撮影日記


2008年08月12日(火) 天気:はれ

天則を学ぶ

大阪の四ツ橋に,「大阪市立電気科学館」という施設があった。ここには,日本で初めてといわれる「プラネタリウム」があったほか,電気のことを中心にさまざまな実験(というか体験)のできる装置があって,子どもたちが科学や技術について勉強することができる施設だった。1937年に開館した「大阪市立電気科学館」は,1989年5月をもって閉館となった。
 その後継となる施設が,1989年10月に肥後橋駅近くに開館した「大阪市立科学館」である。前身の「大阪市立電気科学館」同様にプラネタリウムがあり,科学や技術に関する多数の展示や体験装置などが備えられている。
 「大阪市立電気科学館」にはかつて何度も訪れたが,「大阪市立科学館」を訪れるのは,今日がはじめてである。

「大阪市立科学館」では,ちょうど7月に展示場のリニューアルをおこなったところだという。今回のリニューアルの目玉は,1928年に完成したとされる「東洋初のロボット」と称する「学天則」を復元したものである(*1)。

「学天則」(あるいは「學天則」)で検索すれば,それについての説明がいろいろと出てくるだろうから,詳細をここでまとめる必要はないだろう。ただ1ついえるのは,動きがとてもなめらかで自然なことである。
 「学天則」は,なにかの作業をさせるためにつくられたものではない。「学天則」は「東洋初のロボット」といわれるが,なんらかの労働をこなせるわけではないから,1920年にカレル・チャペックが労働を意味する言葉からつくって使用した「ロボット」とよぶのは適切ではないかもしれない。むしろ,「學天則」発表当時の雑誌(それも展示されていた)に使われていた「表情人造人間」という表現の方がぴったりである。そう,これは,「ロボット」という機械ではなく,「人造人間」という機械で人間を模したものって感じになるであろうか。
 江戸時代からの伝統芸?である「からくり人形」を,昭和初期の科学技術でつくったらこうなる,というものが「學天則」である。という見方もできるかもしれない。

大阪市立科学館の学芸員さんが「学天則」のデモンストレーション(毎時1回おこなわれる)のときに説明されていたことでもあるのだが,「學天則」をつくった西村博士の思想をあらわしたもの,ということこそが,「學天則」の存在意義というべきだろう。
  「學天則」とは,「天則を学ぶ」という意味とのこと。「天則」とは,自然の営みというか,そのシステムを意味するもの。その本体のデザインは,一見,仏像をもとにしたもののように見えるのだが,実際にはさまざまな人種の特徴を融合したものだという。
 すなわち「學天則」には,人類の平等,自然との調和というあたりの願いがこめられている,と考えるとよいのかもしれない。

「学天則」のそばには,先にもふれた,当時の雑誌の展示もある。また,「学天則」が表情を変えるしくみを説明した模型も展示されている。
 入口をはさんで,「ルービックキューブ」を完成させるロボット「キューブくん」も,見ていて楽しくなる展示だ。完成させると,手をあげてよろこぶしぐさを見せたりする。ともあれ,見どころの多い施設であることは,間違いない。

ところで,大阪市営地下鉄は,全部で8つの路線がある(*2)。御堂筋線,谷町線,四つ橋線,中央線,千日前線,堺筋線,長堀鶴見緑地線,今里筋線だ。このうち谷町線は,四つ橋線以外のすべての路線と交差する。御堂筋線とは天王寺で,中央線とは谷町四丁目で,千日前線とは谷町九丁目で,堺筋線とは南森町と天神橋筋六丁目で,長堀鶴見緑地線とは谷町六丁目で,今里筋線とは太子橋今市でそれぞれ交差する。
 つまり,谷町線沿線から四つ橋線沿線に行くのは,他の路線の沿線とは異なり,乗り換えが2回発生するのでとくに面倒に感じられるのだ。たとえば,天王寺と大国町で乗り換えなければならない(御堂筋線と四つ橋線との乗り換えは,なんばや本町よりも,大国町が便利である)。
 しかし,路線が交差しておらず,一端は改札を出なければならないという条件ではあるが,四つ橋線の西梅田と谷町線の東梅田は乗り換えが可能な駅である。西梅田は肥後橋の次の駅なので,大阪市立科学館からの帰路は,肥後橋から西梅田まで乗り,梅田の地下街をぶらぶら歩いて谷町線の東梅田から乗るようにした。これならば,乗り換えが1回で済む。梅田の地下街を歩く距離がちょっと長いと感じる人があるかもしれないが,そこはただの通路ではなく地下街。荷物が多い場合でもなければ,退屈もせずあまり苦に感じることもないわけだ。もっとも,西梅田−梅田−東梅田の相互乗り換えには「30分以内」という時間制限があるので,途中のお店(たとえば八百冨写真機店であるとか)にのんびりと立ち寄るわけにはいかない。その点は,要注意である。

*1 http://www.sci-museum.jp/server_sci/map/exhibit/1_5.html#3

*2 http://www.kotsu.city.osaka.jp/eigyou/route-map/subway_rosenzu.html


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