撮影日記


2009年03月02日(月) 天気:晴のち曇

はじめてのトプコン

カメラ・写真界における伝統的ブランドであった「コニカ」と「ミノルタ」。それを継承してきたコニカミノルタが,カメラ・写真事業からの完全な撤退を表明したのは,もう3年も前のことである(2006年1月19日の日記を参照)。
 時代の流れのなかで,「コニカ」や「ミノルタ」というメジャーなブランドさえも消えてしまった。いわんや,比較的マイナーなブランドで,消えてしまった例は数えきれないだろう。
 カメラ・写真事業からの撤退と企業としての消滅がほぼ同じようなことを意味する「ミランダ」のような例もあれば,カメラ・写真事業からは撤退しても,ほかの事業で継続している「コーワ」もある。ちなみに,「ミランダ」は1976年まで,「コーワ」は1978年まで,日本カメラショーの「カメラ総合カタログ」に製品が掲載されていた。

1980年を最後に日本カメラショーの「カメラ総合カタログ」から姿を消したブランドに,「トプコン」がある。
 「トプコン」を製造・販売していた東京光学機械株式会社(現・株式会社トプコン)は,1932年に創業している。おもに陸軍向けの光学機器を製造していたが,第二次世界大戦後には,民需用の測量機や医療機器,さらにカメラなどの製造をおこなうようになったとのことだ(*1)。ニコンが,おもに海軍向けの光学機器の製造によって高い技術力をもつようになったと言われているように,トプコンもかなりの技術力をもっていたものと思われる。
 トプコンのカメラとしては,35mm判一眼レフカメラである「TOPCON RE Super」がもっとも有名だろう。1963年3月に販売が開始されたこのカメラは,「PENTAX SP」に先駆けて,TTL露出計を内蔵して販売されたはじめての一眼レフカメラとして知られている(試作品の発表は,ペンタックスの方が先だった)。
 「TOPCON RE Super」は,そのメカニズムも注目されたが,各種のトプコールレンズの性能も,大いに注目されていたとのことである。

そんな「トプコン」ブランドが,「ニコン」や「キヤノン」にしだいに差を広げられていき,早々にカメラ事業から撤退したことについては,さまざまな見方があるだろう。「丈夫さ」や「高画質レンズ」についての神話が生まれた,「ニコン」のようなツキがなかったという見方もあるようだ。生産や販売の面で,「キヤノン」のような力がなかったという見方もあるようだ。
 ただ,いまでもトプコンのカメラを愛用し語る人が少なくないことや,2003年にはコシナから「トプコール」の名前をもつレンズが発売されたことなどからは,「トプコン」のブランドには一定の高い評価や信頼がともなっていることが言えるのではないだろうか。

そんな重要な位置づけにある「トプコン」のカメラやレンズを,私はまだ入手していなかった。
 しかし,いつかは入手して,体験しておきたく思っていた。
 REシリーズの一眼レフカメラは,最近,中古カメラ店等であまり見かけなくなったように思う。また,よく見かけていたころは,ちょっと高いなあと感じられる価格で取り引きされていた。だからむしろ,トプコンホースマン用のレンズなどで,トプコンを体験することになるんじゃないかな,ただ漠然と思っていた。
 だから,まさかこんなカメラで,はじめてのトプコンを体験することになるとは,まったく想像もしていなかったのである。

レンズシャッター式一眼レフカメラの,「トプコン・ユニ(TOPCON uni)」である。
 レンズシャッター式一眼レフカメラは,1960年前後にちょっとしたブームになっていたようだ。
 トプコンのレンズシャッター式一眼レフカメラは,1959年の「TOPCON PR」からはじまる。「TOPCON RE Super」と同じ1963年には,外光式露出計だが自動露出機構をもち,さらにレンズ交換が可能な「TOPCON Wink Mirror S」が発売された。
 「TOPCON uni」はその翌年,1964年に発売された。「TOPCON Wink Mirror S」と同じマウントによるレンズ交換機能を継承し,さらに露出計がTTL開放測光式にあらためられた。すなわち,これがはじめての「TTL-AE一眼レフカメラ」となったのである。

この「TOPCON uni」は,ジャンク扱いで入手した。
 レンズシャッター式一眼レフカメラなので,まずシャッターが閉じ,ついでミラーが完全にあがってから,シャッターの開閉がおこなわれるようになっている。
 このミラーが上昇する機構が少々粘っているようで,シャッターレリーズボタンを押してから,シャッターが動作するまでに相当な時間がかかる。ただ,何回か動かしてやると,スムースに動作しはじめる(しばらく放置しておくと,また動きが粘ってしまうのだが)。シャッターや絞りそのものは,ほぼ正常に動いているようなので,しばらくはこの状態のままつきあってみようと思う。

ただ,残念ながら,露出計は動作していないようだ。
 「TOPCON uni」は,初のTTL-AE一眼レフカメラなのだから,その歴史的意義を感じるためには,自動露出機構を楽しんでみたいものである。
 まあ,入手価格が800円では,そこまで要求するわけにもいくまい。

*1 http://www.topcon.co.jp/corporate/history.html


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