撮影日記


2009年08月08日(土) 天気:晴のち曇

レトロな風景はレトロなカメラで

大阪市電は昭和44年に全廃になった。しかし,いまでも大阪市内には,路面電車の走る街がある。大阪市内に残る路面電車は,大阪市南部の天王寺あるいは恵美須町から住吉を経て堺市内を結ぶ,阪堺電軌というものである。今日は久しぶりに青く晴れた空を見たような気がするので,これを撮りに行くことにした。古いものを撮るのだから,今日の撮影に持ち出したカメラは,クラシカルな雰囲気満点のこの1台。ツァイス・イコンのネッター(515)である。阪堺電軌には,昭和初期に製造された古い電車も残っている。とはいえ,ふだんは比較的新しい電車だけが走っているので,「古いから」といって戦前のネッターを持ち出すのは,少々おおげさといえるかもしれない。
 さすがに,全線を一日で撮ってしまえるようなものではない。大阪市内で路面を走る区間の1つに,帝塚山というところがある。どちらかというと高級住宅街として知られる街だ。今日はそのあたりをうろうろしてみようかと考えた。

姫松で市バスを降りれば,目の前に軌道がある。軌道に沿って,まずは北へ歩いていく。姫松の隣の停留所は,北畠。このあたりは南北朝時代に北畠顕家が戦った場所とされ,少し東にある北畠公園には北畠顕家の墓とされるものがあり,西側の阿倍野神社では北畠顕家を祀っている。ただし,実際に北畠顕家が討ち死にした場所は,堺市内だということになっており,北畠顕家の墓とされるものは,ずっと後の時代に建てられたものとのこと。
 阪堺電軌は,南北に延びる道路の完全な中央を走っておらず,やや西側に寄っている。そのため北に進むときの車道はかなり狭い。また,停留所には安全地帯が設けられているが,その部分はさらに狭くなる。自動車が通り抜けにくい道路になっているため,自動車の通行は少ない。
 この界隈は高級住宅地といわれるだけあって,大きな家が目につく。同時に,かなりクラシカルな雰囲気のあるアパートもあり,静かで落ち着いた雰囲気のある一帯になっている。

北畠の停留所からさらに北へ進むと,電車は道路を離れて専用軌道になる。今日はここから南へ,住吉を目ざして歩いていくことにしよう。

ZEISS IKON NETTAR, Nettar-Anastigmat 7.5cm F6.3, REALA

北畠の次の停留所は姫松。ここで幹線道路の1つである南港通りと交わる。南港通りよりさらに南へ歩く。電車通りからではわからないが,帝塚山三丁目の停留所の東側には,万代池という大きな池のある,万代池公園がある。ここも涼しげで気持ちのよい場所だ。

ZEISS IKON NETTAR, Nettar-Anastigmat 7.5cm F6.3, REALA

帝塚山四丁目停留所から,ふたたび道路を離れて専用軌道に入る。そして土手をのぼっていき,南海高野線を越える。その登りきったところにある停留所が,神ノ木である。

ZEISS IKON NETTAR, Nettar-Anastigmat 7.5cm F6.3, REALA

このネッターのシャッター速度は,1/25秒,1/50秒,1/100秒の3段階のみ。1/100秒では,専用軌道をかなり速く走っている電車をきちんと写し止められないようである。

神ノ木からくだっていけば,住吉の停留所に至る。
 フィルムが尽きたので,今日の撮影はここまで。写真を撮りたい場所はいろいろあったので,あらためてフィルムを十分に用意して,撮影に行ってみようと思う。
 このあと,恵美須町行きの電車に乗ろうと思うが,ちょうど目の前で発車してしまった。次の電車まで10分少々待たねばならない。停留所のそばにある狭い待合所に入って,次の電車を待つ。待合所に,ご高齢の女性が入ってこられた。私のそばに座ると,「あ,こんなところに時計がある。」と言う。なるほど,電車の待合所に時計があるとは,たいへんありがたい。しかし,よく見ると,文字盤を覆うガラスがない。はたしてこの時計は,動いているのだろうか?携帯電話機を取り出して時刻を確認すると,たしかにこの時計はだいたいあっている。ガラスがないのは,壊れているのではなく,壊されないためにはずしてあると考えるのがよさそうだ。
 この交差点は,電車が撮りやすそうな場所である。目の前で,いかにも「電車を撮っています」という人がうろちょろしていた(ちょうど,柱の陰に隠れた状態になっている)。鉄な人,乙!ということで。

画像は携帯電話機のディジタルカメラ機能による。

← 前のページ もくじ 次のページ →