撮影日記


2009年02月28日(土) 天気:晴

10倍ズームの時代

今日の「八王子よみがえりの水」は,空いていた。昨年は,環境省による「平成の名水百選」に認定されたせいか,水を汲みに行っても混雑していることが多かったのだが,今日は,空いていた。個人的には,ありがたいことである。

その帰路,いつものように「カメラのキタムラ可部店」に立ち寄った。ここの中古カメラコーナーやジャンクコーナーには,数は少ないものの,「おもしろい」ものと出会える可能性が高いと感じるためである。
 今日,出会ったものは,タムロンの高倍率ズームレンズ「AF 28-300mm F3.8-6.3 LD Aspherical IF (185D)」。前玉のオモテとウラにそれぞれ,小さなカビが見えるジャンク品であるが,動作に問題はなさそうなものだ。マウントは,ミノルタα。以前なら,使い道がないということで見送ったであろうが,今はミノルタαのボディも何台か集まっているので,躊躇なく手を出すことができる。
 タムロン185Dの発売は,1999年である(*1)。そう,ライカ判カメラにおいて,10倍ズームレンズが当たり前の存在になってから,もう10年になろうとしているのである。

「高倍率ズームレンズ」というカテゴリが認知されるようになったのは,1982年にトキナーから「35mm-200mm F3.5-F4.5」が発売されたときだと思う(2007年5月11日の日記も参照)。その後,焦点距離が広角域に広がり,28mmから200mmまでをカバーするようなレンズも登場した。さらに,1992年のタムロン「AF 28-200mm F3.8-5.6 Aspherical」(*2)は,7.1倍という高倍率ズームレンズにもかかわらず,非常にコンパクトなレンズになったことで注目を集める。常用できる高倍率ズームレンズが確立した瞬間と言えるだろう。
 このレンズは,さらにLDレンズ(低分散ガラスを使ったレンズ)を採用して画質の向上をめざしたり,IF(中央付近のレンズ群を移動させてピントを合わせるようにする)方式を採用して操作性の向上をめざしたりしながら,モデルチェンジを重ねる。
 そして,1999年に,ついにズームレンズは10倍の時代に入ったのである。

連続的に焦点距離を変えられるレンズとして,「ズームレンズ」のほかに「バリフォーカルレンズ」と呼ばれるものがあった。具体的には,コニカ「Vari Focal Hexanon AR 35mm-100mm F2.8」というものがある(2007年4月28日の日記を参照)。
 「バリフォーカルレンズ」という名称は,焦点距離を変えられるレンズをあらわしている。そう考えれば,「ズームレンズ」も「バリフォーカルレンズ」の一種と言えるかもしれない。ただ「ズームレンズ」と「バリフォーカルレンズ」の違いとして,焦点距離を変化させたときにピントの位置がずれないものを「ズームレンズ」と呼び,焦点距離を変化させるたびにピントを合わせなおす必要があるものを「バリフォーカルレンズ」と呼んでいたようである。
 そのため,かつてのズームレンズの使い方として,「広角側で使うときも,ピントは望遠側にして合わせるとよい」という説明がなされていたことがある。単焦点レンズにくらべて暗く,解像力が劣るズームレンズでは,どうしてもピントの山がつかみにくい。使うときには,そのような工夫が必要だったのだろう。
 ところが,最近の「ズームレンズ」は,かつての「バリフォーカルレンズ」のようになっているようだ。望遠側でピントを合わせても,広角側にすると明らかにピントが合っていなかったりする。そんなレンズは,無限遠が「浮いている」からすぐにわかるだろう。レンズをめいっぱい遠距離側に回すと,無限遠の位置を通り越してしまうのである。
 「そこそこの精度は出してやるから,AFを信用しろ。」ということかもしれない。ということは,AFカメラとAFズームレンズの組み合わせで,MFで使用するというのは,無謀なことになるのだろうか。

タムロン185Dも,もちろん無限遠が浮いている。
 また,最短撮影距離も,焦点距離によって異なっている。もっとも被写体に近づけるのは焦点距離が200mm付近で,そのときの距離は0.61mとのこと。広角28mmのときに,1.26mまでしか近づけないのが残念だ。広角のときこそ,被写体にぐぐっと迫りたいものである。

とはいえ,28mmから300mmをカバーするズームレンズが,こんなにコンパクトになっているのは驚くべきことであった。ミノルタα-8700iにつけてみると,いい感じである。
 これだけのスペックでありながら,メーカー希望小売価格は75000円にすぎない(しかもジャンク品だから,メーカー希望小売価格のおよそ99%引きで購入している)。だから,画質については,過剰な期待は禁物であろう。しかし,どれくらい「使える」ものか,試しに撮ってみたいものである。

あ,その前に分解して,カビ取りをしなければ。

まず,正面にあるリングを取ることにする。これはネジこまれていることが多く,いわゆるカニ目回しがあると便利なところだ。カニ目回しで回すためには,それをひっかける穴が2つ必要であるが,このレンズにはそれらしき穴が1つしかない。
 これでどうやって,リングを回せばよいのだろうか?
 穴にドライバを差しこんでみると,リングがへらへらっと浮く気配を見せた。まさかと思い,ちょっと力を入れると,リングは簡単にはずれたのである。
 ただ,はめこまれているだけなのである。
 そして,ネジを3本はずせば,前玉は簡単に取り出せて,掃除ができるのである。

分解しやすいのはありがたいが,こんなにちゃちな作りでいいのか?と,少し疑問を感じたのであった。

*1 http://www.tamron.co.jp/data/af-lens/185d.htm

*2 http://www.tamron.co.jp/data/af-lens/71d.htm


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