撮影日記


2009年02月13日(金) 天気:晴のち雨

寝台列車は遠い過去

3月14日に,東京に出張に行くことになった。
 早朝の新幹線に乗るのは,少々面倒だ。前日に最終便近くの新幹線に乗って東京で1泊するのも,少々せわしない。
 こんなときは,寝台特急で,本でも読みながら,うだうだごろごろと行きたいものである。
 いま,広島から東京へ直通する寝台特急列車は,「富士/はやぶさ」ただ1本である。
 用事が3月14日だから,3月13日の夜に発車する寝台券を買えばよいのだが,残念なことに満席である。

3月14日というと,世間ではいわゆるホワイトデーであるが,同時に,東京と九州方面を結ぶ寝台特急列車がなくなる日でもある。
 かつて,寝台特急列車はたくさん運転されていた。しかし少しずつその数は減っていき,一昨年は,大阪と九州を結ぶ寝台特急列車がすべて廃止された。昨年は,東京と大阪を結ぶ寝台急行列車「銀河」が廃止された。
 現在,広島から東京まで行くことができる寝台特急列車は,東京と熊本を結ぶ「はやぶさ」と東京と大分を結ぶ「富士」だけが運転されている状態だ。それも,東京と門司の間は1つの列車として運転されているのだから,まさに「最後の1本」なのである。

3月14日で「なくなる」というのは,最後の列車が3月13日の夜に発車する,ということを意味している。JRの寝台券や指定券は,「1ヵ月前」の午前10時からの発売となる。つまり,今日,最後の「富士」「はやぶさ」の寝台券が発売されたということだ。そして,報道によれば,発売開始から10秒で売り切れたという。
 すごい。すごすぎる。
 寝台列車は,定員が決して多くはないものの,それでも上下あわせて数100人規模のものとなる。それだけの切符を10秒できちんと処理できた。恐るべしコンピュータの能力。オンライン処理ができなかったころは,1枚の指定券を発券するのに分単位の時間がかかったというのだから,まさに恐るべしである。

すごいのは,コンピュータの能力だけではない。
 そこに群がる人たちの行動力も,すごいものがある。
 たしかにこれは,東京から九州方面に向かう寝台特急を利用する最後の機会であるから,「乗っておきたい」という気持ちになるのも理解できないわけではない。
 でもそれならば,どうして廃止の話が出る前に乗っておかなかったのか?と,声を大にして問いたい。問い詰めたい。とくに,これまでまったく乗ったことがなかった人には,小一時間問い詰めたい。「ふだんから乗らない」から,廃止になるんじゃないか!それを最後になってどかどかどかっとやってきて大騒ぎするのはいかがなものか。
 挙句の果てには,これまでにまったくお世話になったこともないヤツまでいっしょになって「長い間ありがとう」とかなんとかほざきやがることだろう。笑止。おかしさを越えて,哀れみすら感じる。

「リバイバルトレイン」で大騒ぎするのとは,わけがちがう。「リバイバルトレイン」は,あくまでも「お祭り」なのだ。「お祭り」だから,(迷惑にならない範囲で)目いっぱい盛り上がらなければならない。一方,(列車等の)廃止という事件は,盛り上がるために設定された「お祭り」なんかではない。
 だからこそ,「葬式」と揶揄されることもあるのだろう。

などと「寝台券を取れない」ことについての文句を並べてみたが,じつは今回については,ハナから「富士/はやぶさ」を利用するつもりはなかった(^_^; というのは,「富士/はやぶさ」では,東京着の時刻が少し遅いのである。3月14日の用事は10時から。もちろん場所は,東京駅の至近ではない。だから,今回は「富士/はやぶさ」では間に合わない。「使えない」のである。
 ただ「寝ているうちに移動できる」というのは,とても便利なものだ。だからたとえば仕事が「午後から」という場合には,これまでに何度も利用したものである。

さて,報道等では,「富士/はやぶさ」が廃止される理由として,そもそも寝台列車の利用者が減っていることが指摘されている。そして,利用者が少ない理由として「割高」であることが指摘されている。
 たしかに,寝台料金と特急料金を合わせた金額は,新幹線の特急料金よりも高くなる。それでいて,寝台列車で確保される空間の多くは,カーテンで仕切られるだけでカギもかけられない。「高い」という理由で敬遠されるのもやむを得ないものがあるだろう。もちろん,カギのかかる個室が提供されている寝台列車もあるが,その数はごく少なかったり,通常の寝台よりもさらに高い料金が設定されていたりする。
 しかし,それくらいの価格設定でなければ,寝台列車というものは維持できないものだったのだろうか。集客努力の1つとして,なんらかの値下げはできなかったものかと疑問が残る。
 以前であれば,広島から東京へ往復するための「SSS(スリーエス)きっぷ」というものがあった。片道は新幹線のグリーン車,片道はB寝台車という選択が可能で,通常の新幹線の指定席と大差ない値段だったので,よく利用したものだ。しかし,「のぞみ」が設定されたころに,「SSSきっぷ」は廃止になった。
 また,高齢者を対象とした割引制度「ジパング倶楽部」でも,寝台料金は割引対象外になっている。お金と時間に余裕がある高齢者層であれば,少し割引することで,寝台列車の「お得意さん」になってくれた可能性もあったはず。
 つまりは,そんなに安くすると「足が出る」という状況になったのかもしれない。あるいは,そうまでして「客を増やすつもりはない」だったのかもしれない。夜行列車を運転するには,それなりの人員の配置が必要になる。また,使う車両もかなり古くなってきている。大儲けできるものでもなければ,「やめたい」と考えていたとしても,おかしくはない。

個人的には,東京に7:30ころに着く「あさかぜ」がなくなって以来,寝台列車を積極的に使う理由がなくなったのも事実だ。寝台列車がもう少しスピードアップできて,たとえば広島を21時過ぎに発車しても東京に8時前に着けるという設定ができれば,いまでも私は積極的に使いたい。
 今後も,寝台列車を利用したいときには,東京と出雲市・高松を結ぶ「サンライズ出雲/瀬戸」を利用する方法が残されている。広島から岡山まで新幹線を利用し,岡山から「サンライズ出雲/瀬戸」に乗り換える,というものだ。これは,広島を21時過ぎに出発して,東京に7時過ぎに着くという,とても好都合なものになる。「サンライズ出雲/瀬戸」は個室が多く提供されており,その料金も通常の寝台と大差ない設定になっている。しかし,乗り換えはあまりにも面倒だ。

なお,私は「鉄」ではないので,鉄道に関する専門的なことはわからないし,そのあたり説明をいただいてもたぶん理解できない。


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