006年7月30日の日記を参照)。
 カメラを調べてみると,電池の液漏れの跡がある。そして,腐食した接点を磨いた跡もある。たぶん,そこまで努力しても,復活しなかったのだろう。内部の回路にも腐食があるに相違ない。それでもこれは,不動であっても収集しておきたくなったのである。

価格は,1575円。不動のコンパクトカメラとしては高いが,まあいい。ただ残念なのは,2000円以上でなければ,ポイントカードにハンコを押してもらえないのである(笑)。だから,なんでもいいから500円のものを救出しようと考えた。
 ところが,500円なんていう都合のいい価格がつけられたものが,ほとんど見あたらない。やはりこのお店の価格設定は,絶妙である(笑)。結局,価格だけで救出を決めたカメラは,これである。

コニカ「トマト」である。日本カメラショーの「カメラ総合カタログ vol.88」(1987年)によれば,女性をターゲットにした,かわいくてコンパクトで簡単なカメラとのこと。たしかに,まっ赤なボディは存在感があるし,全体に小ぶりなボディは好感度も高い。
 固定焦点でピントあわせは不要。露出調整も,フィルム感度を変えることで絞りが変わるだけの,固定露出である。しかしながら,フィルム感度は3段階に設定できる。シャッター速度は固定だが,1段くらいはあえて露出をずらしてもよいだろうし,シルエットに撮りたいときに意図的に露出不足にするようなことも可能だ。また,フラッシュ撮影時は絞りが開放になるので,都合4段階の絞りが選択できるわけである。さらに,至近距離でフラッシュ撮影をおこなうときに少し絞りこめるレバーまで用意されている。簡便なカメラのはずなのに,妙に細かな配慮がなされている。なんとも,おもしろそうなカメラなのだ。
 眺めているうちに,だんだんとお気に入りになりそうな気がしてきた。ポイントカードにハンコを押してもらうための,値段あわせのために救出しただけのはずだったのに,不思議なものである。


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