撮影日記


2008年07月01日(火) 天気:曇

コシナのAFレンズ

最近のカメラでは,ピントも露出も,自動的に調整されるのが「あたりまえ」になっている。カメラの歴史は,ダゲールの発明から数えても200年にも達しない短いものであるが,長い間,「ピントや露出のきちんとした写真を撮る」だけでも一定の知識や技術が必要だった。自動的にピントをあわせてくれるオートフォーカスのカメラが商品化されたのは,1977年のコニカC35AF(ジャスピンコニカ)が最初であった。
 コニカC35AFは,いわゆるコンパクトカメラである。すなわち,どちらかというと初心者向けのカメラである。プロやマニアがよく使う,一眼レフカメラにオートフォーカス機構が取り入れられるには,もうしばらくの時間が必要であった。日本カメラショーの「カメラ総合カタログ」を読み返してみると,1981年版(Vol.71)にリコーの「AF RIKENON 50mm F2」があらわれている。交換レンズ部分に測距機能等をすべてもたせたタイプのもので,Kマウントのカメラに取りつければオートフォーカス撮影ができるというものである。カタログに記載された価格は¥31,800で,思ったほど高くはない。しかし,どれだけの人が買ったのかは,よく知らない。実際,私は,中古カメラ店等で実物を目撃した記憶がない。また,翌1982年版(Vol.73)では,すでに記載されていない。1982年版では,キヤノンの「New FD 35-70mm F4 AF」というものが掲載されている。こちらの価格は¥89,500で,少々高価である。ただ,ある程度は売れたのであろうか,中古カメラ店等で何度か実物を目撃したことはある。キヤノンでは,AFシステム一眼レフカメラの投入が他のメーカーよりも少し遅れた分だけ,この種のAFレンズに一定の需要があったということだろうか?
 ただ,1982年版でもっとも注目すべきものは,ペンタックス「ME-F」である。これは,AF撮影のできるレンズはSMC PENTAX AF Zoom 35-70mm F2.8だけであるが,カメラボディの方に測距機構を盛りこんだものである。これを最初のAF一眼レフカメラとみなすのが一般的のようだ。

その後,1985年にミノルタ「α-7000」が登場する。カメラ本体に,測距機構とレンズを駆動するモーターを内蔵したもので,以後これに倣ったかのようなAFシステム一眼レフカメラが各社から登場することになる。その1985年版の「カメラ総合カタログ」(Vol.82)には,もう1つの注目すべきレンズが掲載されている。コシナの「AF 200mm F3.5」である。ペンタックスK用,ペンタックススクリュー用,キヤノンFD用,オリンパスOM用,ニコンAi用,ミノルタMD用が用意されている。本格的なAFシステム一眼レフカメラが登場した後でも,この種のレンズには一定の需要があったのだろうか。当時は,「一眼レフにAFが必要か否か?」などというネタが多く語られていた時代である。AFに懐疑的な人も少なくなかったのかもしれない(さらに以前には,AEが必要か否か?TTL測光が必要か否か?というネタが語られていた時代もあったようだが)。このAF 200mm F3.5レンズは,1986年版では姿を消すが,1987年版(Vol.89)では,「AF 75-200mm F4.5」として,ふたたび登場するのである。しかも,オートフォーカス機能に加えて,ズーミングを電動でおこなう「パワーズーム」機能つきである。
 そんなレンズを,入手してしまった。残念ながら,パワーズーム機能は故障している。

COSINA AF 75-200mm F4.5

オートフォーカスの動作は,はっきり言って,遅い。そして,測距結果があやしいときもある(笑)。ただ,意外と使えそうな感じがある。まあ,よく考えてみれば,このときにはすでにニコンF-501AFやキヤノンEOS650などが登場しているのである。オートフォーカス機能そのものは,とりあえず実用的な段階にはっているはずだ。
 その後,1988年版(Vol.93)には,タムロンからも同様な交換レンズ「AF 70-210mm F4 IF (47A)」が登場した。タムロンのこのレンズはマウント交換式なので,さまざまな一眼レフカメラでAF撮影が可能になるので,そういう意味では「おもしろい」存在のレンズである。1999年12月2日の日記をご参照いただければ,東ドイツ製のクラシカルな一眼レフカメラ「Exakta」ですらAF一眼レフカメラになってしまうことが,おわかりいただけるものと思う。

TAMRON AF 70-210mm F4 IF (47A)

1989年版(Vol.94)版には,コシナから「AF 28-70mm F3.5-4.8」「AF 75-200mm F4.5 MarkII」が登場している。この種のレンズに需要があるというのは,従来のマニュアルフォーカスの一眼レフカメラのユーザが,少しでもオートフォーカスを体験したかった,ということであろうか。しかし,マウントを変更したキヤノンやミノルタのユーザならともかく,レンズの互換性がある程度は確保されていたニコンやペンタックス(Kマウント機)のユーザには,無理に必要なかったのではないか……という気がするのである。
 その当時に,この種のレンズを購入した方がいらっしゃれば,その購入目的などを聞かせていただければ幸いである。

並べてみると,タムロンのレンズはずいぶんと大きいことに気がつく。

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