撮影日記


2008年02月13日(火) 天気:晴

寒い朝だからキエフを使ってみる

夜のうちに,まとまった雪が降ったようである。「今年はいわゆるロシアカメラを使ってみようと思う」ということを,先日,2007年01月27日の日記で書いた。先日,ゾルキー(ゴールド偽ライカ仕様)を使い損ねたこともあり,ちょうどよい機会である,ということにして,さっそくなにを使うか考えてみた。

・・・・・今日は,久しぶりにキエフ3aを使ってみようかな。
 これはよく知られているように,ツァイス・イコンのContax(京セラ・ヤシカのCONTAXでわない)を元にしたカメラである。このカメラのマウントは,おもしろい。いわゆるバヨネットマウントだが,内側と外側に爪があって,いわゆる標準レンズには内側の爪に取りつける。標準レンズはほかのカメラのものとは異なってピント調整のために伸縮したりする部分がなく,マウント部に内蔵されているレンズ全体を繰り出すための機構によってピント調整をおこなう。これは二重像合致式距離計に連動しており,精密なピント合わせを可能にしている。一方,広角レンズや望遠レンズは,ほかのカメラでも見られるようにレンズにピント調整のための機構が設けられており,マウントの外側の爪に取りつける。このときは,マウント部に内蔵されている距離目盛などがまったく無駄になってしまう。
 そんな無駄があるのだが,標準レンズを使うときはピント調整がじつに軽く動く。カメラを構えたときの右手ひとさし指の位置にはギアが出ており,これを動かすことでピント調整がおこなえるようになっている。右手に操作が集中しており,とても使いごこちがよい。一方,広角レンズや望遠レンズをそのギアで動かすのは,それなりの力が必要で,そのギアの存在意味がなくなる。むしろ邪魔に感じるかもしれない。
 マウント部にレンズを繰り出す機構を内蔵させながら,それを標準レンズのときにしか使用しないのは「無駄」なことに思える。

・・・・などと考えていると,どうせならソ連で独自の進化を遂げた結果の,キエフ5にしようかな,という考えが浮かんでくる。
 キエフ5は,キエフ2,キエフ3,キエフ4と,かつてのContaxのスタイルを踏襲したカメラの後継機として登場している。キエフ(およびContax)で露出計を内蔵したモデルは,カメラの上面に,まさに「とってつけたような」露出計が乗っている,独特のスタイルをもっていた。キエフ5でも露出計を内蔵したが,ボディのなかに収めるような形になり,そういう意味では平凡な外観になったといえる。
 また,巻き上げレバーを採用し,迅速な巻き上げが可能になっている。しかし,旧来のノブ式巻き上げを好む人(そんな人がいるのかどうかは知らないが)への配慮なのか,キエフ4までのモデルと同様なシャッター速度ダイアルを兼ねたノブは健在であり,そこを利用して巻き上げることも可能である。あるいは,この巻き上げレバーは故障しやすく,そこへの配慮なのかもしれない。実際,手元にあるキエフ5の巻き上げレバーは,ときどき「空振り」をする。そうなると,ノブで巻き上げるしかない。なお,しばらく使っていると,いつのまにか巻き上げレバーがふたたび使えるようになる。
 キエフ5では,商店のシャッターのような特徴的な金属製のシャッター機構は引き継がれているが,それと同じくらい特徴的なマウントが変更されている。あの,標準レンズを繰り出すための機構と,右手ひとさし指のところに出るギアが省略されたのである。ソ連の技術者たちも,それらの機構を「無駄だ」と判断したのかもしれない。その結果,従来の標準レンズは使えなくなってしまった。そのため,広角レンズや望遠レンズのように,マウント外側の爪に取りつける形の標準レンズが用意されている。広角レンズや望遠レンズは,従来のものが使用できる。

ということで,キエフ5を使うことに決めた。
 キエフ5のファインダー内には,50mmレンズで写る範囲に相当するブライトフレームがあるので,レンズは,すなおに標準レンズを使うべきかもしれない。しかし,手元にある標準レンズJUPITER-8NB 50mm F2は,かなり使いこまれているのだろう,距離計に連動する爪の角が欠けて丸みをおびている。そのせいか,距離計との連動がスムースではなく,ガタも大きい。つまり,使い心地がいまいちよろしくない。だから,JUPITER-12 35mm F2.8を使うことにする。これを横から見ると,後玉が大きく突き出した特徴的なスタイルがよくわかる。後ろに突き出しているためか,カメラの前に突き出す鏡胴はわりと短く,カメラがコンパクトにまとまって好都合だ。もっとも,キエフ5のボディは大柄なので,多少のコンパクトさを意識してもあまり意味はないかもしれない。ちなみに,ファインダーの視野いっぱいが,ほぼ35mmレンズで写る範囲であると見当をつけられる。
 フィルムは,NEOPAN 100 ACROSを入れることにした。近々,モノクロフィルムがまた値上げされるようだ。そんなことを意識すると,1コマ1コマを慎重に撮るようになり,なかなかフィルムはすすまない。キエフ5には露出計が内蔵されているのだが,あいにく正常に動作しなくなっている。したがって,単体露出計を持ち歩くことになるのだが,それもなかなかフィルムが進まない理由なのかもしれない。


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