撮影日記


2009年03月14日(土) 天気:雨のち曇 風強し

群馬県の地面を踏みしめる

13日,14日と,2日間にわたっての東京での用事は,夕方に無事に終わった。そして明日は休日である。この休日を利用して,行ったことがないところを訪れてみようと思う。そこで,新宿発新潟行の夜行列車「快速ムーンライトえちご」に乗って,まだ「列車で通過したこと」しかない新潟県内を歩きに行くことにした。
 夜行列車に乗る前には,ぜひ,お風呂に入っておきたい。
 WWWで調べてみると,高崎駅の近くにはふつうの銭湯がたくさんあるらしいことがわかった。高崎で銭湯を利用するなら,渡良瀬遊水地でちょっとかすめたことしかない群馬県内(2009年2月25日の日記を参照)も,十分に歩くことができる。検索してみつかったウェブページによれば,高崎駅からそう遠くないところにある「江木橋湯」というところが23時まで営業しているらしい。「快速ムーンライトえちご」が高崎駅を発車するのが1:13なので,お風呂上りに軽くなにかを食べることを予定しておけば,時間の面でもちょうどよさそうだ。

上野駅を20時ころに発車する高崎線の電車に乗り,高崎駅に着いたのは22時ころ。
 もう少し早く着こうと思っていたのだが,遅くなってしまったのは,新宿や八重洲の「カメラのきむら」をのんびりと覗いたのが主たる原因。八重洲の「カメラのきむら」にあった,9,800円のNikon F4をどうしようか迷ったものの,結局,購入を見送ったわけで,結果としては時間の無駄に終わってしまった。もちろん,9,800円という価格にはそれなりの理由があり,ファインダー内の液晶表示にトラブルを抱えていたのである。そうはいっても,ニコンF一桁様。動きは歯切れよく,ファインダーの見え具合も快適。やはりお迎えしておくべきだっただろうか?
 ともあれ,「江木橋湯」は高崎駅からそう遠くない場所にある。ところが,WWW上で見かけた地図をプリントアウトしておくのを忘れてしまった。ただ,記憶していた方角だけを頼りに街を歩く。高崎の市街,とくに「江木橋湯」がある東口側は,思ったよりも暗い。まあ暗いからこそ,営業中の銭湯があれば,そこが明るくて見つかりやすいだろう。
 このあたりかな?と思うところで,大きな通りをそれて右に曲がる。道の両側には,すでに営業時間を過ぎてしまったようで,暗く静まり返るお店がぽつりぽつり。そんな道の先に小さく光る看板を見つけ,近づいてみると,そこが目的地「江木橋湯」であった。

声はすれども姿は見えず。
 いや,声などなにも聞こえない。たまに通り過ぎる自動車の音しか聞こえない。
 今ここに,「江木橋湯」の看板は輝いているのだが,その看板に描かれた矢印の先には,まったく明かりの見えない民家らしき建物があるだけ。その先には,広い空地?いや,駐車場か?そんな空間がある。そうだ,ここは高崎。群馬県。東京の都心部じゃないから,銭湯にはきっと十分な広さの駐車場があるのだろう。この空地の先に,入口があるんじゃないか?
 しかし,その先には無限とも思える暗闇が広がるのみ。
 先ほどの看板のところに戻ってみた。そして,矢印が示す方に,あらためて目を凝らしてみた。
 まっ暗な,民家だと思っていた建物の玄関脇になにやら看板らしきものがある。
 そこには,こう書かれていた。

営業時間 午後4時〜午後9時

すでに,営業終了時刻から1時間以上が経過していたわけだ。
 たしか,「江木橋湯」のことを紹介していたウェブページは,「江木橋湯」の公式サイトのようなものではなく,「利用したことがある人」のレポートのようなものだった。また,その日付が決してごく最近のものでもなかったように記憶している。
 そうはいっても,ねえ。
 「営業をやめてしまいました」であれば,まだあきらめがつくものの,「営業時間が変わっていました」では,あまりに無念である。

お風呂に入ることができない,となると,意地でもお風呂に入りたくなる。
 高崎駅の周辺をうろうろと歩き回るが,それらしきものを見つけることができない。幸いだったのは,今朝はかなり荒れた天気だったのが,いまはすっかり落ち着いていること。
 時計の針が,午前0時を過ぎた。
 「青春18きっぷ」に「3月15日」の日付を押してもらい,改札を通って,ホームの待合室でおとなしく「快速ムーンライトえちご」が来るのを待つことにした。

夜行列車を待つ。
 このことには,独特の雰囲気がある。
 昼間の旅とは違った,異世界へ向かう期待とでも言うべきだろうか。
 待合室には,夜行列車を待つ人や最終列車を待つ人の姿がある。その人の荷物を見ると,だいたい見当がつく。夜行列車に乗ろうとしている人は,最終列車に乗ろうとしている人にくらべて,荷物が多い(笑)。
 高崎駅では,最終列車の前後に,あわせて3本の夜行列車がやってくる。全国的に夜行列車が少なくなっているなかでは,貴重なシーンになってしまったと言えるのではないだろうか。0:31の金沢行き「特急 北陸」,1:06の金沢行き「急行 能登」,そして1:13の新潟行「快速 ムーンライトえちご」。


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