撮影日記


2009年09月09日(火) 天気:晴のち曇

ミノルタの細いレンズ

一眼レフカメラの魅力の1つには,豊富な交換レンズが用意されていることがある。カメラボディとレンズをつなぐ部分はレンズマウントとよばれ,メーカーごとに,あるいはシリーズごとにそれぞれ独自の形をしている。
 一般に,マウントが異なるカメラとレンズを組み合わせて使うことはできない。一眼レフカメラを購入するときには,使いたいレンズが用意されているかどうかも,選ぶための判断基準の1つになる。そのため,豊富なレンズが用意されているボディが必然的に選ばれやすくなる。また,製品を供給するメーカーとしては,ボディを売るために豊富なレンズを用意する必要がある。買う側にとっても,売る側にとっても,レンズマウントは変わらないことが望ましいものである。

レンズマウントは,ボディとレンズをつなぐものである。そこに求められる役割は,確実に,ボディとレンズをつなぎとめることが第一だ。しかし,さらに,さまざまな情報をレンズとボディの間でやりとりする機能も求められる。たとえば露出の制御のために,ボディからは絞りを適切な位置に動かす機能が必要になるし,レンズからは絞り値などの情報をボディに伝える必要がある。カメラが多機能化すればするほど,伝達するべき情報等は増加する。
 そのような変化に対応するために,ときとして新しいレンズマウントが導入されることがある。この場合,それによる機能のアップと引き換えに,それまで使っていた製品との互換性が失われることになる。カメラに内蔵された露出計がTTL開放測光に対応するようになったころには,アサヒペンタックスのようにスクリューマウントからバヨネットマウントに変更する例が見られた。
 その後,AF化の流れのなかで,キヤノンやミノルタもマウントを変更した。

「AFシステム一眼レフの時代を切りひらいたカメラは,ミノルタα-7000である」ということに異議を唱える人はいないと思う。α-7000で新しく採用されたレンズマウントは,情報のやりとりや絞りの制御を電気信号でおこなうようになったものであり,現在のディジタル一眼レフカメラでも採用されている。
 それ以前にミノルタの一眼レフカメラが採用していたレンズマウントは,情報のやりとりや絞りの制御を機械的な連動でおこなっていた。そのレンズマウントは,1958年に発売されたミノルタで最初の35mm判一眼レフカメラであるミノルタSR-2以来,長く使われていたものである。このマウントにも,マルチモードAEなどに対応できるように,情報を伝えるピンが付加されるなどの進化があった。ただ,ボディとレンズをつなぐ部分の形は同じなので,機能面で制約はあったものの,レンズの互換性はずっと保たれていたものである。つまりミノルタの一眼レフカメラのマウントといえば,αマウントか,SRマウントか,どちらかしかないのである。スクリューマウントも含めて何種類ものマウントが存在した,マミヤやヤシカ(+京セラ)の一眼レフカメラとは大違いだ。えらいぞ,ミノルタ。たまには,少し褒めてみる。

ちなみにニコンは,最初の35mm判一眼レフカメラである1959年発売のニコンFから現在のディジタル一眼レフカメラまで,「伝統のFマウント」を使い続けている。ニコン様は,もっとえらいのである(笑)。

最初のSRマウントでは,レンズからボディに伝達される情報は,とくになにもなかったようだ。一方,ボディからはレンズに内蔵されている絞りを制御することができるようになっている。これが,自動絞りの機能である(2009年9月7日の日記を参照)。
 ミノルタSR-2と同時に交換レンズも発売されたはずだ。このとき具体的にどれだけのレンズが発売されたのかは手もとに資料等がないのでわからないが,「カメラ総合カタログ vol.1」(1960年)には,35mm広角レンズから600mm超望遠レンズまで9本のレンズが用意されていたことが記載されている。このうち,300mm F4.5が近日発売,200mm F3.5と135mm F4が新発売となっているので,最初のラインアップはさらに少なかったということだろう。
 当時としては最新の一眼レフカメラだから,自動絞り機構が大きなセールスポイントになる。SRシリーズの特徴として,「自動的に開閉する完全オートプリセット絞り」が,世界初の二層膜アクロマチックコーティングの「カラーに理想的な緑色のロッコールレンズ」とともに記載されている。ところが実際には,自動絞りではなく緑色でもないレンズも存在した。

ROKKOR-TC 135mm F4

このようなプリセット絞りのレンズが用意されている理由として想像できる理由の1つは,安価なレンズをラインアップしておくことではないだろうか。実際に,プリセット絞りのROKKOR-TC 135mm F4の価格は12800円であり,自動絞りのAUTO TELE ROKKOR-PG 135mm F2.8の30000円という価格にくらべると,大幅に安いのである(価格は「カメラ総合カタログ vol.1」による)。自動絞り機構がないだけではなく,小口径で3枚構成のレンズということも,低価格に貢献しているものと思われる。
 それにしても,細く感じられるレンズである。さまざまな連動機構がないため,けっこう互換性の高いレンズということもいえるのではないだろうか。


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