撮影日記


2009年07月23日(木) 天気:はれ

減光フィルタを準備する

昨日の日記の続き。

昨日は,広島でもかなり規模の大きな部分日食を見ることができた。
 じつは,日食という現象はそんなにめずらしいものではない。少なくとも1年に2回は,地球上のどこかで見られる現象である。しかし,1回の日食を見られる地域は非常に限定的である。その結果,日食を追い求めて世界中を移動するようなことをしないかぎり,やはりめったに見られない現象なのである。
 昨日の日食は,日本国内で46年ぶりに皆既日食を見ることのできるものであった。残念ながら広島で見られるのは,最大で太陽の直径の約86%が欠ける部分日食であり,皆既日食ではない。それでも,広島でこれだけ大きく欠ける日食が見られるのは51年ぶりとのことである。これは,ぜひとも広島で撮っておかねばならない。

4年半前のこと,1000mmの超望遠レンズ(SIGMA MIRROR TELEPHOTO 1000mm F13.5)をいただいたことがある(2005年1月16日の日記を参照)。反射光学系のもので1000mmという焦点距離のわりにはコンパクトなレンズであるが,F13.5というたいへん暗いレンズである。特殊なレンズでもあり,使いあぐねていたものであるが,あるとき,「1000mmレンズをもっているなら太陽を撮れ。」という助言をいただいた。ためしに夕陽を撮ってみると具合がいい(2005年2月27日の日記を参照)。
 そうだ,日食撮影こそ,1000mmレンズの活躍の場になり得るのだ。

太陽を撮るために必要なものがある。それは,強烈な太陽の光を減光するためのフィルタである。夕陽の撮影であれば,太陽の位置は低く,大気の影響でかなり減光されるので,フィルタがなくてもなんとか写すことは可能である。しかし,今回の日食は,お昼前に起こるもの。太陽の位置は高く,また,たいへん明るい状態である。したがって,なんらかの減光をおこなわねば,完全に露出オーバーになってしまう。
 太陽の位置が高く,非常に明るということの問題は,適正露出が得られないというだけではない。
 適切に減光しなければ,明るすぎてファインダーを覗くこともできない。ピントをあわせられないのみならず,そもそもファインダーにうまく太陽の像を導き入れることすらかなわない。それどころか,強烈な光で眼を傷めてしまう危険性すらある。

このような用途のフィルタとして,ND400というものがある。このフィルタは,光量を1/400(9絞り)に落とすことができるものだ。まさに,太陽撮影の必需品といえそうなものである。
 しかし,使う予定の1000mmレンズのフィルタ径は,82mmである。そのような大口径のND400は,メーカー希望小売価格が5,500円もするのだ(*1)。この1000mmレンズは,レンズマウントに近い部分に小口径のフィルタを装着できるしくみにもなっているが,ここの口径は30.5mmという特殊なサイズであり,82mm径のものよりも入手が難しそうである。また,太陽の強烈な光をさえぎるには,レンズよりも前にフィルタをかけるほうがよい。その理由は,虫眼鏡で太陽光を1点に集め,紙を燃やしたことがある人ならば,言わなくてもわかるだろう。

82mm径のフィルタをジャンクコーナーなどから安価に発掘できれば,「すすガラス」をつくる(1997年3月9日の日記を参照)ことも可能になるが,そう都合よくはみつからない。そこで,20年以上前に使用期限の切れている,5×7判のネオパンSSを使うことにした。これを真っ黒に露光して現像,定着したものを,フィルタとして利用することにしたのである。
 カラーフィルムがおもに「色素」によって黒っぽくなっているのに対し,モノクロフィルムはおもに「銀」の粒子によって黒っぽくなっている。古いタイプのモノクロフィルムほど,「銀」がたっぷり使われているだろう。ネオパンSSは,好都合であると考えられる。

これをレンズの前面に貼りつければ,撮影準備完了である。

なお,太陽を肉眼で観察するためには,このような「日食メガネ」というものが市販されている(*2)。眼の部分に特殊なフィルタが使われており,可視光線だけではなく,紫外線も十分にカットしているとのこと。これを使って太陽を眺めれば,眼を傷める心配が少なくなるというものだ。この「日食メガネ」は肉眼での観察専用のものであり,「日食メガネ」をかけているからといって,太陽を望遠鏡や双眼鏡などで覗いてはいけない。そのあたりの使い方については,説明書をよく読むべし。また,日食の観察方法について,国立天文台のウェブページ(*3)も参考になる。

*1 http://www.kenko-tokina.co.jp/imaging/filter/4961607152263.html

*2 http://www.vixen.co.jp/se/solarprotec.htm

*3 http://www.nao.ac.jp/phenomena/20090722/obs.html


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