撮影日記


2008年07月14日(月) 天気:曇ときどき晴

EOS100のメインダイアルスイッチ

EOS100は,初期のEOSシリーズのなかでも人気の高い機種のようだ。とくに,背面のサブ電子ダイアルは,EOSシリーズで評価が高いユーザインタフェースの基本となったものと考えることができ,使いやすさの面でも歴史的意義の面でも,大いに意味のある機種である。しかし,この時代のEOSシリーズには,シャッター周りに使われている部品のゴムが劣化して溶け出し,それが油状になってシャッター幕に付着し,シャッターの動作不良を引き起こすという構造上の欠陥の存在が指摘されている。

EOS100

この秋に,友人からEOS100を譲っていただいていた。そして,それを今日まで,まったくネタにすることはなかった。なぜならば,譲っていただいてすぐに,壊れてしまったからである。すまん。
 さて,壊れたのは,メインダイアルスイッチである。譲っていただいてすぐ,電池を入れ,メインダイアルスイッチを動かしながら,各モードの動作を試していたところ,突然,メインダイアルスイッチのロックや,クリックストップが効かなくなってしまったのである。原因として,ベアリングがはずれてなくなったり,内部のプラスチック部品が破損したりしたような状況が予想される。修理のためには部品の調達が必要になるかもしれない。だから,すぐに手をつけることはできなかったのである。
 部品の調達には,同じ機種のジャンク品を入手するのが手っ取り早い。分解・再組み立ての練習ができるので,まさに好都合だ。譲っていただいたEOS100も,そもそもはメインダイアルスイッチが壊れていたジャンク品だったと聞いている(*1)。その際,メインダイアルスイッチについては,新しい部品等を入手して,修理をしたようだ。さらにその後,シャッター幕に例のトラブルが生じたものの,メーカーさんにおいてその対策を講じた修理を受けているらしい。そう,より完成されたEOS100に生まれ変わっているのである。メインダイアルスイッチがこわれたままの状態で,放っておくのはもったいない。

EOS100のメインダイアルスイッチ

さて,いざ探してみると,EOS100のジャンク品は,意外と見つからないものである。下位モデルのEOS1000や上位モデルのEOS10のジャンク品は,1000円くらいでどこででもよく見かけることができる。しかし,EOS100は見あたらない。それだけ,EOS100は人気が高く,修理しながら実用している人が多かったりするのかもしれない。まあ,さほど真剣に探していたわけでもないのだが f(^^;
 昨日,大阪駅中央口の八百冨写真機店に立ち寄ってみると,いつものように一眼レフカメラのジャンク品が豊富に存在している。そんななかで,ようやくEOS100のジャンク品を見つけることができた。EOS100のジャンク品は,1台1000円で2台あった。EOS1000やEOS10のジャンク品は,もっとたくさんあった。やはり,EOS1000やEOS10にくらべて,EOS100は,ジャンク品として流通している量が少ないのかもしれない。
 2台あったEOS100のジャンク品のうち1台は,グリップ部のゴムがべとつき,ホットシューには傷が目立ち,例のごとくシャッター幕には油状のものがべっとりとついている。まさに,ジャンク品である。もう1台は,外見はそこそこきれいであり,シャッター幕に油状のものが見られない。だから,ついつい,このきれいな方を買おうとした。しかし,メインダイアルスイッチのクリックストップが効かなくなっているじゃないか。今回,目的とする部品はそこである。これは,使えない。もしかするとシャッターだけでなく,メインダイアルスイッチもEOS100の弱点なのかもしれない。

購入後は予定通り,ジャンク品として購入したEOS100の分解からはじめる。トップカバーだけをはずせばよいのだが,これが意外と面倒である。トップカバーを止めているネジは,ファインダー接眼部の左右に1つずつ,シャッターレリーズボタン付近のストラップ吊り金具の陰に1つあるほか,フラッシュの下部にも3カ所ある。さらに,電池ボックスの奥にある長いネジもはずさなければならない。これに加えて,裏ぶたロックレバーのところにある2本のネジを緩め(はずす必要はなさそうだ),前面下部のネジ1本をはずしてフロントカバーもはずすようにしなければ,トップカバーを開くことができないのである。

フロントカバーのネジもはずす必要がある。
電池ボックスの奥のネジは,かなり長い。

メインダイアルスイッチを見てみると,案の定,クリックストップのためのベアリングがはずれ,そのベアリングをささえるスプリングが飛び出し,ねじれてしまっている。幸い,その他に破損したような部品は見あたらない。ジャンク品のEOS100からスプリングを取り出し,交換してやろうと考えた。
 ところが,簡単に分解できると思われたこのメインダイアルスイッチがなかなかはずれない。プラスチックのダイアルには2つの突起があり,それがクリックストップのためのスリットがある金属円盤中心部の穴にはまるようになっているのだが,よく見ると,ダイアルにある2つの突起の先端が焼きつぶされていて,金属円盤にしっかりと固定されている。どうやらここを破壊しないと,スプリングを取り出せそうにない。
 けっこう固かったそこを破壊し,スプリングを取り換えてメインダイアルスイッチを組み立ててみたものの,ちょっとダイアルを回すとすぐに,ベアリングがはずれてしまう。動きをよく見ると,金属円盤のスリットがベアリングを乗り越えようとするたびに金属円盤が浮き上がり,そのとき生じるすき間のために,ベアリングがはずれてしまうのである。中心部にはダイアルロック解除ボタンがあり,それをネジで止めるようになっているが,それがしっかりと止まっていないのだろうか?と思い,力をかけてネジをしめようとする。しかし,ダイアルロック解除ボタンがプラスチックのためか,ネジがかなり軽くなってしまっている。ついでにダイアルロック解除ボタンも交換すると,ネジはかなり固くしまるようになったが,やはりスリットがベアリングを乗り越えるたびに,ベアリングがはずれてしまう。

そうだ,ダイアルの突起を焼きつぶして,金属円盤に固定しなければならないんだ!

ハンダごてに通電し,熱をもったところで,ダイアルの突起を焼きつぶしてみた。プラスチックが溶ける不快な臭いは,しかたない。これで,ダイアルと金属円盤がしっかりと固定されたはずだ。

ダイアルの突起を焼きつぶして,金属円盤に固定する。

組み立ての際にプラスチック部品を焼きつぶさなければならないというのは,組み立てを考えればたいへん効率がよいのだろう。しかし,この部分を修理することは,新しい部品がなければ事実上不可能ということである。修理のことにあまり配慮されていないというのは,EOS100はあくまでも廉価版のエントリーモデルとして企画された製品である,ということだろうか?

*1 http://www.awane-photo.com/home/taitei/tech/100.htm


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