撮影日記


2009年05月14日(水) 天気:はれ

やっぱりフジカ

いまや世の中に流通する,「カメラ」と名前のつく製品の大半は,ディジタルカメラと称する消耗電気製品である。フィルムという感光性のある物質に,(その動作が機械的なしくみで制御されていようと,電気回路で制御されていようと)機械的な作用で光を当てることで像を記録する「カメラ」は,ごく少ないものになってしまった。
 とくに,「コンパクトカメラ」とよばれる,小型軽量で自動化されて操作が簡単なタイプのカメラは,とても少なくなっている。日本のブランドで生産が継続しているのは,富士フイルムの製品くらいのようで,今日現在,クラッセ(KLASSE S, KLASSE W, KLASSE W BLACK),ナチュラ(NATURA CLASSICA)という高級・高性能タイプのものと,クリアショット(CLEAR SHOT M)という簡便なタイプのものが,いまだ「生産完了品」などの記号がつけられずにラインアップされている(*1)。
 コンパクトカメラの最後の砦,と言いたくなるような状況になっているのだ。

個人的には,コンパクトカメラ市場における「フジ」というブランドに対して,決して最先端を走らず,少し遅れながらも完成度の高いものを出してくる,という印象をもっている。
 たとえばカメラにフラッシュを内蔵させた「フラッシュフジカ」の登場は1976年であり,1975年のコニカ(Konica C35EF,ピッカリコニカ)に先を越されている。ちなみにコニカに次いで2番目に登場したフラッシュ内蔵カメラは,ヤシカ(Yashica 35MF)とのこと。
 キヤノンが1979年に「ピントも自動,巻き上げも自動」の初代オートボーイ(AF35M)を発売した後の1980年には,巻き上げは自動(電動)だがピント調整は目測(ゾーンフォーカス)式の「フジカオート5」を発売しており,さらにAF機構も加えた「フジカオート7」が発売されるのは,さらにその翌年の1981年となる。

「フジカオート7」には,「全自動フジカ」という愛称名も用意され。その名称が示すように,「7つの自動化」を実現したと称している。その7項目は,「フジカオート5」で実現していた,「フィルム自動装填」「自動巻き上げ」「自動巻き戻し」「自動露出」「フィルム感度自動セット」(富士フイルム独自の規格であり,DXコードとは異なる)の5項目に加えて,「自動焦点(AF)」と「自動フラッシュマチック」になる。
 なお,「フジカオート5」の「自動巻き戻し」は,フィルムの終りに達したら自動的に巻き戻しがはじまるものではなく,ただの「電動巻き戻し」と言うべきもの(オートリワインド)だったが,「フジカオート7」では自動的に巻き戻される(オートリターン)ように改良されている。セールスポイントになる「自動化」の内容は,必ずしも「フジカオート7」ではじめて実現された機構というわけではない。ただ,それ以前のカメラにくらべればどことなく使いやすく感じられるし,そのスタイルも,いかにも「カメラらしい」よいデザインになっていると思う。このあたりが「完成度が高い」という印象をもつことにつながるのであろうか。

FUJICA AUTO-7, FUJINON LENS 38mm F2.8, DNP CENTURIA 100

搭載されたレンズは38mm F2.8という,この当時のコンパクトカメラとしてはごくごくオーソドックスなもの。無理のない設計のレンズであろうし,AFの精度もあまり悪くないようで,四隅の像があやしくなるような印象は受けない。Carl Zeiss Tessar T*を搭載した京セラTDよりも,無難な結果が得られると言えそうである。

FUJICA AUTO-7, FUJINON LENS 38mm F2.8, DNP CENTURIA 100

少し惜しいなと思われるのは,測距結果を表示するフォーカスのインジケータである。
 シャッターレリーズボタンの半押しで「ピッ」と音がし,フォーカスロックされるが,このときはまだインジケータは動作しない。シャッターレリーズボタンをさらに押しこんで,シャッターが切れるときにはじめて,インジケータが動作する。レンズ鏡銅部の上に測距結果が表示されるようになっているので,見やすい位置にあるとも言えるが,やはりこれはファインダー内で確認できなければ使い勝手が悪い。また,シャッターレリーズ後にシャッターレリーズボタンから指を離してしまうと,その測距結果がリセットされてしまうので,あとからピントはどうだっただろう?と確認しようと思っても,時すでに遅しなのである。
 そもそもこれは,シャッターレリーズ前に確認したい情報である。
 もっとも,初心者層が気軽に使うためには,撮影中に余計な情報は表示しない方がいいのかもしれない。そして,ある程度わかっている人のために,少々不便だが情報を提供するように,そんな感じでユーザインタフェースが考えられているのであろうか。

電源は単3乾電池2本であり,個人的にはリチウム電池を使う京セラTDよりも,フジカオート7の方が,ずっといいカメラに感じられるのであった。

なお,この「フジカオート7」の入手の経緯については,(2007年5月27日の日記)を参照。

*1 http://fujifilm.jp/personal/filmcamera/35mm/


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