撮影日記


2008年04月02日(水) 天気:はれ

楠木の大雁木にて
サクラを撮る

サクラの季節になった。すなわち,「お花見」の季節である。「お花見」とは,言うまでもないが,サクラの木のある屋外で宴会をおこなうことであり,サクラの花を眺めることではない(笑)。
 「お花見」には,それなりの適切な場所が必要である。サクラの花がよく見える場所というよりも,サクラの花の下が望ましい。数人でおこなう「お花見」なら,どこででもなんとでもなりそうなものであるが,ある程度の人数が集まる場合には,それなりの広い空間を確保しなければならない。この時期には,多くの職場でいわゆる「新人」が受け入れられる。彼らの「歓迎会」を「お花見」が兼ねる場合もあるだろう。ちょっとした事務所であっても,その参加人数は軽く2ケタになるはずである。
 そうなると,「場所取り」も簡単ではないかもしれない。
 一般的に人気のあるような場所であれば,大人数で「お花見」のできる場所を確保するために,熾烈な場所取り争いが繰り広げられるものと想像される。

三篠橋の下流,楠木町1丁目の川沿いを歩いていると,ビニルひもが張り巡らされた空間があった。見ると,そこにはダンボールの紙片が取りつけられているのが見えた。
 今夜予定されている「お花見」の場所取りだろうか,よく見かける光景である。ごくろうさま。しかし,そこには「4/4」という文字が見える。驚いたことに,今夜の「お花見」の場所取りではない。2日後の場所取りのようだ。もしかすると,もっと以前から場所取りをしているのかもしれない。いったい,何日前から場所取りをしているのだろうか。残念ながら,そこまでは知ろうとも思わない。
 ともあれ,今夜あるいは明日,この場所で「お花見」をしようと考えていた人は,どうすればよいのだろう?よくは知らないが,そういう配慮のできない人たちの集団なのであろう,と考えることにしておく。あわせて名前らしきものと,電話番号らしきものも記載されているが,よほどのことがなければ,そこに電話をかけてまで抗議したりする人もあるまい。こういうのは,「やったもん勝ち」みたいなものだろうか。

さて,楠木町1丁目の川沿いには,「楠木くすのきおおがん」と呼ばれる,川に降りていく石段がある。これは,かつての舟運における荷揚げ場として使われていたものだ。川舟の発着場となる「雁木」と呼ばれる石段が,広島市内におよそ300カ所あるという(*1)。
 楠木の大雁木は,もっとも大きなものの1つである。昭和初期の現在よりも大規模なそのようすが,「図説広島市史」(広島市公文書館/編,1989)のp. 83に掲載されているので,図書館等で閲覧する機会があれば,あわせて参照しておくとよいだろう。そのころの地形図(1:25,000「広島」,大正14年測図)を見れば,(当時の)国鉄横川駅からの引き込み線がそのそばまで敷かれていることがわかるが,そのことからも,ここが物流の拠点となる施設であることが納得できる。
 いまは,静かに3本のサクラが覆いかぶさっており,往時の如くに木材等の荷揚げがおこなわれることはない。ただ,「雁木タクシー」という小型ボートの発着場として,ほかのいくつかの雁木とともに現在でも活用されているのは,注目するべきことだろう(*1)。

Mamiya Press Super23, Mamiya-sekor 100mm F3.5, E100VS

朝の「楠木の大雁木」周辺では,基町のアパート群の向こうからのぼってくる朝日を受けて,水面がきらきら輝いている。サクラは,枝の先のほうがまだ開花していないが,明日ないし明後日には,満開となるであろう。
 今日は,Mamiya Press Super23とMamiya-sekor 100mm F3.5を持ち出した。Mamiya Press Super23は,後部のチルトのみであるが,アオリが可能である。少しアオリを効かせて,サクラの枝と石段の両方に自然にピントがくるように試してみた。

Mamiya Press Super23, Mamiya-sekor 100mm F3.5, E100VS

やがて,少しずつ人通りが増えてきた。出勤前なのであまりゆっくりと撮影していられないのが少々残念であるが,逆に考えれば,毎日の出勤前にでも撮影ができる,ということである。

Mamiya Press Super23, Mamiya-sekor 100mm F3.5, E100VS

*1 http://www.gangitaxi.etowns.net/011_whats_gangi.shtml


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