2008年10月05日(日) 天気:雨
やっぱりまじめなパノラマカルディア
ディジタルカメラの普及によるのだろうか,最近,フィルムの消費量は年々激減しているようである。日本カラーラボ協会が公開しているデータ(*1)によると,2007年度のロールフィルムの国内出荷本数は8670万本であり,2005年度の約半分。2003年度とくらべれば,約1/4という状況である。サイズ別に見ると,IX240(いわゆるAPS)の減少はとくに激しく(2007年度は2003年度の約9割減),逆に120/220やモノクロフィルムの減少は比較的小さい(2007年度は2003年度の5〜6割減)ようだ。
そんな状況ではあるが,市場に流通するフィルムのサイズは,パトローネ入り35mmフィルム(135)がおよそ80%(*2)で,主流となっている。そして,135フィルムを使用するカメラの画面サイズの大半は,36mm×24mmのライカ判である。
135フィルムでは,ライカ判のほかにも,いろいろな画面サイズのものがあった。ライカ判以外でもっとも普及したものとしては,18mm×24mmの「ハーフサイズ」だと思う。ハーフサイズは,1960年代を中心に,オリンパス・ペンやリコー・オートハーフを中心とした,大ブームになっている。また,1980年代後半にも,京セラ・サムライを中心に,ハーフサイズが見直された時期が訪れていた。
ハーフサイズのほかに普及したものとしては,13mm×36mmの細長い画面とした,いわゆる「パノラマサイズ」があげられる。ハーフサイズの採用はカメラの小型化にもつながるし,ライカ判とハーフサイズとでは巻き上げの際にフィルムを送る量が異なるため,ハーフサイズ用のカメラは「ハーフサイズ専用」として発売されるものがほとんどである。
それに対していわゆるパノラマサイズは,ライカ判の天地をカットしているだけで,フィルムを送る量も変わりがない。そのためか,ライカ判のカメラにおまけ的に「パノラマサイズ切り替え機能」が用意されているケースが大半となっている。
現在,ライカ判によるサービスサイズプリントは,89mm×127mmのL判である。ところが,いわゆるパノラマサイズでは,L判の長さを2倍にした89mm×254mmのサイズにプリントされるようになっている。大きなプリントのため,1枚あたりの金額も高いものになっている。
パノラマサイズプリントは魅力的であるが,いわゆるパノラマサイズ専用のカメラは,少々不便そうである。実際,いわゆるパノラマサイズ専用のカメラは,ごく少ない。フジ「パノラマカルディア」は,数少ないパノラマサイズ専用カメラの1つである。
FUJI PANORAMA CARDIA
このカメラについては,2008年7月31日の日記にも書いたが,ここでもう一度,その特徴をまとめておく。
搭載されたレンズは,FUJINON 28mm F4という広角レンズである。パノラマ写真を強調するべく,一般的なコンパクトカメラよりも短焦点のレンズが採用されたのであろう。また,画面は天地をカットしているので,性能が低下する周辺部を使わずに済むことからも,広角レンズの採用を容易にしているものと思われる。
シャッター速度は単速であるが,絞りは自動的に調整されるようになっている。ピントも固定されているが,無限遠モードが用意されており,「広い風景を写したい」という要求にこたえる姿勢を見せていると言えるだろう。
実際にファインダーを覗いてみると,左右に広い範囲を写すことができるにもかかわらず,空や地面が必要以上に写りこまないことに魅力を感じるだろう。
PANORAMA CARDIA (FUJINON 28mm F4), DNP CENTURIA100
いわゆるパノラマサイズのブーム?は,おもちゃカメラにも影響を与えていたようだ。いや,低価格であることが重要な課題であるおもちゃカメラには,「パノラマ途中切り替え」のようなコストのかかる機構は,似合わないのだろう。
このカメラは,メーカー等は不明である。製品名としては,単に「PANORAMA CAMERA」と箱に書かれていた。いわゆるパノラマサイズ専用の,おもちゃカメラである。
メーカー不明 PANORAMA CAMERA
このカメラの箱には,製品の仕様が表示されていた。それによると,搭載されているレンズは,25mmレンズであるという。このクラスのレンズは,一般的には広角レンズというよりも,超広角レンズとみなされることが多いだろう。パノラマ写真用のカメラとしては,理想的なレンズであると言える。
露出を制御する機能はなく,シャッター速度や絞りは,固定されている。また,ピントも固定されている。超広角レンズのために被写界深度は深いだろうから,小さなプリントならそこそこの写真が得られるのかもしれないが,パノラマサイズにプリントするのは,少々厳しいのではないだろうか。
PANORAMA CAMERA (maker unknown, 25mm lens), DNP CENTURIA100
このカメラ,遮光が十分でないのか,フィルムのかなりの部分にカブリを起こしていた。カブリの影響がないコマを見たところでは,おもちゃカメラとしてはこの写りは悪くないものかもしれない。そうはいっても,これをパノラマサイズにプリントするのは,やはり,かなり苦しいだろう。
ハーフサイズ専用カメラには,「オリンパスペンF」のような高性能・高級機も見られたが,いわゆるパノラマサイズ専用カメラには,そのような製品は現れなかったようだ。高品位なパノラマ写真を求める場合は,レンズがくるっと回転するタイプのパノラマカメラや,135あるいは120/220フィルムを通常よりも長く使用するタイプのパノラマカメラが選ばれたようである。それらのカメラは,かなり特殊なカメラとも言えるわけで,それなりに高価であった。
パノラマサイズプリントは,L判よりも引き伸ばし率が高くなる。それだけ,しっかりしたネガが必要になるはず。パノラマ写真には,おもちゃカメラは似合わなさそうだ。
ちなみに,これらのフィルムの現像には,「LPLカラーネガフィルム現像キット」(2008年10月4日の日記を参照)を使用している。
*1 http://www.jcfa-photo.jp/shiryo/7-1.htm
*2 http://www.jcfa-photo.jp/shiryo/7-2.htm
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