撮影日記


2008年08月30日(土) 天気:晴のち大雨

ひろしま美術館でパリを見る

とある大手の印刷会社から,ひろしま美術館で開催されている「芸術都市パリの100年展 ルノワール、セザンヌ、ユトリロの生きた街 1830−1930 パリ、16の美術館めぐり」のきっぷをいただいた。
 広島市内には,3つの美術館がある。
 広島県立美術館,広島市現代美術館と,ひろしま美術館である。
 最近はあまり耳にしなくなったが,一時はさらに別の美術館をつくろうという動きが,県の方にあったようだ。こういう施設は,ないよりもあった方がいいのは当然だ。だが,維持できる以上の数があるのは考えもの。十分な予算が回らなくなると,1つ1つの展示の質に問題が生じてくることだろう。今のところはどうなのか,私は美術に詳しくないのでわからない。ただときどき,「これはぜひ見たい」と思う展示がなされるので,個人的には満足している。
 そういえば,知人の1人が,「今回は,美術史的にとても重要な,隠れた名品が来ていたので大満足」と言っていた。彼はさらに,「でも,ほとんどの人はたぶん気がついていないぞ」とも吠えていた。私は美術史のことはよく知らないので,具体的な作品名やその意味合いは,忘れてしまった。そういうことは,見に行く前に,聞いておけばよかった・・・・。

ところで,「美術館はもういらない。そんな金があったら,音楽ホールをつくれ!」という主張をする人もあるようだ。ちょうど,広島市民球場の跡地をどうするか,という問題に関心が集まっていたこともある。ところで美術館にしろ,音楽ホールにしろ,どちらにしてもそれぞれ「文化的に価値」があるとかいった主張がなされているようだが,その分野に関心のない人にとっては,不要なもの。所詮はそれを趣味とする人(あるいはその利権にかかわることのできる人)の主張にほかならないだろう。
 そんな私の,個人的な興味や関心の対象としては,博物館がほしいところ。こんなのを見るためにも,わざわざ「島根県立三瓶自然館サヒメル」まで行ってくる必要があるのだ。
 「広島市内にもぜひ博物館を。」
 と,ここでの主張は自由なので,このように書かせていただくことにする。

「芸術都市パリの100年展(以下省略)」は思ったよりも混んでいた。もっとも,急ぎ足で見るのは容易ならざる状況なれど,じっくり鑑賞するのはさほど問題ない。
 パリの街並みと,美術館の位置を示した模型の周囲で「あー,あそこに行ったねえ」とか「あそこの街並みはどうだったねえ」という会話をしているのが聞こえる。また,展示された絵の前で「これは,どこそこでも見てきたね」という声も聞こえる。そんな他人の会話が気になるのは,パリどころか,一度も外国に行ったことのない私の「僻み」のせいだろう(笑)。

ところで,展示で興味を引いたものの1つに,夜のオルセー駅を撮影したという写真があった。霧が立ちこめたような空気の中に,ぼーっと光る建物がある。それだけのモノクロ写真であるが,その空気感とでも言えばいいのだろうか,その世界には妙に引きこまれるのものがあった。
 その写真のあたりで立ち止まる人は少なく,じっくりと鑑賞することができた。
 この会場では,絵画の作品に興味をもつ人が多数であろう。だから,絵画の前ではじっくりと立ち止まっていた人たちが,写真の前を足早に通り過ぎるのも当然だ。また,その当時の写真は,まだはっきりと「美術」として認められていなかったかもしれない。
 とはいえ,古い写真はおもしろいのだ。その当時の,パリの人々の風俗や街並みを記録したもの,という目で見ても,とてもおもしろいものなのだが。

ひろしま美術館を出た後,平和公園へ向かった。
 なにげに「原爆の子の像」へ近づくと,その手前に巨大な折り鶴がある。
 被爆して白血病を患った佐々木禎子が,回復を祈って千羽鶴を折ったという話と,彼女の死をきっかけにつくられた「原爆の子の像」のことは,よく知られているだろう(*1)。だから,その前に巨大な折り鶴があっても,なにも問題ではない。ただ,いままでそこにそんなものはなかったから,驚いたのである。

画像は携帯電話機のディジタルカメラ機能による

よく見ると,この折り鶴は紙ではなく,半透明のビニルのような素材で作られているように見える。また,電気のコードらしきものが接続されている。
 そういえば,9月2日に開催される「G8下院議長会議」にあわせて,平和公園のライトアップ事業が予定されているという話があるようだ。この折り鶴は,きっと夜になると,行灯のように光ることになるのだろう。
 そのときには,「とうろう流し」のときと同様に,かなりの人混みになるのだろうか?
 混雑するところにはあまり近づきたくないのだが,先日いただいたRB67用Mamiya-sekor 127mm F3.8C (2008年8月22日の日記を参照)の試運転もしてみたいし,時間があれば撮りに出かけたいものだ。

原爆ドームの方にも,同様な折り鶴が設置されていた。
 折り鶴に「平和」と書かれているのが,あまりに安易な感じもするのだが,こういうメッセージは発信し続けることに価値がある。
 広島に来られる各国の代表に,そのメッセージが伝わることを祈りたい。

画像は携帯電話機のディジタルカメラ機能による

*1 http://www.city.hiroshima.jp/www/contents/0000000000000/1110438305305/index.html


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