撮影日記


2008年12月14日(日) 天気:曇ときどき晴

むりやり反転現像

説明書によれば,溶解して500mlの処理液とした「ナニワカラーキットN」には,パトローネ入り35mmフィルム(135フィルム)の24枚撮りで10本の処理能力があるという。また,120フィルムであれば,5本の処理能力があるとのこと。たまっていた「試運転」のカラーネガフィルムを処理しても,まだ処理液に「余力」があることになる。
 また,溶解して処理液をつくってから10日以上が経過した。説明書によれば,溶解後の処理液の寿命は10日という。あくまでも「それ以上は品質を保障できないよ」という程度のことであり,実際にはもう少し融通がきくものとは思う。しかし,そろそろあたらしく処理液をつくりかえてもいいころ。処理液を使ったなにがしかの「実験」をするには,ちょうどよいタイミングであろう。

実験してみたいこととしては,「クロスプロセス現像」がある。クロスプロセス現像とは,カラーネガフィルムに対してカラーポジフィルムとしての処理をおこなうこと,あるいは逆に,カラーポジフィルムに対してカラーネガフィルムとしての処理をおこなうことである。そのようにすると,カラーバランス等が大きく崩れ,しかもその崩れ方が予想がつかないとのことで,運がよければ「おもしろい」効果が得られるらしい。
 どうせなら,こういう機会に「期限が切れた」カラーポジフィルムを消費してしまいたい。ところがそう都合よく,期限が切れたカラーポジフィルムが,自宅の冷蔵庫に残っていない。そのかわり,期限切れのフジ「160NL」(120)が野菜室の隅に2本あるのを見つけてしまった。これは,ずっと以前にいただいたものであるが,なにせタングステンタイプのフィルムだから使う場面がなかった。箱に記された使用期限は「2001-07」で,とうの昔に切れている。どのように使おうと,惜しくはない。
 このフィルムを見て,「むりやり反転現像ができないだろうか?」と考えてしまった。フィルムや処理薬品等の化学的な詳細は知らないし,たぶん理解できないと思うが(笑),カラーフィルムの基本的な構造は上から順に,保護膜,青感性乳剤層,黄色フィルター層,緑感性乳剤層,中間層,赤感性乳剤層,中間層,ハレーション防止層,フィルムベースとなっており,カラーポジフィルムもカラーネガフィルムも同じである(*1)。また,カラーポジフィルムの第1段階の処理は,モノクロネガフィルムの現像処理と基本的には同じものだとのこと。その次の段階は,残った部分をカブらせながら(露光させるのと同じ変化を化学的におこさせる)の発色現像で,さいごに残った銀を除去する漂白と定着をおこなうとのこと。具体的な薬品の処方は異なるようだが,発色現像や漂白,定着で起こさせる化学変化は,カラーポジフィルムもカラーネガフィルムも同じようなものになる。

ということで,タングステンタイプのカラーネガフィルム「160NL」を,むりやり反転現像するとどうなるか,「実験」することにした。

まず,感度ISO160のフィルムとして,標準的なものおよびプラスマイナス1段ずつの露光をおこなった。
 撮影したフィルムを,最初はモノクロネガフィルムの現像液「ミクロファイン」で処理するのだが,何分くらい処理すればいいのかまったく見当がつかない。カラーネガフィルムの現像液「ナニワカラーキットN」の標準処理が,発色現像,漂泊定着ともに30℃でおよそ7分となるので,「ミクロファイン」による処理も同様におこなうことにした。なお,この「ミクロファイン」も,使い古したものである。
 「ミクロファイン」での処理を終えてタンクをあける。リールからフィルムをほどいてみると,フィルムには見事にモノクロ画像があらわれている。それをしばらくながめているうちに,カブリ露光ができたことにしよう(笑)。
 あとは,「ナニワカラーキットN」の標準処理をおこなう。
 その結果,得られたフィルムは・・・・・。

フィルム:160NL,ISO160として撮影,補正+1。
第1現像:ミクロファイン 30℃,7分
カブリ露光:約2分
発色現像:ナニワカラーキットN 30℃,6分
漂泊定着:ナニワカラーキットN 30℃,7分

全体が濃いので,なにも写っていないように見えたが,ライトボックスの上でよく見れば,ちゃんと反転した画像がフィルムにあらわれている。
 これをスキャナで読み取ろうとしたのだが,あまりに濃いためか,読み取ることができないようだ。なお,上の画像は,ライトボックスにおいたフィルムを,ディジタルカメラで撮影したものである。

こんどは,もっとたっぷり露光して,たっぷり現像するとどうなるか,実験することにした。
 撮影時には感度ISO40のフィルムとして,標準的なものおよびプラスマイナス1段ずつ露光をおこなった。
 「ミクロファイン」での処理は,たっぷり30分ほどおこなう。タンクをあけてみると,フィルムにはちゃんとモノクロ画像があらわれている。

最初の3コマ分ほどは,上の画像のようにリールからほどいたが,残りの部分はリールに巻きこんだままである。つまり,最初の3コマは1本目と同様に適当にカブリ露光をあたえているが,残りの部分はリールに巻いたままなので,カブリ露光は弱くなっているはずだ。
 つづいて,「ナニワカラーキットN」の標準処理をおこなう。
 その結果,得られたフィルムは・・・・・。

フィルム:160NL,ISO40として撮影,補正+1。
第1現像:ミクロファイン 30℃,30分
カブリ露光:約2分
発色現像:ナニワカラーキットN 30℃,7分
漂泊定着:ナニワカラーキットN 30℃,7分

前回よりは,明るい像がフィルムにあらわれている。ネガフィルムとしてスキャンし(このとき,階調が反転されるとともに,ベースの色が適当に補正されるはず),フォトレタッチソフトウェア上で階調を反転させて元にもどすと,こんな画像があらわれた。

ROLLEIFLEX automat, Tessar 7.5cmF3.5, 160NL

なんと素敵なソラリゼーションではないか!(笑)
 「予想がつかない結果」は,とても楽しいものがある。
 さて,期限切れの「160NL」は2本しかなかったので,この実験はこれでおしまい。機会があれば,またこのような実験をしてみようとは思うが,現像処理についてちゃんと理解している方に,「標準的な処理」手順の開発と公開をお願いしたいところである(^_^;
 とりあえず,今日のところの結論は,「たっぷり露出」「たっぷり第1現像」「たっぷりカブリ露光」ということにしておこう。

*1:阪川武志・内藤明『実務者のためのカラー写真』(共立出版,1991年)


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