撮影日記


2009年10月15日(木) 天気:はれ

ボルタフィルムをつくる

ボルタフィルムは,裏紙のついた幅35mmのフィルムである。ボルタフィルムを使うカメラには,24mm×36mmの大きさの画像を10コマ記録するようになっているもののほか,24mm×24mmの大きさの画像を12コマ撮影するようになっているカメラがある。そしてフィルムの裏紙には,それぞれのサイズに対応した番号が印刷されている。
 「ライトパンカラー」のボルタフィルム(2009年10月12日の日記を参照)を暗室でほどいて手でさぐってみると,フィルムにパーフォレーション(フィルムを送るための穴)が開けられていることがわかり,パトローネ入り35mmフィルム(135フィルム)がそのまま利用されていることが確認できる。
 ボルタフィルムの製造や販売はすでに終了しているが,裏紙とスプールにごく一般的な35mmフィルムを巻きつければ,ボルタフィルムは簡単につくることができるのだ。暗室内で手さぐりで,フィルムの始まりの位置と終わりの位置に折り目をつけておけば,準備は完了。下の画像は,フィルムの終わりの位置に折り目をつけた状態である。

フィルムのスタート位置にあわせて,あたらしいフィルムを粘着テープでとめる。これは明るいところで作業するが,フィルムが必要以上に感光してしまわないような注意は必要である。

ここでふたたび暗室にこもり,フィルムを終わりの折り目の位置までひっぱりだしていく。そして折り目の位置でフィルムをカットする。
 終わりの折り目にカットしたフィルムをあわせて,スプールに巻き取っていく。途中でたるんだりしないように,きちんと巻きとっていけばよい。最後まで巻きとったら暗室を出て,カメラに装填すれば撮影可能となる。
 このような方法でボルタフィルムをつくり,撮影を楽しむためには,裏紙やスプールを大切に扱い,何度も再利用しなければならない。フィルムの現像は,自分でおこなうのが無難だろう。「ナニワカラーキットN」のような処理薬品のセットを使えば,そんなに難しいものではないと思う(2008年12月2日の日記を参照)。

ボルタフィルムは,ドイツの「ボルタビット」というカメラ用につくられた規格である。「ボルタビット」の広告(写真器・材料卸商の「山下友治郎商店」が扱っていたようだ)は,たとえば「アサヒカメラ1937年8月号」で見ることができる。カメラの価格は48円。「手に握れるドイツ製 世界最小型カメラ」という宣伝文句が中央にあるが,上部の「ライカフィルム使用」という文字もかなり目立っている。そのため一見するとパトローネ入り35mmフィルム(135フィルム)用カメラに思われるが,実際には専用のフィルム(この広告では「コダツクパンアトミツク(12枚撮)¥.85」と「オリエンタルS.Sパン(12枚撮)¥.70」の2種類が紹介されている)を使うカメラである。では,「ライカフィルム使用」というのは「虚偽の記載」かというと,そうでもない。専用フィルムの案内の下には,このような一文がある。

「この外一般に發賣されてゐるライカ用フヰルムを御自分でスプールに巻いてご使用になれます。」

どうやら,135フィルムの中身(と同じ規格のフィルム)を自分で巻き直して使うことは,ボルタフィルムの規格が登場した当初から想定されていた使い方のようである。また,ボルタビットの画面サイズは「1×1吋 (2.5×2.5cm)」と記されている。このサイズで12枚撮りというのが,本来の「ボルタ判」ということだな。


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