撮影日記


2009年10月05日(月) 天気:曇

ボルタ判カメラがほしい

かつて,「ロシアンカメラブーム」なるものがあった。
 クラシックカメラブームの流れの1つなのだろう。ライカを模倣したフェドやゾルキー,コンタックス(CONTAXではなくContax)と同じスタイルをしたキエフなどの旧ソ連で製造されたカメラが,「本物そっくりが,本物よりはるかに安く買える」という点から注目されていた。
 フェドやゾルキーにわざわざ「Leica」という文字を刻んだ,「偽ライカ」も存在した。初期のフェドやゾルキーは,まさにライカのそっくりさんだったので,「Leica」という文字を刻んでおけば,それがライカに見えなくもない。しかし,フェドやゾルキーもそれぞれ独自の改良がくわえられていき,ライカとはまったく違ったスタイルに変化していった。そして,そのようなものにまで「Leica」という文字が刻まれた例もある。
 たとえば,このような位置にシンクロ接点が設けられたライカはない。だけど,このカメラには「Leica」と刻まれている。ご丁寧に,レンズにも「Elmar」という文字がある。

ということで,このころの状況を表現すれば,こんな感じだろうか。

此頃都ニハヤル物 キエフ ゾルキー 偽ライカ……

「ライカに似ている」もの以外の旧ソ連製のカメラも,やがて多くの人の興味の対象になっていった。そのようなカメラの1つに,LOMOの「LC-A」というカメラがある。残念ながら,私はそれをまだ入手していない。なぜLC-Aに人気が出たのかは,じつはよく知らないが,「きちんと写らないからだ」という評価を聞いたことはある。「日本のカメラのようにきちんとは写らないが,独自の味があるのだ。」のような主張だ。なお,「きちんと写らない」ことが,カメラの仕様(不良品?粗悪品?)によるものか,ユーザの使用(へたくそ?)によるものかは,わからない。
 いわゆる「ロモ」のブームに便乗するかのように,「きちんと写らない」カメラに注目する人もあらわれたようだ。その結果,いろいろな「おもちゃカメラ」「トイカメラ」もちょっとしたブームを形成した。いわゆる「ロモ」(LOMO LC-A)や多くの「トイカメラ」は,パトローネ入りの35mmフィルム(135フィルム)を使用する。そのほか,120フィルムを使用する「ホルガ」やポケットフィルム(110フィルム)を使用する「ハリネズミカメラ」(下の画像)などもよく知られている。

ということで,このような状況を表現すれば,こんな感じだろうか。

此頃都ニハヤル物 オモチャ トイカメ ロモグラフィ
ホルガ ダイアナ ポラロイド
ペーパークラフト ピンホール
俄写真家 評論家
安堵 原色 空ノ色
ワンテン咥エルハリネズミ ネガヲ入タル細ファイル
周辺減光 トンネル効果 次々生マレル新用語

「おもちゃカメラ」「トイカメラ」というものは,いわゆる「ロモ」の流行以前から存在する。かつてカメラは高価な製品であり,おとなでもなかなか買えないもの。ましてや,こどもが簡単に買ってもらえるようなものではない。だけどこどもたちは,おとなたちが大切そうに使うカメラを「カッコイイ」と思い,それにあこがれる。「おもちゃカメラ」には,そんな欲求を満たす役割が求められていたのではないだろうか。
 「おもちゃカメラ」「トイカメラ」は,簡単に使えなければならない。また,安価に提供できなければならない。また,こども向けということで,できるだけ小さいほうが親しまれるだろう。ところで,カメラの機構を簡素にするには,裏紙つきのロールフィルムを使うような仕様にするのが適している。裏紙に印刷された番号を,赤いフィルタを貼った窓で見ながら巻き上げるようにしておけば,自動巻き止めのような複雑な機構は不要になるからだ。
 1930年代に登場した「ボルタフィルム」は,裏紙のついた幅35mmのフィルムである。これを使うようにすることで,カメラを小さくでき,また機構を簡素にすることができる。
 そのようなカメラとしては,東郷堂の製品が有名だろう。1950年代のカメラ雑誌でも,広告を見かけることがある。また,中古カメラ店では「Anny」というシリーズのカメラもよく見かける。ジャンクコーナーに無造作に埋もれていることもあり,ボルタフィルムを使う伝統的な「おもちゃカメラ」を,いずれは1つくらい保護しておきたいものである。


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