撮影日記


2009年05月13日(水) 天気:はれ

これもテッサー

PENTAX ESPIO928の入手をきっかけに,しばらく使っていなかったコンパクトカメラを試してみたくなった。KYOCERA TDも,そんなカメラの1つである。

京セラ「TD」最大の特徴は,カール・ツァイスT*(ティースター)の名前をもつレンズを搭載していることである。カメラの名称に含まれる「T」は,搭載されたレンズ「テッサー」をあらわす「T」であろう。
 Carl Zeiss T*レンズ群を用意したCONTAX一眼レフカメラのシステムは,ドイツのカール・ツァイス財団と日本のヤシカとが開発したものであることは,よく知られていることであろう。ヤシカは,システム一眼レフカメラだけでなく,フルオートコンパクトカメラにも,Carl Zeiss Tessar T*レンズを搭載した商品Yashica T AFを用意した。この「T」は,テッサーのTであることは言うまでもないだろう。
 ヤシカはその後,京セラに吸収される。そして,あらたにKYOCERAのブランドでもCarl Zeiss Tessar T*レンズを搭載したカメラを発売された。それがこの,KYOCERA TDである。

KYOCERA TDは,実にシンプルなカメラである。
 電源のオン/オフのほかには,シャッターレリーズ,セルフタイマー,フラッシュの強制発光/発行禁止のスイッチがあるだけ。レンズはバリアに覆われているが,露光の瞬間だけバリアが開いて自動的に閉じるようになっているので,バリアを開閉するためのレバーのようなものもない。まさしく「押すだけ」で写る,シンプルなカメラである。
 機能をシンプルにすることで,レンズの高性能さが目立つようになると考えたのであろうか。
 ボディは,当時の一般的なフルオートコンパクトカメラと大差ない,今となっては大柄なものである。ただ,レンズ部の出っ張りが気にならず,カバン等への収まり具合はよく,携帯が苦にならない。ファインダーまわりの直線的なカバーやシルバーのボディなどは,このカメラが精密機械であるかのような印象を強く与えてくれる。レンズの高性能さをセールスポイントにするならば,このようなデザインは適切なものと考えられる。

KYOCERA TD, Tessar 35mm F3.5, DNP CENTURIA 100

実際に撮影してみると,周辺減光はかなり目立ち,四隅の描写はややあやしい。しかしながら,四隅のごく一部分を除けば,緻密な描写を見せてくれる。35mm F3.5という,明るさにも無理のない単焦点レンズであれば,これくらいはがんばってほしいものである。

KYOCERA TD, Tessar 35mm F3.5, DNP CENTURIA 100

KYOCERA TDのピント調整は,コンパクトカメラとしては一般的な,アクティブAF方式である。AFコンパクトカメラでは,合焦したかどうかを示すインジケータがあるだけで,どれくらいの距離にピントをあわせてくれたのかがわからない機種も多いが,KYOCERA TDでは,ファインダー内におおよそどれくらいの距離にピントを合わせたかが表示される。
 そのインジケータは,ゾーンフォーカスのピクトグラムのようなものになっているので,ファインダー内を注意深く見ながら撮影すれば,極端なピンボケは防止できるはずである。ところが,フィルム1本撮りきったなかに,ピンボケになっているものが数コマ見られた。被写体までの距離が,最短撮影距離に近いような場合は,ある程度やむを得ないかとも思う。しかし,被写体まで10m以上離れたような場合にでも,ピントが正しく合っていないケースがある。
 KYOCERA TDのAFの精度は,ごく平凡なものか,あるいはあまりよくないものなのかもしれない。もちろん多くの場合,ピントはだいたい合っているから,そんなに大きな問題ではないのかもしれないが。

KYOCERA TD, Tessar 35mm F3.5, DNP CENTURIA 100

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