撮影日記


2009年10月07日(水) 天気:曇

ボルタ判カメラを使いたい

「ボルタフィルム」は,現在,売られていない。1990年代までは,愛光商会の「ライトパン」のラインアップに「ボルタ」も含まれていたようだが,すでに愛光商会そのものが消滅してしまっている。
 ライトパンは,一般的なフィルムよりも少し短めのフィルムとして売られていた。「ちょっとだけ撮りたい」という需要にこたえるものとのことで,短い分だけ価格も安かったようである。安いとはいえ,中身は富士フイルムそのものだったようで,品質的には問題なかったはずだ。ただ,ライトパンを使うことは,ほんとうにおトクなのかどうか,疑問である。
 まず,現像代の問題がある。写真が手もとに届くまでに必要な経費は,フィルム代のほか,フィルムの現像代と写真のプリント代が必要である。プリント代は1枚いくらなので,撮影枚数が少なければそれだけ安く済むわけだが,現像代は1本いくらである。短いからといって,必ずしも現像代が安いとはかぎらない。いわゆる「同時プリント0円」サービスが一般化したときには,フィルムはむしろ長いほうがおトクだと思われるようになってしまったことだろう。フィルムそのものも,大型量販店での安売りが一般化すれば,ライトパンの価格の安さもメリットが薄くなる。
 そもそも,ライトパンはどこのお店でも買えるような存在だったのか?
 ともあれ,ライトパンは,過去のものになってしまった。

ボルタフィルムを使うカメラは,もっぱら「おもちゃカメラ」である。ちょうど,こんなカメラを入手することができた。

おもちゃカメラとケース,フィルム2本のセットである。附属していた説明書によれば,この製品は豊橋市の大真精機(*1)という会社が製造した「ホビージュニアカメラ」(HOBBY J,HOBBY JUNIOR)である。カメラにピント調整機構はなく,固定焦点となっている。シャッター速度も1速だけの簡便なものであるが,絞りは2段階に切りかえられる。
 附属しているフィルムは,愛光商会のライトパンカラー,ボルタ判10枚撮り。フィルムの使用期限が1982年9月になっていることから,このカメラが出荷された時期は,その少し前だと考えられる。30年近く前の製品ということだ。化粧箱の窓に貼られた透明のプラスチック?は割れており,カメラの貼り革は隅がやや剥がれている。どのような状況で保管されていたのかはわからないが,決してよい状況ではなかったものと想像する。
 また,残念なことに,レンズが真っ白に曇ってしまっている。

ここまで真っ白に曇っていると,拭いたところできれいになるかどうかはわからない。また,強く拭くことによって,悪い影響が出るかもしれない。そうはいっても,真っ白なままでは使いものにならないので,ここは「ダメでもともと」と割り切って,拭いてみることにしよう。
 レンズの表面にレンズリキッドをつけ,クリーニングペーパーで拭いてみる。曇りはすっと取れた。案ずるより産むが易しである。ただ,レンズの裏側も曇っているようだ。
 さて,ここで困ったことになる。このカメラのシャッターにはB(バルブ)がない。シャッターを開きっぱなしにできないのでは,清掃がやりにくい。また,レンズはあらかじめ絞りこまれた状態になっている。シャッターが開いた瞬間に綿棒を突っこもうとしても,太い綿棒の先端が入ってくれない。細く切ったクリーニングペーパーをつまようじで押しこんでみたところ,レンズの裏側の曇はすっととれるようだが,絞りこまれた穴は狭く,レンズの周辺まで拭きとることができない。

ということは,レンズ部を分解するしかないということか。

カメラの内側から見れば,レンズ部を止めていると思われる2本のネジが見える。これを緩めても,シャッターユニットごと鏡胴部がはずれるだけで,レンズの裏側には手が届かない。表側にはネジが見えず,接着剤で組み立てられたのであれば,分解は容易ではない。これが「おもちゃ」であることを考えれば,接着剤で組み立てられている可能性も否定できない。
 ただ,こういうときにもう1つ可能性がある。それはネジが隠されていることである。この場合だと,レンズ周囲の,レンズ名等が記されてるリングがあやしい。鏡胴部に直接プリントされているようにも思われたが,細いネジを突っこんでみれば,ぺりぺりぺりっと剥がすことができた。その下にはネジが隠されており,そのネジをはずしてレンズを取りだすことができ,レンズの裏側の清掃が完了したのである。
 ただそのリングはかなり薄いもので,剥がすときにへろへろに歪んでしまったのが残念である。

*1:現在は「大真工和株式会社」 https://www.vlink.or.jp/User/B1557/007/daishin.html
東日新聞の「人に歴史あり」も参考になる。 http://www.tonichi.net/news.php?mode=view&categoryid=2&id=16489


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